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唯一無二の「ガチ地方創生アイドル」りんご娘・王林 バラエティ席巻する“そぼかわ”需要

 「ずいぶん訛ってるご当地アイドルが出てきたな〜」との初印象から早3年。気がつけば、あらゆるバラエティ番組のひな壇を席巻しているのが、りんご娘のリーダー・王林(おうりん)。特にレギュラー出演している番組はないものの、津軽弁で繰り出す天然発言が人気となり、『ダウンタウンDX』や『突破ファイル』(ともに日本テレビ系)など、コンスタントな出演を果たしている。バラエティ業界でひた走るピュア+素朴=“そぼかわ”需要とは?

大御所&人気MCを虜にする独自の世界感 ビジネスライクなご当地アイドルではないガチの地元愛

 RINGOMUSUME・王林が(全国的に)ブレイクするきっかけとなったのは、2018年に出演した『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)だろう。このとき、AIスピーカーのアレクサについて聞かれた王林は、「青森にそういう文化はまだ流れてない」と真顔かつ津軽弁で回答し、爆笑をかっさらった。これにより初出演にして見事「踊る!ヒット賞!!」を獲得したのである。以後、明石家さんまにハマったのか、同番組に半年で4回も出演するなど、“さんま御殿育ち”といっても過言ではない成長を遂げる。

 また、『有吉ジャポン』(TBS系)では、青森県の平均寿命が男女ともに全国最下位であることについて、司会の有吉弘行が「何でだろう? やっぱりしょっぱいものとか、お塩とか?」とたずねると、王林は「物にも醤油とか。甘じょっぱい生活しているので…」と回答。これに有吉は「いいなぁ」と笑いつつ、「だからこそ(お年寄りを)大事にするってこと?」と聞くと、「はい。みんな優しく。いつ逝ってしまっても…」と手を合わせる姿にスタジオは大爆笑となりつつも、どこかほんわかとした空気が流れたのだった。

 こうして、さんまや有吉などの大御所からかわいがられている王林だが、彼女の根底にあるのはガチな“青森愛”。実際、彼女がリーダーを務めるRINGOMUSUMEは、「cool&country」をコンセプトに、農業活性化アイドルとして2020年に結成、青森の老舗ご当地アイドルである。ファンネームは「farmer」で、コンサートのアンコールの掛け声は津軽弁で「おかわり」を意味する「あどはだり」というガチっぷり。“王林”自体も一瞬「中国人?」と思わせる名前だが、りんごの品種名であり、2013年に「二代目王林」となり、同グループに加入した。もちろん出身は弘前市のネイティブ。

 現在も青森在住で、2019年の『ORICON NEWS』のインタビューでは、「新幹線で片道約4時間かけて多くて週5で東京に通ってます」「東京で活動するのは青森のため」「(目標は)青森の魅力を世界に発信できるようになること」と数々の熱いエピソードを語っている。先日もトーク番組で「青森県ですごい権力のある人間になりたいんですよ」と発言していたが、将来は県知事にまで上り詰めてもおかしくない勢いである。

飽和状態のギャルタレントに真っ向勝負する“そぼかわ力”

 地方を活動の拠点とする「ご当地アイドル」の歴史は長い。AKB48に続き、SKE48(名古屋市・栄)、HKT48(福岡市・博多)、NGT48(新潟市)、STU48(瀬戸内)も活躍中であり、「Negicco」や、ももいろクローバーZと同事務所の「たこやきレインボー」などもいまだ健在。町おこしも兼ねて各都市に「ご当地アイドル」がいるという状況は珍しくない。

 そもそも、同郷出身の芸能人につい思い入れしてしまうのは普通のことだし、ご当地アイドル的な人気を誇った歌手やタレントは昔から多数おり、「ローカルアイドル」「ローカルタレント」と呼ばれる人たちは全国津々浦々に存在した。しかしながら、地元愛に根ざしているというよりは、“ビジネスライク”な部分も時折垣間見え、“出稼ぎ”的に東京に進出するということもよくある話だ。

 ただ、ここ数年のバラエティ番組における「女性枠」は、ご当地アイドルでも女性芸人でもない。藤田ニコル、みちょぱ(池田美優)、ゆきぽよ(木村有希)、最近だとゆうちゃみ(古川優奈)など、路線の違いはありながらも、若いモデル出身のいわば“ギャル系タレント”の時代だ。彼女たちの特徴としては、軸足をバラエティ番組に置き、声が大きく、自己アピール力も強く、番組では「爪痕を残す」「バラエティ映えする」ことに注力しており、なかなかに強力な面々なのである。

 そんな中、かつての「おっとり系」や地方出身の「訛り系」は絶滅寸前(しいていえば、めるる=生見愛瑠はおっとり系か)。そこに突如現われた王林の存在は、“抜け感”を放ち、バラエティの中でも“箸休め”的な役割も担っており、騒々しくなりがちな空気を緩める力を持っている。そうした王林の素朴でかわいい力=“そぼかわ力”は、バラエティの主力である“ギャル系タレント”ともよい意味で一線を画し、差別化を果たしている。

トーク、クイズ、ロケ…オールマイティな対応力で永続した爪痕を残す

 とはいえ、バラエティ番組における王林の立ち居振る舞いは見事である。地元青森のイベントやライブ出演、幼稚園や介護施設などへの訪問等々、多数の実績を積んできた成果なのか、東京の番組出演の際に見せる臨機応変な対応力のレベルは高い。

 自分のキャラクターを活かしながらも、しっかりとバラエティの流儀を押さえ(天然なように見えても場の空気は読んている)、レギュラー出演の番組は少ないものの、定期的に出演している番組や単発出演はかなり多く(需要が高い)、ジャンルもクイズ、ものまね、大食い、トーク番組、ロケ…と多岐にわたるなど、結果的に超売れっ子アイドルになっているのだ。

 2019年より出演している『THE 突破ファイル』(日本テレビ系)では抜群の正解率を誇っており、自身のインスタグラムではモデル並みのスタイルを披露している。訛りと天然のキャラクターが先行してしまうが、仕事に向かう姿勢は“抜け”がない。単なるアイドルでもタレントでもなく、“王林”というジャンルを確立しているようにも見える。

 最近では王林と同じように、ふんわり・おっとり系(ゆるふわ系)をウリにしたNMB48・渋谷凪咲もバラエティアイドルとして注目を集めている。王林も渋谷もご当地グループを代表する存在であり、自分の立場を理解して立ち居振る舞うことで共通している。

 それでいて“個”を前面に出すのではなく、自然体のおっとりした空気で周りを包み、ギャル系タレントとは正反対のカウンターとなって、個の強い芸人やタレントを中和する存在となっている。今後は戦場と化しているバラエティ番組をやさしく包み込む、王林のような“そぼかわ力”がもたらすおっとり供給が求められる時代が巡ってくるかもしれない。

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