米カリフォルニア州エメリービルに本拠を置くアニメーション・スタジオ ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、ピート・ドクターは、今後、劇場公開・配信を予定している作品についてプレゼンテーションを行う前に次のようにあいさつした。

　「ここ数年は、世界が大きく変化した時期でした。そして、ピクサーが未来について考えるきっかけとなりました。人間が生まれる前に『どんな自分になるか』を決めるソウルの世界を舞台にした『ソウルフル・ワールド』のジョーのように、『なぜ私たちはここにいるのか？』、『私たちの目的は何ですか？』と考えました。私たちにとって、それはすばらしい物語をアニメーションで伝えることです。それが劇場用長編映画であろうと、ストリーミングシリーズであろうと短編アニメーションであろうと、私たちは物語を語ることは、私たちが人として誰であるかの基礎であると考えています。私たちは、私たち自身の物語を捉え、反映するアニメーションの力を信じています」

『エレメンタル（原題）』2023年6月16日公開

　監督のピーター・ソンとデニス・リーム、声優を務めたリア・ルイスとマムドゥ・アチーがステージに登場し、2023年6月16日に全米で公開予定の新作オリジナル長編映画『エレメンタル（原題）』を紹介した。

ピーター・ソンこれは僕にとって非常にパーソナルなストーリーです。（自分が幼い頃、両親と撮影した写真を見せながら）アイデアは、ここから生まれました。母は70年代らしいヘアスタイルをしていますね。僕はしっかりと抱かれています。両親が70年代初頭に韓国から移民としてやってきた時、彼らにはまるでお金がありませんでした。親戚もおらず、英語もしゃべれませんでした。それでも、ニューヨーク市ブロンクス区の241番街に食料品店を開き、なんとか自分たちの生活を始めたのです。僕の両親のように、夢と希望を持って、故郷を離れ、新しい土地に来た人たちはたくさんいます。そして、大きなサラダボウルのように、違った言語、違った人種の人たちが混じった文化が生まれたのです。

デニス・リーム私たちは大都市を舞台に、犠牲を払って、あるいはリスクを負ってでも何かに挑んだ人たちの話を、ちょっとひねりを加えて語りたいと思いました。

ピーター・ソンこれが完成したアンバーです。彼女は、水に囲まれた世界に生きる、タフで真っ赤に燃えるキャラクター。その強さのせいで、時に自分でも感情をコントロールできなくなることもあります。僕たちは、彼女を、燃えているのではなく、火でできているように見えるよう意識しました。一方、ウェードは水の男。彼は透明なので、何を感じているのか外から見えます。僕らのチームは、彼を、楽しくて、水っぽくて、ふにゃふにゃしたように描こうとしました。

デニス・リームこのふたりの関係は、この映画でとても大事な部分。ふたりの相性を表現してくれる役者を探すことは、非常に重要でした。

リア・ルイスここに呼んでくださってありがとうございます。

マムドゥ・アチーリアと僕はアンバーとウェードを演じさせていただけたことをとてもうれしく思っています。おわかりのように、ふたりは正反対。文字通り相手を消せるふたりは、どうやって一緒に力を合わせていけるのか探ろうとします。

リア・ルイスアンバーはその気になれば火を使えるんですから。

マムドゥ・アチーなんだって？　水は火に勝つってみんな知っていますよ（笑）。

『エリオ（原題）』2024年春公開

　「Bring Us Your Leader」と書かれた不吉なメッセージに続いて、ピート・ドクターは監督のエイドリアン・モリナとプロデューサーのメリー・アリス・ドラムを紹介し、オリジナル長編映画『エリオ（原題）』について発表した。

メリー・アリス・ドラム私たちはこの宇宙にいる唯一の存在ではないのでしょうか？　エイリアンや宇宙船について聞いたことは全部本当なのでしょうか？

エイドリアン・モリナ地球外の存在と初めて接触したのが、遅刻せずに学校に行くのが精一杯の子どもだったとしたら？　それがこの作品です。エリオは地球に住む11歳の少年。体育会系というよりは文化系、想像力豊かで、インドア派。周りからちょっとはみ出ていると感じています。

メリー・アリス・ドラム彼はオルガという名前のお母さんと一緒に暮らしています。オルガは宇宙から来る奇妙な暗号を解くトップシークレットのプロジェクトにかかわっていて、それらがどこから来るのか、誰が送っているのかを突き止めようとしています。

エイドリアン・モリナですが、いろんなことが重なって、エリオが最初に接触することになるのです。そして彼は銀河の彼方にある、進化したエイリアンのユニバースが集まった国連のようなところに行くことになるのです。

メリー・アリス・ドラムそこには誰も見たことがないような建造物があり、あらゆる形や大きさのエイリアンがいます。

エイドリアン・モリナそこでエリオは地球の親善大使になってしまう。地球の運命はエリオにかかっているのです。地上ではみ出していると感じていたエリオは、自分への疑問を乗り越え、人間の一番いいところは、自分自身でいられるところだということをエイリアンたちに証明しなければならなくなります。

