日本最後のアナログレコード製造工場

<その2>

「およげ!たいやきくん」がヒットして工場はてんやわんや

 CDがこの世に誕生したのは1982年。それまでは、音楽を聴くためのメディアといえば塩化ビニールで作られた黒い円盤、アナログレコードだった。家庭にある音楽再生装置はレコードプレーヤー、アナログ盤に細かく刻まれた音の溝を、レコード針によって再現するというもの。改めていうのもなんだが、82年以前は、それがあたりまえだったのである。

 それが82年のCDというデジタルメディアの登場で、徐々にアナログレコードの役割は減っていき、一般庶民の音楽との関わり方はCDを通したものに移り変わっていった。レコード針やレコードクリーナー、そしてレコードプレーヤーもほとんど姿を消すことになる。そして、今、日本でアナログレコードを製造しているところは、唯一、東洋化成(株)だけとなってしまった。




 しかし、ヒップホップやDJ文化の発展に伴ってアナログレコードのニーズはいまだ根強く残っているという。ORICON STYLEは、神奈川県横浜市鶴見区にある唯一アナログレコードを作り続ける東洋化成を訪ねた。



 最寄は、鶴見小野駅。無人の駅舎にSUICAの新しい機械がポツンと。元々は工場街の引込み線だったところに、日本で唯一のアナログ盤の生産現場はあった。


 東洋化成は1959年創立。「求められるものを、それ以上のカタチで、クオリティで」というテーマを掲げている。時代が移ろいつつも求める声があればそれに応えていくという。アナログレコードもそんなニーズに応える形で生産され続けているわけだ。

 ちなみに「日本で最後の〜」ということで訪ねたところ、正確には「アジアで唯一」ということがわかった。21世紀を迎えた今、東洋化成は、

「チャレンジャーでありながらクラフトマン」
「アナログにこだわりながらデジタルを追求する」

という2点にこだわりを持つ。
アジアで唯一のアナログレコード製造メーカーとしての誇りも伝わってくる。

 アナログレコードは、今、ヒップホップやDJからのニーズが高まっているが、一般リスナーからも、そのアナログならではの「音」の魅力が理由で、ファンは少なくないという。そんな声に応えるべく、人気アーティストは今でもアナログレコードをリリースするケースも少なくない。




よく見るとザ・クロマニヨンズの文字を確認できる。
甲本ヒロトと真島昌利が昨年の7月に結成したバンドで、
「新しい音」がアナログ盤に吹き込まれている。


 昔は、大ヒットが生まれると工場はてんてこ舞いだったという。スタッフによると「『およげ!たいやきくん』の時が一番大変だった」とのこと。それもそのはず、「およげ!たいやきくん」は、1975年12月25日に発売され異例のスマッシュヒット。累計で454.8万枚を記録し、未だこの記録は破られることなくオリコン歴代シングル1位を誇る。

 初回分が売り切れた後の追加生産では、異常なほどのバタバタだったと振り返る。もちろん当時は、ここの工場以外にもアナログ製造工場はたくさんあったわけだが、1枚のレコードを作るのに約18秒かかる時代。そのプレッシャーは相当なものだったようだ。

 


製造工程の様子など<その2へ続く>




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