2015-09-28

老舗から珍しい試みまで 日本の“おもてなし”事情に注目!

老舗から珍しい試みまで 日本の“おもてなし”事情に注目!

東京五輪開催決定と共に、改めてフィーチャーされた日本の「おもてなし」文化。最近では、日本人の中でもその心が見直され、ますます接遇マナーへの関心が高まっている。なかでも、たびたび話題となるのが、一般社会以上に高いレベルを求められる飲食業界や医療業界、ホテル業界のおもてなし。果たして、各業界ではどんな接遇を心がけているのか。ORICON STYLE編集部では、老舗から珍しい試みを行っているところまで、様々にスポットを当て、取材を敢行した。 医療機関で実践される試みの“スマイルベンチマーク”とは
院長:正木健太郎氏
「笑顔での接客は、自主的に対応することが重要だと考えています。なので、“スマイルベンチマーク”のバッチを着けるかは、スタッフ自身で決めています」います。」とスタッフは言う

 まずORICON STYLE編集部が注目したのが、医療機関。今回は、「スマイルベンチマーク」という言葉を用い、患者接遇に力を入れている「銀座総合美容クリニック」を訪ねた。2008年以来東京・新橋で診療を行う同クリニックは、AGA(男性型脱毛症)・薄毛治療専門。一般的な病気以上とも言えるほどデリケートな分野だけに、より患者さんのことを考えた対応が求められるが、「常に患者さん目線でのクリニック運営。患者満足度No.1のAGAクリニックを目指す」という理念を掲げている。

 では、そんななかで「スマイルベンチマーク」という言葉にはどんな意図があるのか。同クリニックの正木健太郎院長は「大きな不安や悩みを抱えた患者さんが来てくださるのだから、余計なハードルがなくクリニックに入ってもらいたいです。その際、患者さんに『ああ、ここに来て良かったな』と思ってもらえるかどうかは、まず扉が開いた瞬間に目に留まった人の笑顔にかかっています」と説明する。

 でも、笑顔での対応なら、どんな業界でも行っていることではないか? そんな疑問に出した答えが、「スマイルベンチマーク」だった。「笑顔でやっていると言っても、できているかどうかは相手の感じ方次第です。だから、笑顔に“指標”をつくろうと考えました」(正木院長)。指標としたのは、笑顔がとても印象的な、ある有名スポーツ選手だったという。「誰が見てもいい笑顔なので、あの選手を思い浮かべて、それを“笑顔”としましょう、と決めました。また、クリニックとしてこの言葉を大切にするために、『スマイルベンチマーク』の商標を2014年に申請し、その後取得しました」(正木院長)。さらにこの取り組みを行うにあたってスタッフはスマイルベンチマークのための黄色いバッジも作った。何かのキャンペーンのように、みんなでただつけるのではない。このバッジをつける限り、笑顔に対しプライドを持ち、常にちゃんとした笑顔で仕事をしようという環境をつくっている。

 ただ、同クリニックのウェブサイトを見ても、「スマイルベンチマーク」の表記はない。その理由は、「商標は、あくまでスタッフへの意識づけ」(正木院長)であり、それが引いては、心からの患者さんへの対応につながるという。「決して思いつきでやっているわけではなく、ずっとやっていくこと、大事にしたいと思っているものだと、スタッフに理解してもらいたい。そして、それを理解して、それをやりたいという人に働いてもらえれば、患者様の満足につながると思っています」。

120周年の歴史ある老舗ならではのこだわり
森山照代ゼネラルマネージャー


 続いて編集部が向かったのが、東京・浅草の「浅草今半」。創業は明治28年(1895年)。牛めし店として始まり、今年でちょうど120周年を迎えた、すき焼・しゃぶしゃぶの名店だ。これだけ長きにわたりお店を続けられたのは、味とおもてなしのどちらに大きな理由があるのか。国際通り本店の接客を取り仕切る、サービス部の森山照代ゼネラルマネージャーは、「それはもちろん味だと思いますよ」と笑うが、森山ゼネラルマネージャーの言葉を聞いていると、やはり両方揃っていなければ同店が老舗になることはなかったと、誰もが感じるだろう。「お越しになったお客様を見ていると、すごく期待されていることを感じます。『来てみたかった』『やっと来ることができた』という期待です。そうするとこちらも、その期待を超える満足を感じていただけるようにしなければならないと感じます。浅草に何軒もすき焼店があるなか、私どもをお選びいただきましてありがとうございます、という気持ちを込めたお迎えを重要視して、日々やっております」。

