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『サマソニ』アジア進出構想も CMP社長が語る日本フェスビジネスの可能性

 ジャスティン・ビーバーなどの海外アーティストの公演や年々動員が増加傾向にある『サマーソニック』を運営する一方で、『Electric Zoo』や『EDC』など世界で注目を集める大規模フェスを日本に招致し続けているクリエイティブマンプロダクション。都市型夏フェスの走りともいえる同フェスを手がける同社代表取締役社長の清水直樹氏が、フェスビジネスの展望とアジア進出について語った。

日本人アーティストの中国進出、今はチャンスの時

――4月末に開催された『EDC Japan 2017』(以下EDC)は、クリエイティブマンとライブ・ネーション・ジャパンと(ライブ・ネーション傘下のプロモーター)Insomniac、そしてGMOの4社で開催するというフェスビジネスの新しい取り組み方でした。プロモーター単体でのフェス開催でなく、IT企業と組んでフェスを開催する座組は新しい流れなのでしょうか。
清水 プロモーターだけでフェスを開催する時代ではなくなってきていることを、以前から感じていました。実際、『サマーソニック』に費やす莫大な労力とコストは当社だけで負っているわけではなく、他社と組んで運営をしています。その流れの中で、新たにGMOさんのようなIT企業がフェスビジネスに参入してきたことは自然な流れです。実際、EDCの舞台セットを含め、あれだけの世界観を演出に組み込むにはプロモーターの感覚だとありえない部分もあります。中国や韓国のプロモーターの中では、フェスに銀行やファンドが出資する事例も増えています。日本ではまだ新しい座組ですが、海外の仕組みを見てきたので抵抗はありませんし、今後増える可能性は高いでしょう。一方、フェスは特殊なビジネスで、大きな予算を持っているからといって企業が簡単に参入できるわけではありません。アーティストやマネジメント/エージェントとの関係性や今までの実績も重要ですし、良いプロダクションはノウハウを培ったプロモーターでなければできません。そういった要素を考慮した企業とプロモーターの連携が、今後のビジネスモデルになると思います。

――貴社の海外展開について教えてください。
清水 『サマーソニック』のブランドはすでに世界的であり、この10年間は、数十ヶ国からアジアで一緒にやりたいとオファーがありました。過去に韓国や中国、タイのチームと「ソニック」の名前を使ってアーティストのコラボフェスを行った事例もありますが、『サマーソニック』のブランドには、僕たちが長年かけて大事に育ててきた大きな価値がありますしブッキングも簡単にはいきません。安心できるチームと組まない限り実現できないと考えていたので、日本以外では行いませんでした。しかし、そろそろ僕たちもアジアとの繋がりをより強くしていかなければなりません。その危機感からも現在、海外としっかり組んでフェスをアジアで実施しようと、上海のプロモーターと一緒に『サマーソニック上海』を今年立ち上げるべく、動いているところです。

――アーティストのアジア進出も積極的に支援していくお考えですか。
清水 日本人アーティストが、日本だけを見てビジネスをする時代は終わりに向かっていますし、音楽業界の海外進出への期待は圧倒的に増えています。また、これまで日本人アーティストの中国進出はハードルが高かったのですが、今はチャンスの時。BABYMETALのような世界で話題のアーティストを呼びたい中国のプロモーターは増えていて、そういった日本人アーティストをブッキングしてほしいと逆オファーされることもあります。中国圏では、L’Arc-en-Cielや椎名林檎、ONE OK ROCKなどはすでに人気があり、RADWIMPSは映画の影響でますます注目されています。現在は、台湾と香港で年間30本ほど日本人アーティストをブッキングしていますが、『サマーソニック』のブランドを活かしてアジア進出できれば、両国の音楽市場の発展にも繋がりますから、積極的に進めていく考えです。洋楽フェスとして『サマーソニック』はアジアでトップの動員力なので、発言権も大きいうちにね。

