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『ムーンライト』の訳あり品が即日完売、見た目よりもストーリー重視の時代に? 変わりゆく菓子業界の“ルッキズム”

 先月、森永製菓のロングセラー商品『ムーンライト』の訳あり品が発売され、即品切れになるなど、話題を呼んだ。「割れ」「欠け」「菓子粉の付着」などを割安で販売し、フードロス削減を目指す取り組みだ。世界的に見ても、日本のお菓子は長らく“見た目の良さ”が重視されてきたが、60年以上の歴史がある『ムーンライト』が、なぜ今、訳あり品発売に至ったのだろうか。昨今の物価高騰やSDGsの観点から、日本の菓子業界も転換期に入っていくのだろうか。メーカーとしての“見た目”に対する想いを同社に聞いた。

40項目を満たさないと正規品にはなれない… これまで“訳あり品”はどう処理してた?

 森永製菓は、昨年からECおよび100円ショップにて『ポテロング』不揃い品を販売しており、「令和4年度消費者庁長官表彰」を受賞している。

「以前はロスの発生を減らすことに注力しており、製造工程における課題改善に努めてまいりました。しかし、世の中やお客様の変化を捉え、企業として食品ロス削減に対応するために、製造工程の見直しに加えて、訳あり品の販売検討を始めました」(森永製菓担当者/以下同)

 今回、新たに『ムーンライト』がその対象として選ばれたのは、特に販売数が多い人気商品だけに、製造ロスが会社としての大きな課題だったためだ。ビスケットは製造時期によっても生地が変化するため、「割れ」「欠け」「菓子粉付着」などを全く出さずに作ることは非常に困難な商品なのだ。

「歴史ある『ムーンライト』をお客様に安心して手に取っていただけるよう、品質に関わる社内基準をおよそ40項目設定し、サイズ・形状の基準を満たしたものを正規品として製品化しています」
 これまで当基準を満たさなかったビスケットは、飼料などに再利用してきた。その中で、サイズ・形状の基準は未達でも、品質に関わる基準に満したものを、“訳あり品”として割安で販売することが先月発表されると、SNS上では「得しかない」「チーズケーキの土台に使える」「割れ方で月の満ち欠けの遊びができそう」「いつも割って食べてるから手間省けてありがたい!」「こういうのもっと増えてほしい」といったコメントが数多く寄せられ、話題を呼んだ。

 工場の製造過程で割れたり欠けたりした製品は発生数量が安定しないため、展開はLOHACO(外部サイト)でのEC販売のみ。初回納品分は即日完売した。

「メディアやSNSでなど、とても好意的な反響をいただき、驚きとともに大変うれしく思っています。お客様の食品ロスへの関心の高さも実感しました。『ムーンライト』のメイン購買層は40−50代女性であるのに対し、『訳ありムーンライト』は20−30代女性の割合が高くなっており、環境問題などに関心の高い層に刺さったのではと推察しています」

大手メーカーの“訳あり品”解禁で、日本の菓子業界変わる? 廃れゆく「映え」文化

 これまで日本の市場において、世界的にもかなり神経質に「見た目」が重視されてきたように思う。特にここ10年は、インスタグラムなどの影響で、「映え」が強く意識される傾向にあった。ただ、昨今の物価高騰やSDGsの観点から、そうも言っていられない時代に入ってくるだろう。今後は、より本質的な“味重視”の傾向になっていくのだろうか。

「お客様のニーズや価値観が多様化している中、見た目・味・価格のみならず、商品に込めた想いやメッセージに共感していただける方も増えているのではないでしょうか。様々な価値観を持ったお客様に満足していただける品質・価格、そしてストーリーのある商品を提供できるように、企業として努力していきたいと考えています」
 とはいえ、「見た目」も大事な要素であることは変わりない。

「“食は五感でつくられる”と言われるよう、視覚=見た目もとても重要と考えております。特にお菓子は嗜好品ですので、『見た目』も重要なファクターです。一方で、お客様のニーズや価値観が多様化する中で、見た目をそれほど重視せずに、そのほかの価値を大切にされるお客様もいらっしゃいます。我々は、それぞれお客様の大切にしていることを見極めながら、商品開発を進めてまいります」

 同社他製品において、新たな訳あり品の発売は現時点では未定だが、製造ロスの状況に応じて随時検討していくという。訳あり品の販売は、単なる製造ロス削減ではなく、社会に向けたメッセージも強く含まれている。

「食品ロスの低減に対する取り組みを、お客様と一緒に進めていく“きっかけ”を作ることができればと考えています。訳あり品の発売は、これまで品質上問題の無かったものの、流通されていなかった製品を、知っていただくこと、食べていただく経験を通じ、『食品ロスの問題』そして『持続可能な社会の実現』を、お客様やそのご家族、友人の方などと一緒に考える、一つのきっかけになることを期待しています。そして、変わらぬおいしさも体感いただき、アクションが繋がっていくような潮流に貢献したいと考えています」

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