ORICON NEWS
多発する列車内の事件、元・車掌はどう見る? 危機管理やSNS対策に見る鉄道職員の苦悩「本来の安全確認ができなくなる」
知られざる運転士のトイレ事情、求められる“分単位”での節制生活
関大地 急な生理現象には抗えないですよね。もちろんプロなので、乗務する前は利尿作用のあるもの、冷たいものを摂取しないという基本的なことはしていますが、それでも急な腹痛などは襲ってきます。皆さんも経験があると思いますが、本当にお腹が痛いときって、集中力がなくなってしまうじゃないですか。安全を脅かすぐらいの痛みなら、列車を止めてお手洗いに行きましょうというのが、JRの考え方です。
――普段から自己管理は徹底されているのですか?
関大地 鉄道は1分1秒単位で動いているので、当時はかなり節制していました。しかも、毎日出勤時間が違うんです。運行ルートによって細かく設定されていて、今日は8時32分、次の日は9時17分出社…というように1分単位で変わります。前日にお酒を飲む場合でも、「何時何分までなら飲んでも大丈夫かな」と、かなり細かく時間管理していました。
――かなり負担が大きかったのでは?
関大地 毎日のように遅刻する夢を見ていたので、退職してからの解放感はすごかったですね(笑)。でも染みついたものがあるのか、今でもあまりアナログ時計はつけず、秒単位まで見られるデジタル時計を選んでしまいます。職業病ですかね(笑)。
賛否あった英語アナウンス、今ではさまざまな鉄道会社が導入
関大地 JRはいわゆる安定した企業であり、基本は定年退職までいる人が多いんですね。そんな状況で僕は外に出ていくわけですから、英語アナウンスなども含めて、やってきたことを水平展開しなければもったいないと思ったんです。僕が経験してきた対人コミュニケーションの方法は、鉄道はもちろん、さまざまなサービス業にも応用できるのかなという思いもありました。
――実際、発信することを始めてみて、いかがですか?
関大地 やはり表に立つと、バッシングされたり、匿名掲示板に悪口を書かれたりしたこともありました。でも、伝えなければいけない真実や、これから鉄道職員になる方、乗客の方も知っておいた方がいいと思うことを伝えたい気持ちが強かったんです。
――関さんが始めた英語アナウンスも、今ではさまざまな鉄道会社で受け継がれています。
関大地 最初は賛否両論あったんです。SNSで「発音がなってない」とか「下手くそ」とか「やらない方がマシなんじゃない?」とか、よく言われました(笑)。でも、英語アナウンスは海外の方に向けたもの。たとえカタコトだったとしても、少しでも海外の方の役に立つならば、大きな意義があることだと思っています。だからこそ、広がっていったのだろうと思いますね。
――お話を聞いていると、安全対策にクレーム対応、SNS対策から自己管理まで、本当に大変なお仕事です。そのわりに知られていないことも多いと思いますが、読者に伝えたいことは?
関大地 鉄道職員は、クレームを受けることがほとんど。例えば3分くらい遅延しただけでも、「なんで遅れているのにアナウンスしないんだ」というクレームをよく受けます。逆に、鉄道職員が良い対応をしても、それが広く伝わることはなかなかない。もし気持ち良いサービスを受けたら、お客さま相談センターなどに伝えていただけると、職員のやりがいになり、さらなるサービス向上に繋がります。お客さまの安全を守りながら、いかにしっかりと乗客とコミュニケーションをとるか――そのことに真摯に向き合って仕事をしているということを知ってもらえると嬉しいです。
(文:磯部正和)
『車掌出てこい!英語車掌が打ち明ける本当にあった鉄道クレーム』
詳しくはこちら(外部サイト)
■YouTube(外部サイト)
■Twitter (外部サイト)
■Instagram(外部サイト)
■LINE公式(外部サイト)
■TikTok https://www.tiktok.com/@eigo_shasyou