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かつてはメガヒット連発も…“テレビ発”でヒット曲が生まれなくなったワケ
子ども向け番組からバラエティまで ヒット曲を生んだ様々な番組
これらは子ども向け番組発のヒット曲だが、1990年代後半になって流れが変わってくる。1995年、音楽番組『HEY! HEY! HEY! MUSIC CHAMP』(フジテレビ系)内で、ゲストで登場した小室哲哉にダウンタウンの浜田雅功が、「僕にヒット曲プロデュースしてください」と言ったことをきっかけに発売された『WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント』(H Jungle with t)が、200万枚を超える大ヒットを記録。すると、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日本テレビ系)から派生した音楽ユニット・ポケットビスケッツのCDもヒットし、それに対抗する形のBLACK BISCUITSもCDデビューするという、番組内を巻き込んだ“企画”に発展。以後、その流れはスタンダード化していくのである。
番組の飽きさせない“遊び心”がヒット曲誕生へと発展
これらのヒットの背景には、新人タレントの悪戦苦闘や成長過程をうまく演出し、視聴者を飽きさせない番組作りができる制作スタッフや所属事務所、そして企画段階からCDデビューへの流れを戦略的に組んでいたレコード会社側とのウィンウィンな関係があったと思われる。しかし、2005年前後からデジタル化が急速に進み、CDの販売数も右肩下がりになると、番組発のヒット曲も誕生しにくくなっていく。
趣味嗜好の分散、視聴者層の高齢化…厳しい現状を打開する新たなヒット曲誕生は?
一方、テレビ側としても視聴率の低下、制作費削減などの事情もあり、バラエティ番組でもコストのかかるコント番組が減少すると同時に、人気キャラのCDデビューという流れも減少傾向に。再現フィルムを観ながら、MCを含むレギュラー陣+毎週変わるゲストがひな壇形式でトークを回す……という形式が主流になり、かつてのコント番組を引っ張っていた強烈な破天荒キャラなどは絶滅寸前だ。もはや『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)発の矢島美容室(2008年)に代表されるような、大物芸人の“お遊び”的なノリでCDデビューという流れは、“古きよき時代”的な昔話になりつつあるのである。
以前は子どもたちをターゲットにしていたバラエティ番組も、最近は中高年層に狙いを定めており、かつてロンドンブーツ1号2号の田村淳が子どもたちのために作ったキャラクター“もずくん”など、子ども向け楽曲のヒットが出る余地もなくなっている。インターネットやSNSの爆発的な普及により、テレビ番組のコンテンツのあり方や内容に急激に変化を求められている影響なのだろうが、ほんの10年ほど前までは、その年を象徴するようなヒット曲を生み出していたこともあるだけに、再び番組発の楽曲コンテンツの誕生を願ってやまない。