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アカデミー賞助演女優賞、19歳・杉咲花が体感した演技への向き合い方

 『Cook Do』のCMで、回鍋肉を食べる少女として注目を集めた杉咲花。そんな彼女は、女優として着々と成長し、今年『第40回 日本アカデミー賞』最優秀助演女優賞を受賞した。最新作『無限の住人』(4月29日公開)でも、ヒロインとして存在感を放つ彼女に、これまでの歩み、演じることへの思いを聞いた。

木村拓哉と競演、『無限の住人』で「壮絶な疑似体験」

 身長153センチの小さな体。芝居とは違い、インタビューで発せられる声もやや小さめだ。しかし、美しい言葉づかいで丁寧に思いを語る姿には、ひたむきさと誠実さ、そしてなにより女優という仕事へのゆるぎない“愛”と“芯”が感じられる。

 今、杉咲花は大注目の若手女優だ。映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)で、余命2ヶ月の宣告を受けた母との絆を再生する長女を演じ、『第40回 日本アカデミー賞』最優秀助演女優賞ほか、数々の賞を総ナメにした。続く映画『無限の住人』では、木村拓哉と堂々の共演。演じるのは、無限の命を与えられた男・万次に親の敵討ちを依頼した少女・凜だ。

 敵味方が入り乱れる壮絶なバトルにあって、敵への憎しみを放ちながらも同時に儚さや悲しみ、万次への強い信頼や淡い思慕を身にまとう存在感は絶品。さながら、殺伐とした荒野に咲く一輪の花のようだ。万次を演じた木村拓哉は、「僕の役へのアプローチは、杉咲花ちゃん演じる凜を100%感じて答えを出していった」と言う。つまり、ふたりの“魂の呼応”が実現したからこそのリアルな万次であり、凜であるということだろう。
 「撮影中は演じているという感覚がなくて、杉咲花なのか凜なのか、わからなくなっていました。凜が苦しいときは私も苦しいし、凜が悲しいときは私も悲しかった。壮絶な疑似体験をした感覚です。木村さんはいつも万次さんとして存在してくださったし、凜が万次さんを思うように、木村さんと一緒に居られない時間はちょっと心細いというか、寂しく感じる瞬間がありました」

◆『とと姉ちゃん』で憧れの志田未来と共演、「本当に幸せな時間」

 その存在が多くの人々の話題に上り始めたのは、2011年にスタートした味の素『Cook Do』のCM。回鍋肉をパクパクと食べ、それでいて上品な食べっぷりが日本国中の食欲をそそり、「この少女は、誰?」という声がわき上がった。当時、14歳。以来、このCMシリーズは好評を得て、現在も続いているのは知っての通り。

 女優を志したきっかけは、ドラマが大好きだったから。そして、とくにお気に入りのドラマのすべてに出演していた志田未来に憧れて、現在の事務所のオーディションを受けたという。そんな憧れの人との共演が叶ったのは、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』だ。杉咲は、「同じシーンのときは感動しました。ずっと憧れていた方と…と思うと、震えるというか、本当に幸せな時間でした」と当時を振り返る。

◆難しいスイッチの切り替え、「自分自身、すごく苦しいことも」

 ちなみに、子役として多数の映画やドラマに出演していた彼女が、“自分のやりかた”を意識したのが、湊かなえのミステリー小説をドラマ化した『夜行観覧車』(TBS系 2013年)。家庭内暴力に荒れる娘に扮した姿は、演技とは思えないほど恐ろしく、痛ましく、観る者の心に突き刺さった。
 「『夜行観覧車』の時に、疑似体験というか、演じている感覚を忘れるぐらいの体験をしました。でも当時は、あんなに大きなものを抱える役というのが初めてだったので、どういうことなのかよくわからなくて」

 やがて、いくつかの作品への出演を経て、“役を本気で生きる”というメソッドを自覚したのが、2015年の映画『トイレのピエタ』。余命宣告された青年・園田宏と、偶然に出会った少女・真衣の心の触れ合いを描いている。
 「真衣を演じていたときは、本当に人の死に直面しているようで怖かったです。家に帰ってもずっと宏のことを考えていて、うまく家族と話もできなくて。母からも『どういう風に接していいかわからない』と言われるほど、困らせてしまいました。そんなこともあって、“スイッチを入れる、入れない”ということが大切だと気づいて。そうしないと、周りの人に迷惑をかけてしまうなと、実感したんです」

 とはいえ、うまくスイッチの切り換えができるかと言えば、なかなか難しいよう。役を疑似体験したままというのは、杉咲自身にとっても大変なことではなかろうか。
 「自分自身、すごく苦しいことでもありました。でも、その方がより本当の感情をぶつけられる。やらないよりやったほうが、きっと作品がもっと良くなるし、観てくださる方の心にもより深く届くと感じていて。ただ、このままではいけないなという思いもあって、どこかで(心の)バランスをとることも覚えなければいけないとはわかってはいるのですけど…。これから徐々に、挑戦してみます(苦笑)」

◆現在19歳、「早く20歳になりたい」と言う理由とは?

 誰に教えられることもなく “演じることの真髄”をすでに体感しているあたり、天性の才能を感じさせる杉咲花。そう思えば、音楽やファッションの好みも同世代の女の子とはひと味違うのもうなずける。
 「『無限の住人』を撮影しているときは、CHARAさんの「せつないもの」という曲を聴いていました。ほかに好きなのは、THE BLUE HEARTSエレファントカシマシTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとか…ロックが好きなんです。ファッションは、個人的にはコム デ ギャルソンが好きです。普段は黒い服ばかり着ているんですが、完成披露や受賞式などの舞台に立たせていただくときは、また違うチョイスをしていきたいなという思いが、最近出てきました。もちろん、スタイリストさんが用意してくださったものなんですけど(笑)。『無限の住人』のキャンペーンでは、赤い着物の凜にちなんで、どこかに赤を取り入れることが多いです」

 ただいま19歳の彼女は、「早く20歳になりたい」と言う。「ずっと打ち上げや二次会に参加できなくて…。みなさんが次の会場に向かうのに、私ひとりだけ『さよなら』と取り残されて、それがすごく悲しかったんです(笑)。そういう場に一緒に行くことに憧れているので、早く20歳になりたいです!」

 そう語る笑顔は、とびきりチャーミング。どちらかといえば、これまでシリアスな役柄で評価を高めてきた杉咲だが、この笑顔を生かしたコメディも似合うだろう。本人も、「今まで挑戦したことがないので、すごく興味があります」とのこと。抜群の演技力を持つ彼女が、これまでにない役柄に挑む姿を、楽しみに待ちたい。
(文:金子裕子)



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