さまざまなキャラクターの声を完璧に演じ分け、七色の声を持つと言われる声優・山寺宏一。そんな山寺が「怖くて、ネットの書き込みは絶対見ない」と言うのが、不朽の名作アニメ『宇宙戦艦ヤマト』（1974年）をリメイクした『宇宙戦艦ヤマト2199』（2012〜14年）、そして最新シリーズ『宇宙戦艦ヤマト2202　愛の戦士たち』（全七章）で担当する「デスラー」だ。

【写真】その他の写真を見る

　1974年のオリジナル版で「デスラー」を演じたのは、現在も俳優として活躍する伊武雅刀。「先輩から引き継いだキャラクターというのもありますが、『2202』は作品としての評判がすごく良い。第四章からデスラーが出てきて、“いいな”と思う人が減ったら絶対、俺のせいですよ。本当にそう思います」と弱気をのぞかせた。

　昨年2月から順次劇場上映されている『宇宙戦艦ヤマト2202　愛の戦士たち』は、今月27日より「第四章　天命篇」が全国29館で期間限定上映される。この第四章でデスラーが初登場。物語は新たな局面を迎える。

　デスラーは、かつて「大ガミラス帝星永世総統」の座にあった男。大小マゼラン星雲のあらゆる文明を侵略・支配し、帝国の版図を拡大し続けた。しかし、イスカンダル往還の旅を遂行する「宇宙戦艦ヤマト」と関わったことで政権を失い、「ガミラスとイスカンダルの大統合」という悲願も果たせず、座乗艦デウスーラでヤマトに最後の決戦を挑むも敗北。その命は亜空間に散った…。だが、デスラーは生きていた。ガトランティスの恩寵を受け、再びヤマトの前に立ちはだかる。彼の胸に去来するもの、その瞳に映るものは果たして何か？

　『2199』の最後のアフレコから、約4年の月日が経っていた。「久々のアフレコは緊張しました。でもやっと出ることができてうれしかったです。しかも、今回、あのせりふ、あのシチュエーションを与えてもらって、キャラクターデザインもかっこよくて、作品全体も面白くて、これで評判悪かったら、俺のせい。そういう覚悟を持ってアフレコに挑みました」。

　今回、「引き継いだキャラクター」というプレッシャーの上に輪をかけて山寺の心をざわつかせたのが、クラウス・キーマン役の神谷浩史と、テレサ役の神田沙也加だった。

　キーマンは、『宇宙戦艦ヤマト2202』のモチーフとした映画『さらば宇宙戦艦ヤマト　愛の戦士たち』（1978年）には登場しない、『2202』のオリジナルキャラクター。第一章から登場し、古代進たちとともにヤマトに乗艦している。普段は無口だが、たまに口を開くと歯に衣着せぬ毒を吐き、パイロットとしての技量は超一流。「それで神谷浩史くんの声でしょう！　クーッとたまらない気持ちになりましたよ。すごいんでしょう？　キーマン人気。十分、嫉妬していますね（笑）。その彼よりもさらにカリスマ性のある存在としてデスラーは登場しなければならなかったので、ますますプレッシャーですよね。シナリオはそうなっているので、後は声優の演技が追いつていれば…という話になるわけで。ネットの書き込みは絶対見たくない（笑）」。

　「第四章　天命篇」では、今までベールに包まれていたテレサの存在感も増してくる。神田の母親で歌手の松田聖子の大ファンだという山寺。「僕が1961年生まれで、聖子さんは1962年3月の早生まれだから学年も一緒なんです」というささやかな共通点さえ愛しいほど。「沙也加ちゃんのお芝居も大好き。先にスタジオ入りしていた妻（山本玲役の田中理恵）から沙也加ちゃんが来ているという連絡をもらった途端、頭の中は『アナ雪』の歌でいっぱいですよ。しかも、スタジオでその姿を見たら、もう、あたふたしちゃって（笑）。これからデスラーをかっこよく演じないといけないのに浮足立っちゃって。いかん、いかん、気を静めなきゃ、というのもありましたね（笑）」。

　アフレコの裏話を面白く伝えてくれる。「七色の声」だけでなく、地声のしゃべりも超一流だ。『おはスタ』（テレビ東京）のメイン司会を18年半も務めた底力がこれか、と感動していると、「山ちゃんを見ていると楽しい、そう思われたいだけなんですよ」と謙遜する。

　『おはスタ』といえば、卒業してもうすぐ2年になるが、「生活が一変しました。番組卒業当時、声優生活30年くらいだったんですが、そのうちの20年ちかくも『おはスタ』をやっていたことを考えると、自分の声優生活は『おはスタ』とともにあったといっても過言ではないですね。ずっと午前4時台に起きる生活でした。卒業後も早寝早起きしようと思っていたんですが、終わったその日から夜更かし生活が2年近く続いています（笑）」という余談も聞かせてくれた。

★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」