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次はない…今まで禁じ手にしてきたものを使ってでも

連載第4回は、15年間“踊る”のストーリーを紡ぎ出してきた脚本家・君塚良一さんが登場!味のあるキャラクターの誕生秘話、名セリフが生まれる瞬間、そして人生を投影させてきたという“踊る”のファイナルへの想いを語るロングインタビューです。

“踊る”に自分の人生を投影してきた

──15年間“踊る”のストーリーを紡ぎ出してきた脚本家として、ファイナルに込めた想いを聞かせてください。 【君塚】 僕のなかで“踊る”は自分の人生を投影してきた作品ですから、代表作であり特別な存在です。これまでは、次回作があるという可能性があったので、敢えてやらなかったこと──禁じ手にしていたこと、かせにしていたことがいくつかあるんです。銃撃戦をやらない、カーアクションをやらない、犯人の動機を見せない、聞き込みシーンをやらないとかいろいろあって。けれど、今回でファイナルだと聞いたので、今まで禁じ手にしてきたものを使ってでも、最後の最後まで観客に楽しんでもらおうとありとあらゆる手を使いました。ですから、僕のなかで次はないんですよね。

──最後であることは寂しいですが、今まで禁じてきたものが詰まっていることはファンにとって嬉しいことですよね。脚本を書くにあたっては、君塚さんがその時代その時に感じたものを投影させてきたのでしょうか? 【君塚】 そうですね。警察ものは時代の先端を描けるのでおもしろいんです。というのは、刑事や警察官は僕ら一般市民が行けないような現場に行くことができる。事件や出来事が何であれ問題が起きている場所へ行くことができるので、その時代の最先端を描けるわけです。ただ、“踊る”ではそれを真正面にテーマとして掲げるのではなく、笑いや組織の理論のなかにまぶして、しかも皮肉っぽく描いてきました。それが“踊る”らしさでもあります。

──そこにキャラクターのおもしろさが加わるわけですが、連ドラをスタートする際に、青島をはじめとするキャラクターがどう構築されていったのか、キャラクターの誕生秘話も聞かせてください。 【君塚】 そもそも新しい刑事ものを作ろう、というのが発端でした。刑事ものでキャラクターが浮かび上がっている作品はそれほどないんです。決められた時間内で事件を描かなくてはならない。しかも犯人が捕まった後に犯人の動機も描かなくてはならないので、事件を追いかけるだけでいっぱいになってしまうんですね。なので、“踊る”ではキャラクターをキチンと描くことに重きを置き、(極端にいうと)事件なんて何だっていい、犯人の動機なんてどうでもいいという設定に。そうすると、ある種のコント的なこともできるようになるんです。それでも、刑事たちが事件について推理をしたり聞き込みをしたりすると時間をとってしまうので、(その解決策として)主人公の青島を直感的に動く人間にしました。「事件」と聞くとすぐに現場に走って行ってしまうような、直線的な人間にすることで時間短縮が可能になったんです。

青島は5歳児という設定なんです(笑)

──青島のキャラクター設定にそんな背景があったとは驚きです! 【君塚】 ちなみに、青島は5歳児という設定なんですよ(笑)。何かおもしろいことがあるとそこに向かって走って行く、ためらわず迷わず事件現場に走って行く、被害者の哀しみは自分のことのように哀しむ──子どもの純粋さを持っている刑事です。その青島を織田さんが演じてくれたおかけで、ただの5歳児ではなく魅力的なキャラクターになった。「事件発生です!」と聞くと、真っ先に走って署を出ようとするけれど、サラリーマンだから鞄を持って走っていく。そして一番最初に現場に着いてしまって和久さんに怒られる、本庁の人たちにも怒られる、という構図です(笑)。僕の描いたキャラクターに織田さんが命を吹き込んで、織田さんの芝居を見て今度は僕が次はどう広げようかと考える。とてもいいキャッチボールでした。

──やはり、青島役は織田さんでなければ成立しなかったということですね。 【君塚】 そうなんです。脚本から青島をどう読み取ってどう表現するのか、織田さんは常に自分で考えてくれるんです。たとえば、今ではすっかり青島のトレードマークになっているあのコートに関しても、織田さんのアイディアが詰まっています。ドラマの第1話の脚本を読んだ織田さんが「サラリーマンという設定なら、刑事とはいっても(ほかの刑事ドラマや刑事映画のように)イタリア製のコートは着られないですよね?」と。青島の給料の範囲で買えるコート、寒い冬でもOKでどんな現場でも行けるコート、しかも汚れてもいいもの……と考えてくれて、そして浮かんできたのがあのアーミーコートだったんです。

