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三浦春馬がしびれた日本の“技、食、そして人” 4年かけ全都道府県を旅した日々
撮影:田中達晃/Pash 取材・文:磯部正和 記事制作:オリコンNewS衣装:ジャケット ¥100,000 パンツ ¥65,000 シャツ ¥56,000/以上全て イッセイ ミヤケ メン
三浦春馬が旅に出る理由――「日本のことをまるで知らなかった」
三浦春馬僕が24〜25歳のときに持ち上がった企画でした。当時から俳優として日本各地に行く機会はあって、その土地ならではの特産物やグルメなどに触れることはしていたのですが、その由来やストーリーは知らず、漠然と学びたいという思いはあったんです。
一方で、海外で活躍する先輩方を見て「いつか自分も……」という思いから、短期の留学にも行っていました。そのとき、自分より年下の子たちが自国の素晴らしいところを語っている目の輝きを見て、素敵だなと感じると同時に、自分が日本のことをまるで知らないのが恥ずかしくもあったんです。いつか外国語が堪能になったとき、日本の魅力を海外の人にしっかり伝えられたらと思っていたので、それを学べる機会でもある、本当に魅力的な企画だと思いました。
三浦春馬なんとなくは思っていました。役者の仕事をしていて、日本各地は回れても、全ての都道府県に行く機会はなかなかないだろうなと感じていたので、そんな素晴らしい企画があれば是非!と。もし子どもができたとき「パパは47都道府県に行ったことがあるんだよ」って自慢できますしね(笑)。
4年かけた旅のなかで、心を揺さぶられた「人」「技」「食」
三浦春馬広島県で「ヒロシマを語り継ぐ教師の会」の梶矢文昭さんにお話を聞かせていただいたときのことはすごく鮮明に覚えています。以前『永遠の0』という映画に出演したとき(2013年)、第2次世界大戦を経験された方にお話を聞いたことがあったのですが、被爆した方に直接お話を聞くのは初めてでした。やはり書籍として読むのとは違って、感じることが多かったですね。
三浦春馬宮崎で取材させていただいた神楽面(かぐらめん/さまざまな儀式の際に舞われる“神楽”で使用されるお面)彫師の工藤省悟さんは、僕と世代が近いのですが、すごく印象に残っていますね。神楽面の創作過程を見学させていただいたとき、最初は「鬼の形相」のお面は、彫るのがとても難しいと思っていたんです。でも、実際お話を聞くと、天鈿女命(あめのうずめのみこと)というのっぺりとした女性のお面のほうが難しいとおっしゃっていて、驚きました。
僕ら役者も強い覚悟を持って、演じる仕事に取り組まなければいけないと改めて思いましたし、プロフェッショナルで一途でいることがいかに尊いかを感じられる取材でした。
三浦春馬いっぱいあるので、一つに絞るのは難しいなー(笑)。なんだろう……どこの県の特産物にもストロングポイントがあるので……。香川のうどんも良かったし、蛇口から天然の炭酸水が出てくる大分の白水鉱泉なんかも驚きましたね(笑)。
三浦春馬そうですね……山口県でいただいたフグは、当たり前のように出していただいたのですが、(フグは毒を持っており)人の命がかかっているので、絶対間違いを犯してはいけないという使命感で培われてきた技術があります。
それに加えて、僕が訪れたお店「栄ふく」さんには家族経営の温かさもあって。職人さんが親子三代で仕事場に立ち、店内も住んでいた家を改装したものなんです。ただ料理を提供するのではなく、来てくれるお客さんに楽しんでいただきたいというこだわりが、とても素敵でした。どの料理も素晴らしく、気の利いた言葉を紡ぎ出したいのですが「おいしい」しか出てこなかったですよ(笑)。
三浦春馬『日本製』で取材しながら、「自分の地元の誇れるところはどこだろう?」ということは常に意識していました。幼い頃からずっと身近だった土浦の花火大会はもちろんですが、ほかにも、陶芸家の板谷波山(いたや・はざん)さんという、ヨーロッパのアール・ヌーヴォーを日本の文化に落とし込もうと取り組んだ第一人者も茨城出身だということを知りました。
日本の伝統文化、その真髄は「発酵」?
三浦春馬自分のモチベーションや行動力を保つには“燃料”が必要で、その燃料をどのように作っていくかというと、人の話を聞くことがとても大きいと思うんです。製品やサービスのストーリー・性質を掘り下げて聞くことが、自分のモチベーションに関わっていくのだなと痛感させられる時間でした。
また、人の話を聞くって面白いことだなと改めて感じました。ある製品を手に取って持ち帰りたいなとか、着たいな、使いたいなと思う判断基準の一つは、そのものが出来上がるまでのストーリーがとても大切なんだなと、しみじみと思いましたね。ものに対する価値観も変化した4年間でした。
三浦春馬「発酵」という言葉が思い浮かびました。日本は島国なので、多くのことは大陸から学んだのかもしれませんが、限られた土地のなかで、一生懸命に試行錯誤して、自分たちの文化にしてきたんですよね。その工程は「発酵」という言葉に置き換えられるのかなと思いました。
三浦春馬文化もそうですが、“取材させていただいた人が培ってきたことからどうやって未来を見るか”ということが、『日本製』で学んだ大きなことです。とても貴重な時間でした。
「さらに上質なものを届ける」ときのために、今は心と身体を健やかに保つ
三浦春馬業界全体について僕が話をするのはおこがましいので、あくまで個人的に思っていることですが、自分にできることは、心も体も健やかに保つことだと思っています。僕が関わった舞台も、全公演を行うことはできませんでしたが、こうしたなかでどうやって皆とモチベーションを保てばいいのかや、周囲の人々に思いやりを持って接することなど、多くを学ぶことができました。
厳しい状況のなかでも、決して失ったものばかりではなかった。だからこそ、皆さんが生のエンターテインメントを楽しめる余裕が持てたとき、もっと上質で、誰もが「見に来てよかった」と思ってもらえるようなものを提供できるようなプレイヤーでいるために、できることをコツコツ積み重ねていきたいと思っています。
『日本製』(ワニブックス)発売中
https://www.wani.co.jp/special/miuraharuma/(外部サイト)
47都道府県、47のメイド・イン・ジャパン。三浦春馬が約4年間かけて訪れた47都道府県の「日本製」旅。
月刊誌『プラスアクト』の人気連載が書籍化、まだまだ知らないことばかりの日本文化・伝統・歴史・産業……など、未来へ向けて残し伝えたい<日本>を三浦春馬とともに見つめる一冊です。新たな撮り下ろし&ロングインタビューも掲載された、408ページの大ボリューム。
同書にドキュメンタリー写真集も付いた特装版『日本製+Documentary PHOTO BOOK 2019-2020』も発売中。
三浦春馬(みうら・はるま)
1990年4月5日生まれ、茨城県出身。1997年にNHK朝の連続テレビ小説『あぐり』でデビュー。映画『恋空』で『日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。その後、ドラマ『ブラッディ・マンデイ』、『ごくせん』等で一気に知名度をあげる。2017年にはNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』にも出演。映画『君に届け』、『永遠の0』、『進撃の巨人』、『銀魂2 掟は破るためにこそある』など多くの話題作に出演している。
この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「Fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。(4月28日掲載)
俳優・歌手・芸人・タレントらの趣味嗜好を深堀りしつつ、ファンの「好き」を応援。今後、さらに気になる人の「これまで」と「これから」をお届けしていきます。