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エンタメビジネスの新しい可能性『ザ・ヒットパレード〜ショウと私を愛した夫〜』

良質な脚本とヒット曲の好バランスが観客を魅了

 さて、このようなヒット曲を散りばめたミュージカルは、近年国内外で盛んに公演され人気を博している、いわゆる「ジュークボックス・ミュージカル」あるいは「トリビュート(カタログ)・ミュージカル」などと呼ばれるミュージカル作品を想起させる。『マンマ・ミーア!』(アバ)や『ウィー・ウィル・ロック・ユー』(クイーン)、『ムーヴィン・アウト』(ビリー・ジョエル)、『アワ・ハウス』(マッドネス)などなど、人気アーティストのヒット曲をフィーチャーしたミュージカルだ。

 しかし、ジュークボックス・ミュージカルの中にはアーティストや楽曲の持つパワー、あるいはダンスなどの演出やパフォーマンスに頼りすぎ、肝心のドラマ(脚本)がそれほど練られていないがために、全体としていまひとつ心に響かないという作品も多いのが実状だ。結果的に、そのアーティストのコアなファンしか満足させられず、広く大成功に至っている作品はあまり多くない。

 そんななか、ミュージカル『ザ・ヒットパレード』は数多くの既製のヒット曲で魅了すると同時に、ドラマ性に富んだストーリーでも観客の心をつかむことに成功した作品だと言える。それは、純粋に夢を追い求めるすばらしさと、一組の夫婦の愛の物語という普遍的なテーマがしっかりと描かれているからだろう。もちろん、シンを演じた原田泰造のおおらかな笑顔とペーソス漂う横顔、ミサ役・戸田恵子のキュートでおきゃんなコメディエンヌぶりといった演者たちの魅力も重要なエッセンスとなっている。

 さらに、ポップスからロックやジャズ、演歌に至るまで、多種多様なジャンルの楽曲群が使われているのも、年齢や性別を問わず幅広い観客層に訴求できたポイントだろう。昭和を描いた作品だけに、壮年の観客が中心かと思いきや、RAG FAIRのファンと思われる若い世代も多かった。彼らの持ち味を存分に引き出したアレンジが、リアルタイムで楽曲を体験していない世代をも魅了していたようだ。観客の中に肩でリズムをとる人やフレーズを一緒に口ずさむ人も少なからずいたのが印象深い。

『ザ・ヒットパレード』がジュークボックス・ミュージカルにカテゴライズされるか否かはともかく、見せどころ(ドラマ)と聴かせどころ(音楽)がバランス良く紡ぎ上げられた、良質のオリジナルミュージカル作品と言えるのは間違いないだろう。すばらしい楽曲とドラマが融合すれば、コアなミュージカルファンあるいはアーティストや楽曲のファンだけではない観覧層も取り込めるエンターテインメント・コンテンツができあがることを同作品は証明した。

 ヒットソングという究極の「音楽コンテンツ」をどのように活用すれば良質なエンタメ・コンテンツが生まれるかという点で、『ザ・ヒットパレード』はエンタメビジネスの新しい可能性を示したと言えるだろう。(文/児玉澄子)

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