 そのための方法のひとつが、「お客様をよく見ること」だと森山ゼネラルマネージャーは言う。「お客様が今何をして欲しいのかを心で見なさいと、従業員に厳しく言っています。凝視してはいけませんが、本当に目を離さないでよく見ていると、お客様のご要望がわかります」。

 そしてもうひとつが、やはり笑顔だ。「明るいさわやかな笑顔をしてくださいといっても、それだけではお客様に伝わりません。ようこそいらっしゃいませ、ありがとうございます、おいしいですか、大丈夫ですか、という心からの気持ちがあって初めて、素敵な笑顔になります」。そのために森山マネージャーが気を配っているのが、職場の雰囲気なのだという。「自分自身が健康で、仲間とも良好な関係が築けて、忙しいけれど楽しいねという職場でなければ、なかなかお客様に響く笑顔はできないと思っています。だから、みんなが楽しく仕事をできているかということを見ています」。

人との繋がり――お寺ならではの“おもてなし”
僧侶・店長 木原祐健


 次にご紹介するのが、「神谷町オープンテラス」。見た目はカフェのようにも思うだろうが、そうではない。東京・虎ノ門にある梅上山光明寺という、1202年創建(当時の場所は霞が関)のお寺だ。本堂前にあるテラスにテーブルとイスが並び、誰でも入ってくつろぐことができる。2005年にオープンし、今年で10周年。同寺の僧侶で店長の木原祐健さんは、「お寺や仏教を身近に思っていただけたらと、始めました」と経緯を振り返る。 「お寺に縁ある方はもちろん、ご近隣にお勤めの方にも、お寺の良さや雰囲気を味わっていただければと思っております。お寺で過ごし、手を合わせる時間があるだけでも気持ちが穏やかに変わることもあるのかなと思っております」。実際、利用者にはサラリーマンやOLが多く、外国人も少なくないそうで「忙しく過ごされる日常の中で、少しでもやすらぎを感じていただけるとうれしいです」。

 このテラスでしか堪能できないおもてなしや交流もある。「『お寺でお茶やお菓子が食べられたら』というお声をもとに、温かいお茶や手作りのお菓子等もご用意(要メール予約)させていただくようになりました。また、『お坊さんにお話を聞いてほしい』というご要望から、木曜日に傾聴の時間を設けるようになりました。震災後、このテラスでも今後をご不安に思うお声 が多くなり、じっくりとお話を聴かせていただく場が必要なのかなと思うようになりました」。人との繋がりを機に、お寺ならではの “おもてなし”が生まれている。

進化したカプセルホテルでの“おもてなし”の心とは
森山照代ゼネラルマネージャー


 最後に取材に赴いたのが、「ファーストキャビン」。2009年に開業した「コンパクト&ラグジュアリー」をコンセプトに、飛行機のファーストクラスをイメージしたコンパクトホテルである。宿泊価格もビジネスホテルとカプセルホテルの中間。「カプセルホテルと同じカテゴリーになり、日本の法律に抵触しないよう、部屋には鍵はかけられませんし、トイレやお風呂などの水回りは共同となります。でも、『思っていたよりもずっと良かった』『想像より広かった』など、プラスの面での評価をいただいています」とは、事業本部アシスタントマネージャーの木村かおりさん。

 ただこの人気は、リーズナブルな宿泊価格と部屋のレベルが絶妙に合った結果かと思いきや、「やはり、人が大きなウェイトを占めているのかなと感じています」と木村さん。「サービスは、ファーストクラス以上のものを提供しようというのがわれわれの理念で、スタッフには、視野を広げることを常に意識するように言っています。たとえばチェックインが込み合ったりしたときには、チェックイン中の目の前のお客様だけでなく、並んでいるお客様にも目を配って、『少々お待ちください』『お待たせしております』と一声かけるなどといったことです。また、現場のスタッフはお客様の顔と名前を覚えるのが速く、『また来てくださったんですね』と声をおかけたりしていることもあってか、リピーターのお客様が多いです。ひとつの施設の50%以上がリピーターの方ということもあります」。

