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“番組の顔”はいらない? 大物司会者が台頭しないバラエティ番組の現状

 最近、バラエティ番組のいわゆる“大物”、“名物”司会者を見かけることが少なくなったように思う。現在、個人名が入った冠番組をいくつも持ち、強いキャラクター性で番組の色を染めてしまうほどの大物司会者と言えば、明石家さんまくらいだろうか。大物の引退や番組終了などが続いたとはいえ、名物司会者はなぜ台頭しなくなってしまったのだろうか?

視聴率をけん引していた名司会者たち

  • 大物司会者が減少傾向にあるなか、唯一、強烈な個性で番組の“顔”となっている明石家さんま

    大物司会者が減少傾向にあるなか、唯一、強烈な個性で番組の“顔”となっている明石家さんま

 かつて昭和を代表する名物司会者に、大橋巨泉がいた。「ガハハハ!」と豪快に笑い飛ばし、クセのある強い個性を前面に出して、なんだかよくわからない“大物感”に「このエラソーな人は、いったい何者なんだろう?」と疑問に思っていた世代もいるはずだ。とはいえ、その押しの強さでいくつもの高視聴率番組を取りしきっていたのも事実だ。一方で、タモリは司会者としてはまったくクセがないと言ってもいい。大物感や、ときおり見せる“毒”の部分こそあったかもしれないが、基本的にでしゃばらず、いつもマイペースで、周囲を活かすのもうまい。脱力系というのか、その司会ぶりには常にゆる〜い雰囲気が漂っていた。そんなノリで31年6ヶ月にわたり、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の司会者を務めあげたのだから、安定感でいえば歴代No.1といってもいいだろう。

 しかし、番組制作側にしてみれば、ひとりの司会者の色に頼り過ぎるのはリスキーでもある。司会者の“クセ”が強すぎれば、一部の視聴者から反感を買うこともあるだろう。視聴率がよければ問題ないが、司会者がスキャンダルでも起こそうものなら、「それ見たことか」と世論はいっせいにバッシングに走る。しかし番組の編成上、簡単に番組を中止するわけにもいかない。となれば、最初からあまりクセがなく、安心感、安定感のある司会者を選ぶようになる、ということもあるかもしれない。

 現在、人気がある司会者といえば、たしかにそのような“安定感のある”タレントが多いようだ。ORICON STYLEが今年初めに調査した『好きな司会者ランキング』では、1位こそ明石家さんまだったが、2位にはくりぃむしちゅーの上田晋也、3位に有吉弘行、4位に安住紳一郎(TBSアナウンサー)、5位に中居正広と、安定感に定評がある人物が上位に名を連ねている。彼らの共通点として、「頭の回転が早い」「ひな壇芸人などまわりの人間を活かす」「多少の毒が吐ける」などがあげられる。

時代に合わせてバラエティ番組の作り方が変化

 また、お笑い芸人でありながら司会者としても多くのレギュラー番組を担当する今田耕司や東野幸治などは、島田紳助の衣鉢を継ぐ活躍ぶりだし、異色なところでは、もはや土曜日の昼の顔といってもよい、『王様のブランチ』(TBS系)のイケメン俳優・谷原章介。俳優業との兼業でありながら、物腰のよさと、再婚して6人の子持ちという家庭的な側面も“安定感”にひと役買っているだろう。彼らの仕切り能力や調整能力、瞬間の適応能力の高さこそが、視聴者側・番組制作側双方から求められる司会者の要素であることはまちがいない。

 つまり、いまの視聴者はバラエティ番組の司会者に対して、強烈な個性やカリスマを求めなくなってきているようだ。司会者本人の突出した個性より、出演者それぞれが持つ独自の“面白さ”や“味”をちゃんと引き出してくれような、そんなリーダー役を司会者に求めているのかもしれない。番組制作側にしても、出演者たちの“連携プレー”や“協調性”に重点をおき、司会者には優れた“進行役”に徹してもらうことで、もはや番組の“顔”としての司会者を必要としなくなってきた感がある。大物司会者や名物司会者が放つ強烈な個性はよくないとか、すたれたとかということではなく、時代とともに、バラエティ番組の作り方自体が変わってきたということだ。

 昭和・平成を股にかけた大物司会者のひとり、愛川欽也さんの訃報に接するいま、時代の移り変わりに思いを馳せる方も多いだろう。バラエティ番組に限らず、番組全般の作り方・内容も、時代の移り変わりとともに常に変化している。時代の映し鏡としてのテレビが存在しうる限り、5年後、10年後にはまた大物司会者が台頭する時代がくることだって十分あり得るのだ。

(文/五目舎)

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