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(更新: ORICON NEWS

松居大悟監督『こんなに意味のない映画はほかにない』

演劇界出身の気鋭の若手監督、松居大悟氏。監督デビュー作『アフロ田中』でもおなじみのその特有な世界観と空気感が若者を中心に支持を広げている。そんな松居監督が、“意味のない感じ”のおもしろさを描いて今の高校生たちに寄り添った『男子高校生の日常』を語る!! 昨年話題になった高校生たちのヒエラルキーを描いた青春映画に思うこととは!?

高校生が全然成長しない話にしたい

──『男子高校生の日常』は人気漫画が原作ですが、細かいエピソードを綴った漫画を長編映画にするのは難しくなかったですか?
松居もともとは深夜ドラマにしようという話で、『サザエさん』みたいに7分ぐらいの短編を毎回3話やろうと脚本を書いていました。でも、なんか普通だなぁと(笑)。アニメもすでにやっていたので、じゃあもっと攻めようよということになりました。僕は『男子高校生の日常』の“意味のない感じ”がおもしろいと思っていたので、長編になったらその意味のなさがより強調されるだろうなと。こんなに意味のない映画ってほかにないんじゃないかというものにしたい。高校生が全然成長しない話にしたいなと思いました。

──原作にどの程度忠実にやろうと思っていましたか?
松居原作が漫画やアニメとしておもしろかったからこそ、忠実に作りすぎてもファンに向けたものにしかならないので、映画として勝つつもりでいかなきゃと思っていました。そういう意味でキャラクターを再現するより、おもしろさの根っこをいかに抽出して見せるかを考えていました。もっと別の人が撮ったほうが漫画やアニメのファンが喜ぶ作品になったかもしれないですし、その方が望まれていたかもしれないですけど、僕はビジュアル的に似せようとはまったく思っていなかったです。野村(周平)が「金髪にしなくていいですか?」と聞いてきたときも「しなくていいです」と答えました。その結果、野村がネットで叩かれるという(笑)。

──原作に似ている人を選んだわけではないとしたら、どういう基準でキャスティングしたんですか?
松居タイプがバラバラの人であればあるほど一緒にいるのがおもしろいなと思って。あとは、クラスのどこにも属していない感じの男子っていう雰囲気を出したくて。トップグループとか端っことかじゃなくて、文化祭のどこの出し物にも参加できなかった奴らが集まってとりあえず出し物をやった感、その結果仲良くなっているという。そういう意味でひとりだけ老けている角田さん(東京03)を入れてみたりして、デコボコな感じを出しました。

──文学少女役を演じた、たんぽぽの白鳥久美子さんも原作とはかなり違いますね。
松居ここでもし美人が文学少女をやっていたら、リアリティがないなと思って。そんな“日常”なんて救われないなあと。現実には美人もいれば美人じゃない人もいて。白鳥さんが美人じゃないと言いたいわけじゃないんですけど(笑)。

──リアリティということでいうと、非モテ男子役のキャストはみんな実生活だとモテ男子なんじゃないですか?
松居どうなんでしょう。取材ではみんな「モテなかったですよ」と言っていましたよ、モテる顔で(笑)。でも、撮影前に話をしたときは、みんな「わかる」って共感していましたし、モヤモヤした空気感を出せている気がしました。

大人が勝手にカテゴリー分けして評価して

──松居監督がおっしゃる「トップグループと端っこ」の高校生たちを描いた青春映画『桐島、部活やめるってよ』が昨年評判になりましたけど、それについてどう感じていますか?
松居高校生のときって、今トップグループにいるからとか、自分は端っこだからとか、考えていないと思うんですよ。大人になって客観的に振り返ったら、あいつトップグループだったなとか思うだけで。大人が勝手にカテゴリー分けして「リアルでしょ?」って作って、それを大人が「リアルだ」って評価して。じゃあ、それをリアルかどうかも判断できない高校生は何を観たらいいんだよって思うんですけどね。9割ぐらいは妬みですけど(笑)。

──松居監督ご自身は、振り返ってみるとどういう層に属していたんですか?
松居どこにも属していなかったんですよ。クラスの隅っこで下ネタを言って、AVのレンタル屋に寄ってラーメンを食べて帰るという日々を過ごしていただけなんで(笑)。でも、トップっぽい人たちとも話せたし、端っこっぽい人たちとも話せたし。でもそういう人は物語性がないから作品で描かれることはなくて、なんか、どこにも属していなかった自分たちのことは「描く価値がない」と青春時代を否定されている気がして悔しかったです。

──ちなみに、高校時代いちばん楽しかった思い出は?
松居僕は福岡の山奥の学校に通っていたんですけど、早坂ひとみというAV女優が来たことがあるんですよ。僕、大ファンだったんで、教室で一緒に下ネタを言っていた仲間と見に行ったんですね。DVDを買うと握手ができたんですけど買う金がなくて、遠くから見て、そしてまたラーメン屋に寄って帰るという……。いちばんかどうかはわからないですけど、そういうのが楽しかったですね。(映画に)エピソードとして直接入れたというのはとくにないですけど、トイレ掃除のときに無駄にはしゃぐところとか、女子にものすごく興味があるのにないふりをしているとか、この映画で描いている空気感みたいなものは全部自分で体験したことですね。

──この映画を観る大人に対してはどういうところをアピールしようと思いましたか?
松居正直、映画ツウみたいな人がどう思おうが関係ないと自分に言い聞かせていました。そこを意識すると破綻する、映画の偏差値を上げるのはこの映画の戦い方として違うと思っていたので。高校生の頃って、誰が主人公というのもなかったですよね。自分が主人公に決まっているんですから。だからタダクニを主人公にした話ではなくて、画のなかに映っている人全員の話にしたかったんです。例えば、タダクニがひと目惚れした瞬間の表情を見せたら、タダクニという主人公の感情をただ説明するだけになってしまうので、後頭部を映しました。その後頭部を観て動いた感情が、きっとあなたが青春時代に持っていた感情なんだよと、大人になった人たちに語りかけるつもりで作りました。だから、高校生はもちろん、大人にも楽しんでもらいたいです。
(文:岡 大)

『男子高校生の日常』

 タダクニ(菅田将暉)、ヨシタケ(野村周平)、ヒデノリ(吉沢 亮)は、男子校に通う仲良し3人組。いつもタダクニの部屋に集まって、妹のスカートを穿いてみたり、マンガを読んだりとくだらない日々を過ごしている。ある日、女子校と文化祭を共催する事となり、冴えない毎日が急展開する。グダグダ男子校にキラキラ女子が襲来し、勘違いな恋愛騒動も……

監督:松居大悟
出演者:菅田将暉 野村周平 吉沢亮
2014年3月19日(水)Blu-ray&DVD発売 【DVD情報はコチラ】
(C)2013山内泰延/スクウェアエニックス・映画「男子高校生の日常」製作委員会

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『男子高校生の日常』公式サイト

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