 さらにスタッフの思いがよく表れた例を、木村さんが教えてくれた。「スタッフがすすめる近隣のお店をマップに記入し、ガイドブックにはない情報を出しています。また、例えば秋葉原の施設ですと、サブカルチャーやアニメなどに詳しくなったスタッフもいます。当初は知らなかったのに、お客様とお話がしたいからということで勉強したようで、同じようなスタッフは多いですね」。

日本が誇る“おもてなし”文化とは…… 大阪学院大学経営学部 森重喜三雄教授
大阪学院大学経営学部 森重喜三雄教授

 ここまで見てきた4者は、いずれも高いお客満足度を誇るが、その源泉は、やはり相手を慮る気持ちと、相手の願いに応えたいという思いだ。大阪学院大学経営学部でホスピタリティマネジメントを専門分野とする森重喜三雄教授の言葉が、それを裏付ける。

 「これまで成功を収めてきた企業は、お客様に夢や感動、そして幸福を提供してきた企業です。どんなに素晴らしい製品やサービスであっても、お客様に夢や感動を与えなければ、支持を得ることはできません。そして、満足していただき、感動していただくには、それぞれのお客様の思いを読み取ることが大事だと思います。サービス精神旺盛で、何でもかんでも勧めようとしたり、お客様の好みやペースを考えないで勧めたりするのではなく、お客様がしてほしいことを、してほしいタイミングで提供することだと思います。状況の変化を見守りながら弾力的に、かつ柔軟な姿勢で対応していかなければなりません」。

 そして最後にもうひとつ、森重教授は「おもてなし」の極意を付け加える。「お客様にとって想定内のことは、あくまでサービスでしかありません。お客様の期待をいい意味で裏切るような気遣いこそが、『おもてなし』なんです」。日本が誇るおもてなし文化。ぜひ、いろんな場所に出向き、その“心遣い”に触れる機会を体験してみてはいかがだろうか?

取材協力

銀座総合美容クリニック

銀座総合美容クリニック
最新の発毛・育毛治療を行うAGA(男性型脱毛症)・薄毛治療専門の医療機関。
【診療時間】
月、火、木、金、土 11時〜20時/日曜・祝日 11時〜19時 (完全予約制)
【休診日】水曜日
【住所】東京都港区新橋1-4-5 G10ビル9F 10F
【TEL】0120-972-335(フリーダイヤル)
【オフィシャルサイト】http://www.gincli.jp/

浅草今半

浅草今半
創業明治28年、牛肉佃煮の元祖、浅草今半は極上の黒毛和牛すき焼・しゃぶしゃぶの日本料理専門店。

国際通り本店
【営業時間】年中無休 11時30分〜21時30分(ラストオーダー 20時30分)
【TEL】03-3841-1114

東京駅グランルーフ店
【営業時間】年中無休 10時〜23時(ラストオーダー 22時)
【TEL】03-5220-2955
【オフィシャルサイト】http://www.asakusaimahan.co.jp/

神谷町オープンテラス

神谷町オープンテラス
東京・虎ノ門にある梅上山光明寺内で、予約に応じてオープンテラスにてお茶やコーヒー、お菓子が楽しめる。

【おもてなし 営業時間】水曜日、金曜日 11時〜14時
【お問い合わせ】kot@komyo.net
【オフィシャルサイト】http://www.komyo.net/kot/

ファーストキャビン

ファーストキャビン
飛行機のファーストクラスをイメージしたコンパクトホテル。東京は秋葉原、羽田空港ターミナル1、築地、大阪は御堂筋難波、京都は烏丸、福岡は博多と計6施設。

【お問い合わせ】info@first-cabin.jp
【オフィシャルサイト】http://first-cabin.jp/