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『おげんさんといっしょ』、“お茶の間のテレビ”復権へ起爆剤となりうるか?
メジャーとサブカルの融合、星野源の守備範囲の広さが光る
コーナーでは、星野憧れのマイケル・ジャクソンの徹底解剖で伝説の名シーンの数々が紹介されたほか、視聴者から寄せられたくしゃみ動画をひたすら見るといったコアな企画、また飯テロ写真が紹介される、SNSでのツッコミ甲斐がある企画も。星野初の冠番組ということもあって、星野の好きなものや彼の魅力がふんだんにつまった構成で、Twitterでトレンド入り。公式アカウントは47回しかつぶやいてないにもかかわらず、フォロワー数は13万4千超を誇っている(18日現在)。
「これは星野源さんでなければ成り立たなかった番組であり現象」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「参加したバンドメンバーは星野さんでなければ集められなかった本格派。マイケル・ジャクソンの名シーン紹介にしても、ライブでマイケルがステージに登場し、約2分間微動だにしなかったのに失神するファンが続出したシーンという選択。くしゃみ動画は“人のくしゃみは十人十色で面白い”と考える星野さんのアイデアで、一種の性癖といえるほどマニアック。『逃げるは恥だが役に立つ』出演と主題歌『恋』のヒットで乗りに乗り、そのメジャー感と、サブカル好きにも支持される彼の“全方位キャラクター”故の成功と言えます」(同氏)
古き良き生放送を凝縮 “生演奏”“生コント”のハラハラドキドキ感
そんなセットで行われた生トークは、“超”がつくほどユルい。オープニングで星野が、いきなり設定を忘れて高畑に「充希ちゃん」と話しかけたほか、タイトルコールがいつになってもなく、藤井がたまらず「怖すぎるわよ!」と絶叫する場面も。
「生放送の何かハプニングが起きるのではというハラハラドキドキが“テレビの面白さである”という意識は昔から視聴者にあります。生放送のハプニングと言えば『8時だョ!全員集合』の停電事件が有名ですが、ほかにも89年『ヒットスタジオR&N』(フジテレビ系)のFM東京事件。故・忌野清志郎さん率いるタイマーズのメドレーが放送された際、清志郎さんはご自身作詞の歌が放送禁止にされたことや、RCサクセションの反原発ソングが発売禁止になったことについて東京FMさんに抗議。“腐ったラジオ”“政治家の手先”とさんざんコキ下ろしたあげく、放送禁止用語を絶叫しました」
ここ最近でも、まさかの“号泣県議”会見や、NHK山形放送局のお天気キャスターが言葉に詰まった末、番組中に泣き出してしまうなどが話題に。つまり生放送はSNSとの親和性も高く、今の時代にも合っている。「また“生演奏”はそもそも音楽番組ではベターな手段で、生放送の緊張感とテンションで、ミュージシャンが自身のライブさながらのアドリブを見せるSP回になることもある。これはカラオケ演奏ではありえないこと。そんな生コント、生トーク、生演奏のいいとこ取りをしたのが『おげんさん〜』の第1弾でした」(衣輪氏)
『おげんさん〜』視聴スタイル、SNS実況と茶の間テレビの両軸に?
「生放送バラエティは、現在はその経験があるスタッフが少なく、作るのが困難な時代に。また生演奏がある生放送だと、リハーサルがあるためにミュージシャンをその日一日、長時間押さえなくてはならず、スケジュールを取るのすら難しい。ですがNHKは『NHK歌謡コンサート』『うたコン』などの生放送音楽番組で培ったノウハウ、そしてお茶の間で楽しませる制作陣のノウハウが受け継がれています。その伝統の下で作られた『おげんさん〜』がゴールデンで放送されたなら、やり方によっては、家族で観る昔ながらの視聴スタイルの“現代版プロトタイプ”になる可能性も」(同氏)
マニアックな構成だが、今の視聴者は知識もあり、目も肥えている。レベルの高い視聴者に向けても作られ、それでいて現代のネット社会やお茶の間との親和性も高いパッケージ感の『おげんさん〜』。第2弾はさらにマニアックに走るのか、テレビの未来を感じさせる内容になるのか。テレビの可能性を占う意味でも放送が楽しみだ。
(文/中野ナガ)