デジタルプロモーションの領域をどう開拓していくかが、プロモーターの次の課題

――音楽配信サービスの普及など、消費者が音楽と接するチャネルが多様化していますが、プロモーション手法の変化をどう感じていますか。
清水 昔は雑誌やラジオなど、結果が見えやすいメディアがありましたが、今はこれで必ず結果が出るといった手法はないに等しいです。逆に、海外アーティストの動員数を予め予測するパターンが増えています。実はジャスティン・ビーバーの幕張メッセ公演時、キャパが大きいのではと言われました。しかし私は、アルバム売上のほかにストリーミングの再生回数や、iTunesチャートなどの数値を見て自信を持っていました。動員数を予測する情報がデジタル領域のデータからも得られるようになったのは、プロモーターにとって大きな変化です。データ活用は今後もっと増やしていかないといけませんし、デジタルプロモーションの領域をどう開拓していくかが、プロモーターの次の課題。海外では、必要なデータを得るために、マネジメントがデジタルツールを活用するケースが圧倒的に多いです。例えば、今年の『サマーソニック』に決まったフー・ファイターズのマネジメントは、Spotifyなどから世界でのアーティストのデータを集約してツアー戦略に活用しています。ノラ・ジョーンズの場合、マネジメント側がデータから日本を大きなビジネス市場だと見ているので、日本でのツアー規模やプロモ企画を逆提案されることもあるようです。彼らのほうがこちらよりも日本の情報を持っていたということがないように、あらゆるデータを僕らがどれだけ集められるかが、当社の今後を左右すると思います。

――ライブビジネスが今後も成長を続ける上で、洋楽プロモーターとして何が課題になると思いますか。
清水 オーディエンスの移り変わりは顕著で、例えば『サマーソニック』は、5000〜1万人がアジアからの参加者です。よく日本で洋楽好きが減っていると言われますが、アジア全体で日本にフェスやライブのために来る人を含めれば、減っていないと思いますよ。コールドプレイの東京ドーム公演でも、会場中からいろんな国の言語が聞こえてきました。つまり演出、ブッキング、インフラもグローバルに強化して、彼らが参加しやすく、かつ楽しめる場を作っていくことが今後の課題の1つです。一方、だからといってフェスのキャパシティを増やすことは危険な流れです。海外でヘッドライナー級のアーティストでも、日本では動員力がないこともありますし、クリエイティブをキープするためにもフェスは適正なキャパで長く続けていくことが、僕たちが進むべき道だと思っています。

――フェスビジネスにおける今後のビジョンやクリエイティブマンの新規事業をお聞かせください。
清水 今まで、海外の動きをいち早くフェスとして具体化してきました。EDMが日本で浸透する前からデヴィッド・ゲッタなどDJをブッキングして、その後『electrox』をいち早く始め、世界的なフェス・ブランドである『Electric Zoo』『EDC』の日本招致にも動いてきました。『サマーソニック』でもDJをメインステージにブッキングするなどチャレンジしてきましたが、これらは全て、世界の流れを見た上での判断です。今後も世界で何が起きているかを見続けて、フェスの新しい形を提案していきます。来年開催予定の『WARPED JAPAN』は、スケーター文化に日本独自のカルチャーをエッセンスとして採り入れて、日本のバンドをUSの『WARPED TOUR』にも紹介します。それから、僕たちのノウハウを音楽以外の領域で広げることも面白そうです。

(文:ジェイ・コウガミ/写真:西岡義弘)
清水直樹(しみず なおき)
1965年生まれ。静岡県出身。1990年にクリエイティブマンプロダクションの立ち上げに参加。1997年に代表取締役に就任する。2000年に『サマーソニック』をスタートさせ、その後も『PUNKSPRING』、『electrox』、『POPSPRING』など数々のフェスを新設。今や年間10本以上を主催し、アジアでは「Mr.Festival」と呼ばれる。2012年にLIVE NATIONと、LIVE NATION JAPAN合弁会社を設立したが2年後に解消。現在、年間150〜200程の海外アーティストを招聘している。

提供元: コンフィデンス

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