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「水族館に行きたくなった」まるで近未来な“かざすAI図鑑”にネット賞賛、開発会社に聞く
エンタメ性は極力削ぎ落とすも、ゲームのようだとネットでは好評
「ダイビング中に使用できるARゴーグルが欲しいと思ったのがきっかけです。水中で生き物を見たときに名前が自動表示され、自動で記録されるゴーグルが欲しかったんです。「LINNE LENS」は実際にスマホを防水ケースに入れれば、ダイビング中でもそのまま使えます。ダイビング以外でも、釣りや水族館など、水生生物と触れ合う場面で、生き物や生態系の理解に役立ててもらえればと思い、水族館で無料体験キャンペーンを展開しました」
――どのくらいの精度で識別できるのでしょうか?
「条件や個体によりますが、現状では展示種を把握できている水族館・動物園における認識精度は静止画に対して平均91.9%です。日本国内の水族館・動物園の生き物の9割超、5,500種をカバーしております」
――新種を写した場合、どのような表示になるのでしょうか?
「既に学習済みの生き物と似ている場合は『〜科のなかま』と表示されるか、もっとも似ている生き物の名前がやや低い確率で表示されます」
――利用者の大人と子供の比率を教えてください。
「10代から60代まで幅広い世代で利用頂いております。両親のスマートフォンを子供が利用しているケースをよく見かけます。年齢を問わず直感的に使えるアプリとして評価いただいているのだと思います」
――利用者の具体的な声があれば教えてください。
「TwitterやInstagramなどの反応を見ると、『近未来』『凄すぎる』『めちゃめちゃ楽しい』という感動の声が多いです。利用前のユーザーからは『水族館・動物園に行きたくなる』という声もあります。釣りやダイビングなど、自然環境での利用ケースも増えているようです」
――ゲーム性、エンタメ性を意識して開発した部分はありますか?
「開発過程で学術性と娯楽性のバランスは争点でした。『かざす、わかる、生き物図鑑』をコンセプトとして、ゲーム性・エンタメ性は極力削ぎ落とし、かざすだけのシンプルな操作性・すぐに見られるリアルタイム性・自分で作っていくオリジナリティという3つの体験に絞り込みました」
――ゲーム性を削ぎ落としたとのことですが、ネットでは「ゲームのように楽しめる」という声もありますが。
「“高速で動く生き物をリアルタイムに複数同時に識別する”という機能が、シューティングゲームのような楽しさとして受け入れられているのだと思います」
――「ポケモンGO」「妖怪ウォッチ」のように、集めるところも「LINNE LENS」の醍醐味だと思いますが。
「コレクション性という意味では、生き物同士の関係性がわかる分類ツリー図に、簡単なコレクション機能があります。見つけた生き物は自分の写真が入り、見つけていない生き物はどこの施設で見られるかがわかるようになっております」
図鑑とアプリの“相互補完”でより良いサービスを提供したい
「実際に多くのユーザーが身近な人にかざして、ホモ・サピエンスとして表示されるのを楽しんで頂いております。『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)から引用した『史上最も危険な種』というフレーズも受けたようです」
――一方、本の図鑑を観ながら、実際の生物を特定するということも重要なことだとは思いますが、そこに対して何かお考えはございますでしょうか?
「出版物には出版物の、アプリにはアプリの良さがあり、相互に補完できるものと考えております。出版物の信頼性、一覧性、偶発性と、デジタルの検索性、携帯性、拡張性が組み合わさると、より良いサービス、図鑑になるのではないかと思っております」
――「LINNE LENS」というアプリの今後の展開、展望をお聞かせください。
「学名のついている動植物は世界で188万種、日本で5.6万種です。LINNE LENSの現状での適用範囲は5,780種に過ぎないので、引き続き認識対象、精度を改善するとともに、野鳥、昆虫、植物などにも対応範囲を順次広げていく予定です。同時に、海と陸で急速に失われる生物多様性の現状を正確に把握するという地球規模の課題に対しても、LINNE LENSのAI技術を有効活用できると考えています」