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市川海老蔵『僕にとって映画というのはおもしろい』

歌舞伎界を背負う存在でありながら、映画やドラマ界での活躍もめざましい市川海老蔵の主演映画『喰女−クイメ−』が、いよいよ今週末から公開される。企画者として、製作から公開まで同作を牽引する海老蔵さんに、作品にかける想いと日本映画界の印象について聞いた。

先祖の精神を受け継ぎ この企画が始まった

――『一命』以来、三池崇史監督とは3年ぶりの再タッグになりますが、前作と大きく違うのは、企画・主演=市川海老蔵と堂々とクレジットされているところです。
海老蔵『東海道四谷怪談』は、七代目團十郎が得意としていた演目。行動力のあった七代目の時代に技術があれば、きっと映画を作っていたと思います。先祖の精神を受け継ぎ、多くの方に『四谷怪談』を知っていただきたいというところから、この企画が始まりました。とはいえ、これまで出演した全ての映画についても、企画の段階から参加しています(笑)。受け身ではなく、きちんと作品に関わりたいと思っているので。


――第39回トロント国際映画祭インターナショナルプレミアでの上映も決定した本作ですが、時代を超えて今もなお語り継がれる、ジャパニーズ・ホラーの元祖『東海道四谷怪談』のおもしろさとは何でしょうか?
海老蔵あまり認知されていませんが、人の機微を実におもしろく描いた作品です。今回の映画では、現代人が劇中劇で『四谷怪談』を演じる設定にしたことで、お岩さんと伊右衛門のとっつきにくい複雑な人間模様が、わかりやすくなったと思います。浩介くんはこういう人間世界を生きていて、美雪とはこんな因縁があって……そういう感じが(原作の世界観に)近いなと。

――伊右衛門同様、甘い言葉で女性を誘惑する浩介ですが、浩介の衣裳に、海老蔵さんが普段身につけている洋服を選んだ効果もあり、伊右衛門と浩介、さらには海老蔵さん自身のイメージもがあいまってコンヒューズした、独創的な世界が広がっていきますね。
海老蔵浩介と海老蔵をつなげていきたいという三池監督の思惑から、衣裳合わせのときに、当時僕が着ていた洋服を使うことにしたんです。今回も、監督の演出はすばらしかったです。柴咲(コウ)さんにしろ、(伊藤)英明くんにしろ、僕にしても、監督を信用しているからこそ、成立した作品という感じがします。

 この映画は異空間なんですよ。これまで見たことのないような、不思議な映画。ホラーといえばホラーだけど、時代劇の要素もあるし、恋愛ものでもある。女の怨念の話でもあり、悪い男の話でもある。こんな映画、僕はこれまで観たことがない。

映画を作る運気を持っているかどうか

――歌舞伎では「色悪」と呼ばれる極悪の色男・伊右衛門ですが、浩介が演じることで、危険と知りつつも(ヒロインの美雪が)惹かれてしまう、魅力的な人たらしに見えました。対するお岩さんも、男を殺すほどの狂気を感じさせつつも、純粋さゆえに追い詰められた美雪の、まっとうさがリアルに感じました。完成作をどうご覧になりましたか?
海老蔵そうだね、やっぱり柴咲さんが純粋な美雪にしたんじゃない? すごく良かったよね。美雪は、登場人物のなかではいちばん正当だけど、ちょっと怨念が強過ぎるかな(笑)。でも基本、女の子は美雪の味方だからね。この映画はズバリ、美雪スッキリ映画なんですよ。そして女子が(この映画を観て)スッキリする(笑)。暑い夏には、きっとこういう映画がいいんです。浩介くんなんて、女性からは理解の得られないタイプですから。有名になりたくて、とっぽい、イマドキのチャラい男子だから、男性でもなかなか味方はいないんだよね。今年の夏を十分に楽しんだ男なら、浩介の気持ちを堪能してもらえるかも知れない(笑)。

――では少し気が早いのですが、三池監督との三度目のタッグでは、ぜとも日本男児の心を鷲づかみにする『仮名手本忠臣蔵』をお願いしたいのですが!
海老蔵ハリウッドで『47RONIN』(2013年)をやられちゃった後では、もはや味気ないよ! 『忠臣蔵』の忠義の世界を、再び日本が意識し出したころに、映画を作る運気を自分が持っているかどうか? ってところかなあ(笑)。少なくとも今はそういうムードじゃないし、もっと先の話だろうね。

――それでは首を長くしてお待ちしています! ところでホームグラウンドの歌舞伎界にとどまらず、映画やドラマに精力的に出演する海老蔵さんにとって、映画界とはどんな場所ですか?
海老蔵歌舞伎役者として、映画など同時代の文化を反映していくスピリットは必要なもの。だからこそ、僕にとって映画というのはおもしろいんですよ。ただ、ハリウッド映画も含め映画業界全体のなかで日本映画を冷静に見たとき、一体どこに位置しているのだろうか? という疑問は正直あります。あまりビジネスになってしまうと、つまらなくなってしまうんじゃないのかって。まぁ映画のことは、よくわからないですけど(笑)。

 僕にとって良い映画のイメージというのは『いまを生きる』(1989年)や『ショーシャンクの空で』(1994年)とか。人間の大きさや自由を強く感じる映画が好きなんです。最近の作品では『きっと、うまくいく』(2009年)ってインド映画には本当に感動した。ちょっと長いんだけど、本気で作られているから、全然飽きない。『しあわせの隠れ場所』(2009年)も良かったなあ。昔は派手なビジュアルのアクション大作も観ていたけど、最近は地味でも心を揺さぶられる、考え抜かれた映画の方が観たくなりました。歳を取ったんだね(笑)。

――インド映画好きとは、一見意外なようでいて、伝統を守りつつ意欲的に挑戦し続ける海老蔵さんらしいエピソードですね。どんなきっかけで、インド映画に出会われたのですか?
海老蔵近所にあるレンタルショップに行っては、そこの店員さんに「君のいちばん好きな作品を教えて」って訊くの。彼らは仕事柄、たくさんの作品を観ているからね。イチオシの映画を教えてもらって、おもしろかったら次に会ったとき「良かったよ!」って感想を言い合ったりして。店員さんも日替わり、時間帯ごとに大勢いるから、いろいろな作品に出会えて新鮮だよ(笑)。彼らも海老蔵にオススメを訊かれたり、「おもしろかった」って言われたら、ちょっと楽しいんじゃない!?
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

喰女−クイメ−

 今作で市川海老蔵が演じるのは、舞台「真四谷怪談」の主役伊右衛門役に大抜擢された俳優・長谷川浩介役。柴咲コウは、浩介の恋人であり、舞台「真四谷怪談」でお岩役を演じるスター女優・後藤美雪役を演じている。市川海老蔵は、恋人がいながら共演者に手を出すことをきっかけに恐怖に陥れられていく浩介を熱演した。さらに、柴咲演じる美雪の元カレ役を伊藤英明、そして、中西美帆、マイコ、根岸李衣、勝野洋、古谷一行ら実力派が脇を固めている超豪華キャストだ。

監督:三池崇史
出演者:市川海老蔵 柴咲コウ 伊藤英明
【映画予告編】 【公式サイト】
2014年8月23日(土)全国公開
(C)2014「喰女−クイメ−」製作委員会

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