──そんなリアリティあるキャラクター設定はもちろん、『踊る大捜査線』というタイトルもインパクトがありました。 【君塚】 記憶があいまいなんですけど、たしか第1話の(台本の)タイトルは付いていなくて、『火曜9時刑事もの』という仮のタイトルだったと思います。ただ、みんなで話し合いをしているなかで、「会議は踊る」というフレーズの「踊る」という単語は使いたいよね、というのはわりと早い段階から出ていたんです。あとは、みんな映画好きだったこともあって、アメリカ映画の『夜の大捜査線』(1967年)の捜査線を引用してみたり。そういう話し合いのなかから徐々に『踊る大捜査線』に決まっていったんだと思います。

名セリフは狙ってもダメ

──青島の名セリフの数々はどうやって生まれたのでしょうか? 【君塚】 セリフは狙ってもダメなんですよね。たとえば『OD1』のときの「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」というのは、いま脚本を読み直すと、それほど立てているセリフではないんです。本庁の室井さんとのやりとりのなかで、青島が文句を言っているセリフのひとつ。僕としては、その前後のセリフを強く書いたつもりなんですが、本広監督は「事件は会議室で〜」が、キーダイアログだと捉えた。織田さんもそう思った。だから叫んでいるし、ポイントにしている。そんなふうに僕とは違う捉え方をしてくれることによって、いくつもの名言が生まれているんです。みんなが自分の感性に従って作っているけれど、その感性が決してバラバラではなかった。本当にしあわせな関係性です。

──君塚さん自身が一番気に入ってるセリフをひとつ挙げるとしたらどのセリフですか? 【君塚】 僕はもともと萩本欽一のバラエティ出身なので、お客さんが劇場で笑ってくれるシーン、笑ってくれるセリフが印象に残っているんです。なので、『OD1』でいうと(雪乃のセリフ)「コピーしちゃえばいいのに……」とかですね(笑)。

──たしかに、あのお札コピーのシーンはおもしろかったです(笑)。最後に、君塚さんのアイディアの源泉はどこにあるのか聞かせてください。 【君塚】 映画とかドラマからヒントを得ることもありますし、よく若いアシスタントと飲んだりするので、そういう場からもアイディアは生まれていますね。情報収集方法はさまざまです。ただ、そのなかで一貫しているのは“怒り”です。ニュースでも人との会話でも、そこに怒る対象がないと書けないんですよね。人ってなんて馬鹿なんだろう、人ってなんでこんなにズルイんだろう、人ってなんでこんなに美しいんだろう……何でもいいけれど、頭にカッカきたものをコメディに置き換えたり、シリアスなものに置き換えたりするんです。僕にとっての創作意欲は“怒り”です。

(文:新谷里映)

プロフィール

君塚良一 東京都出身。
『踊る大捜査線』シリーズ、『心はロンリー気持ちは「…」』シリーズ、『世にも奇妙な物語』など数多くの人気ドラマを手がけてきた脚本家。映画『MAKOTO』(2005年)『誰も守ってくれない』(2009年)『遺体 明日への十日間』(2013年3月公開予定)では脚本・監督を務める。

PROFILE詳細

踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望

 湾岸署管内で開催中の国際環境エネルギーサミット会場で誘拐事件が発生。数時間後に被害者は射殺体で発見される。使用されたのは、警察が押収した拳銃。緊急招集された捜査会議では、全ての捜査情報を管理官・鳥飼へ文書で提出することが義務付けられ、所轄の捜査員には一切の情報が開示されない異例の捜査方法が発表される。

 そんななか、第2の殺人が発生。そして、捜査員たちを嘲笑うかのように起こった第3の事件。「真下の息子が誘拐された……!」――疑念を抱きながら必死に真実を突き止めようと捜査する青島。その捜査こそが、青島、最後の捜査になるとも知らずに……。

監督:本広克行
脚本:君塚良一
出演:織田裕二 深津絵里 ユースケ・サンタマリア柳葉敏郎
伊藤淳史 内田有紀 小泉孝太郎北村総一郎 小野武彦 斉藤暁 佐戸井けん太真矢みき
筧利夫小栗旬 香取慎吾

2012年9月7日(金)全国東宝系ロードショー
(C)2012 フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー

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