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日本の花火は「ショービジネス化」するべきなのか? コロナ禍で窮地迎えた花火師の苦悩
伝統的に継承されてきた「日本花火」と商業的に発展してきた「西洋花火」に大きな“壁”
西洋では短時間で打ち上げて観覧する花火がほとんど。何らかのイベントのクライマックスに、花火を同時に、もしくは短時間で何発も打ち上げる花火だ。つまり西洋の花火は、日本と比べ、ショーの一部、演出としてエンターテインメント的に捉えられている。
以前は大手IT企業の会社員だった平山氏の新進気鋭な働きかけもあって、ここ20年で、日本の花火の打ち上げ技術、演出は急激に進化してきた。だが、ショーとして魅せられる日本の花火は「20年ほど前は1割程度でした」と中嶌結希氏は語る。「1つ1つの花火を作りこむ日本の職人の感性や技術は世界一だと感じます。ですが、花火を使った演出力やショーとしての完成度は西洋と圧倒的な差がある」(中嶌氏)
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「元々無料で観られていたもので、花火大会にお金を払うという意識が一般にはほぼなかった。そんな中、コンピューターシステムを使い音楽とシンクロさせて花火を打ち上げる技術が普及してきており、これを1つのコンテンツとして、例えば音楽業界のイベンターが主催となり、有名なアーティストとのコラボなどの付加価値を付けようという動きが見られ始めてきました」(平山氏)
平山氏はそう考え、アメリカの花火打ち上げシステムや海外の打上技術などを積極的に取り入れ、日本が欧米に比べ遅れている花火の打ち上げ方、見せ方(演出)の発展と改善に取り組んできた。「花火は言語を超えて楽しめるもの。日本も海外に出せる入り口に立ち始めた。そんな矢先です(中嶌氏)」。――花火業界は突然の大きな受難に対面する。新型コロナウイルスの感染拡大だ。
個人向け花火打ち上げのポータルサイト「ハナビジャパン」を運営する中嶌氏も、例に漏れず苦難に襲われた。他業種でアルバイトをしながら食いつないでいたが、外出自粛が落ち着いてくると、「夏見られなかったから花火を上げてほしい」という“個人”依頼の花火打ち上げが増えてきたのは思わぬ報酬だった。
一方で平山氏は「花火大会は毎年当たり前のようにあったもの。ほとんどルーティン、作業のように目の前のことを淡々としかやってなかったことに気が付かされた。そういう意味で、自分の花火への意識を改革する期間となったかもしれない」と語る。ピンチは最大のチャンス――。当然戸惑いや不安はあったものの、多くの人が金科玉条のごとく語るその言葉が実体験を通して脳を直撃したという。
保守的だった日本の花火業界、過渡期を迎え「ショービジネス」化加速の兆し
「複数の花火会社を横断して“作品”を創り込んでいくのは初めてのケースです」と意気込む平山氏に、「我々としても不安はありますし、逆にこれが“世界に誇る日本の花火”という可能性に向かう1つの挑戦とも感じます」と中嶌氏も気合十分。彼らと日本屈指の技術を持つ花火会社がローリングストーンズの名曲と共に、世界でも類を見ない新しい花火エンターテインメントにチャレンジする。
観覧チケットは、S席7,700円、A席6,600円。全席指定で無料観覧席はなく、国内ではかなり攻めたイベントだ。奇しくも、花火業界衰退のこの時期があったからこそ、次へのステップを考えなければならない考えが浸透しやすかったという現状もある。平山氏と中嶌氏が日本の伝統に挑んだ新たな試みが、暗雲立ち込める今の花火業界に煌めきを灯すかもしれない。
ストーンズ公認 東京で今年最初の花火大会 東京SUGOI花火
「THE ROLLING STONES 60th ANNIVERSARY THE GREATEST FIREWORKS〜感激!偉大なる花火〜」(外部サイト)
「THE ROLLING STONES 60th ANNIVERSARY THE GREATEST FIREWORKS〜感激!偉大なる花火〜」(外部サイト)