メリー・アリス・ドラムエリオはヒーローになる運命にあります。しかし、お母さんの助けなしにそれはできません。エリオのお母さんを演じるアメリカ・フェレラをご紹介します。

アメリカ・フェレラこの美しい作品に参加させてもらって、とてもうれしいです。オルガは、自信があり、頭がよくて、どんな状況にあってもしっかりした人。ですが、映画のタイトルは『エリオ』なんですから、主人公はエリオです。エリオのことを、私は2分で大好きになりました。ここでヨナス・キブレブをご紹介しましょう。

ヨナス・キブレブみなさんこんにちは。

アメリカ・フェレラエリオ役を獲得した時のことを語ってもらえますか？

ヨナス・キブレブすごくうれしかったです。飛び跳ねてしまいました。パパとハイタッチしました。メリー・アリスが電話をくれた時、僕たちは別のオーディションに向かっていたんです。僕らは小さなショッピングモールの前に車を停めたのですが、偶然にも、目の前にあった店は「Olga’s Kitchen」というレストランだったんですよ。ユニバースが祝福してくれているように感じました。ピクサーの映画に出られること、エリオを演じさせてもらえることに、強く感謝します。

アメリカ・フェレラ素敵な話ですね。この映画のどこが一番好きですか？

ヨナス・キブレブこの映画に出てくるエイリアンはすごくクールなんですよ。エリオが宇宙でクレイジーなことをいっぱい経験できることを楽しみにしています。もちろん、アメリカ（・フェレラ）、エイドリアン、メリー・アリス、ピクサーと一緒にお仕事できることも。

アメリカ・フェレラ『エリオ』は2024年の春公開予定です。

『インサイド・アウト 2（原題）』2024年夏公開

　『INSIDE OUT（邦題：インサイドヘッド）』（2015年）でジョイ（ヨロコビ）の声を担当したエイミー・ポーラーが登壇。「第88回アカデミー賞」で長編アニメーション賞と脚本賞を受賞した『INSIDE OUT』の続編『INSIDE OUT 2』が制作中であることを発表した。監督は前作のピート・ドクターからケルシー・マンにバトンタッチ。プロデューサーはマーク・ニールセン、脚本はメグ・レフォーブが続投する。

　前作では11歳だったライリーがティーンエージャーとなり、彼女の頭の中で新しい感情が生まれているかもしれないし、生まれていないかもしれない、まったく新しい冒険を描き出す。

『ウィン・オア・ルーズ（原題）』2023年秋ディズニープラスで独占配信

　『ウィン・オア・ルーズ（原題）』は、ピクサー史上初の長編シリーズ作品。ある出来事について、人それぞれ異なる主観、認識のもとで行った判断や言動を描き出す。

キャリー・ホブソンマイケルと私はともに『トイ・ストーリー4』のストーリーボード・アーティストで、同僚でした。そんな中で、私たちはとても違った見解を持つことがあると気づいたのです。一緒に参加したミーティングで、私が「きょうなみんなパニックになっていたね」と言ったら、マイケルは「そう？　いつもどおりだったんじゃない」と返したんだ。「私たち、同じところにいたよね？」と（笑）。主観なんですよね。そこから『Win or Lose』が生まれました。

マイケル・イェーツこのシリーズは、決戦を前にした、ザ・ピクルスというソフトボールチームを追うものです。

キャリー・ホブソンですが、普通の作品とは違い、それぞれの回はすべて同じことを語ります。ただ、主人公が毎回違っていて、違う視点から語られるのです。それらの主人公は、子どもだったり、親だったり、審判だったりします。その人たちの私生活も交えて語られていきます。

マイケル・イェーツそれぞれのキャラクターが実際にどう感じているのかを見ることができるのです。たとえば、野球の試合を見にいって、審判が間違った判断をしてファンが怒るのを見たことはありますか？　僕らのシリーズでは、審判のフランクがどんな気持ちなのかを描きます。フランクはファンの怒りに耐えるために、感情的な鎧（よろい）をつけるのです。

キャリー・ホブソンタフガイであると思われているピッチャー。彼は自分のことしか考えていない嫌な奴に見えますが、実はある女の子のことが好きでたまらないのです。

マイケル・イェーツもう自分の人生は終わりだ、と感じたことはありますか？　ロシェルというキャラクターが、まさにそうです。

キャリー・ホブソン人それぞれ異なる主観で描かれたストーリーが、最終回に一緒になります。大変な1週間を経験したキャラクターたちが一緒になって、お互いの視点を理解し、少し思いやりを持てるようになるのです。このシリーズは、ソフトボールについての話ではなく、コメディ、競争意識、そして人生で我々が遭遇する困難についての話です。

マイケル・イェーツコーチのダンの声はウィル・フォーテが演じます。