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“キレ芸”の系譜を受け継ぐバイきんぐ・小峠英二
小峠のキレ芸“味”は、人柄の良さや気の小ささが見えるところ
では、小峠のキレ芸はどういったものか。たとえば炎天下に、坂口杏里との破局をレポーターに突っ込まれると、しょっぱなから「とにかく頭が暑いんだよ!」とキレ、“ハゲモンスター”などの自虐ネタをまぜた挙句、最後はお決まりの「なんて日だ!」で締めるというもの。ドッキリ企画に見事に引っかかり、最後にやはり「なんて日だ!」で締めつつも、微妙に人柄の良さ、気遣い、気の小ささをちょこちょこと出してくるのが、小峠のキレ芸の“味”だ。もともと、お笑いの実力としてもバイきんぐは『キングオブコント』(TBS系)の2012年の優勝者で、歴代最高得点をはじき出している。小峠の「なんて日だ!」もこのときのネタ。今年の6月に『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)の「第2回キレ芸No.1決定戦」オーディションに出場したあたりから、急速に小峠のキレ芸の認知度も上がったようだ。
ちなみにキレ芸は最近、市民権を得たように思われるが、実はカンニング竹山や上島竜兵以前にも存在していた。古くは故・横山やすしさんのブチ切れ芸もそうだし、ダウンタウンの浜田雅功の激怒ネタもそうだ。浜田にいたっては『ごっつええ感じ』(フジテレビ系)や『ガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)などの冠番組での“ブチ切れドッキリ”が定番の人気企画で、ココリコの田中直樹や今田耕司、篠原涼子というレギュラー陣が本気で泣くほどだったのだ。ただしこれは観ている者を本当に怖がらせ、当時は視聴者からの苦情が殺到したという。現在では、この手のキレ芸を超えた“ガチキレ芸”は放送倫理的によろしくないのか、ほぼ見られなくなった。
視聴者側も安心して笑える現在の“キレ芸”は、新しいお笑いスタンダード
“キレ芸ブーム”も、かつての“本当に怖い”マジギレ芸が許されなくなり、今という時代が生んだどこか“フェイク”っぽい、新しいお笑いの形と言えるかもしれない。視聴者側も自分が脅かされるような“本気度”は芸人には求めていないし、キレ気味の芸を演じる芸人もキャリアを積むごとに不自然になっていくので、“キレ芸”を徐々に抑えていく。となると、今後も“キレ”る対象のネタのバリエーションを広げていきながら、新しい“キレ芸芸人”たちは、まだまだ誕生してくる余地があるということが言えるかもしれない。
現在では、キレ芸の第一人者である竹山のお笑い界での地位も上がり、かつてほどキレ芸を披露しなくなっているし、披露しても、お約束的に一瞬である。そんな竹山の“後継者”を狙って、小峠や児島が台頭してきたといった図式だろう。そして、スキンヘッドの強面ふうで、声も大きくハリもあるが、どこか小市民的な親しみやすさを醸し出している小峠が、一歩先んじている状況だ。果たして、小峠は名実ともに竹山の“後任”に納まる、あるいは超えることができるのかは、小峠の“キレ”るネタのバリエーションが増えることで、自然と道も開けてくるのだろう。
(文:五目舎)