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若き日のSMAP、その“刺激物”的な在り方とは?

 様々な角度からSMAPに迫る連載第23弾。発売から約1ヶ月を経た現在も売上を伸ばしている映像集『Clip!Smap!コンプリートシングルズ』。そこには、彼らの成長はもちろん、“スター”と成り得た必然性、さらには時代の空気までもが溢れている。前後編に分けて、映像に見るSMAPの変遷と意義を考える。

◆“こんな時代があった”、SMAPの成長と時代の空気を内包

 決して“偶然”などではない。彼らが日本を代表するアイドルグループになるのは“必然”だった。

 昨年末の発売から3週間連続でオリコンDVD総合ランキング1位となり、DVDとBlu-rayを合算すると累計で45.7万枚というセールスを記録している『Clip!Smap!コンプリートシングルズ』。“未来への伝達”を目的とした重要な資料を保存したり活用したりしたものをアーカイブ(archive)と呼ぶが、8センチシングル時代、まだアイドルがシングル発売ごとにプロモーションビデオを作ることが当たり前でなかった時代の曲も含めた映像集は、SMAPのみならず、平成音楽史のアーカイブスと呼んでも差し支えないほど、時代時代の空気や輝きを、未来へと如実に伝えるものになっていた。

 例えばテレビで、スターになったSMAPのことしか知らない人でも、デビュー曲「Can’t Stop!!-LOVING-」を、雨の中ずぶ濡れになりながら懸命に歌い、ファンを盛り上げようと必死になる姿や、7枚目のシングル「ずっと忘れない」で、ブレイク前の彼らが握手会をやっていた映像を目にしたら、“こんな時代があったんだ”と、彼らのあまりの成長ぶりに驚嘆することだろう。テレビを武器に、国民的アイドルグループとして広く世間に認知された彼らは、テレビに映る部分だけをクローズアップされて、“不仲”などとバッシングされたり、見た目の変化をいちいち指摘されたり、ちょっとした発言の揚げ足を取られたりしやすい存在だった。でも、SMAPのライブに一度でも足を運んだことがある人なら、あるいは彼らのライブDVDをよく観ている人なら、ステージでの彼らこそが本物と知っているはずだ。『Clip!Smap!コンプリートシングルズ』の、特に初期の頃のシングル映像には、これまで観たこともない内容が満載だったけれど、そこにあるのは、ファンがよく知っている彼らの姿そのものだった。“青春のきらめき”としか形容しようのないキラキラ感が、これでもかというほど詰め込まれていて、あらためて“この人たちがブレイクするのは必然だったんだ”と確信させられる。93〜94年頃のブレイク前夜の6人は、それほどまでに美しくカッコ良く、妖しく危うく、そして切ない。

◆欧米へのコンプレックスを微塵も感じさせないオリジナリティ

 新たに編集された映像の中には(おそらく)制作者側からのメッセージが含まれているのだろう。「ずっと忘れない」の映像は、歌を、93年のファン感謝祭やスーパードッジ大会など、かつて開催されていたイベントの映像と絡めているのだが、映像自体は特に凝ったものでもないのに、それぞれのキャラがちゃんと立っていて、つい引き込まれてしまう。ファンにしっかりと手を差し伸べ、目を見て言葉を交わし、小さな子供の頭を撫でたり。6人が6人、それぞれの神対応を見せている。ファンへの優しい、まっすぐな眼差しに、“さよならは終わりにすることじゃなく、何かが始まるスタートと同じ”という内容の歌詞が重なったとき、またあらためて彼らの楽曲の普遍性を想う。

 02年に発売されたSMAP初の映像集『Clip!Smap!』には、「青いイナズマ」や「セロリ」など、5人時代のSMAPのミュージッククリップが収録されていた。それぞれに楽曲の世界観が的確に映像化されていてとても楽しめたけれど、今回の『Clip!Smap!コンプリートシングルズ』は、誰もがSMAPの代表曲として思い出すであろう「オリジナル スマイル」や「がんばりましょう」のミュージッククリップが、これといって手がかかっていないのにものすごくカッコイイことが、新たな発見だった。「オリジナル スマイル」は、6人でのニューヨークロケの模様を収めたもので、街を歩く彼らがどこからどう見ても只者ではない。全員が、ありえないくらいのスターの輝きを放っている。この映像自体は、ライブDVD『SEXY SIX SHOW』にも挿入されているもので、欧米に対するコンプレックスなんて微塵も感じさせない、まさにオリジナルのカッコ良さに溢れているのだ。「オリジナル スマイル」という歌自体が、もともと森且行の声が目立つように仕上がっているのだけれど、このミュージッククリップを観ながら曲を聴くと、森の声があってこそ、この曲が成立していることがよくわかる。常に生歌を身上とする彼らが、それでもライブでは必ずコーラスのように、森の声を被せていた。中居正広ならバラード、木村拓哉はロックやR&B、稲垣吾郎は軽やかなポップス、草なぎ剛は物語性のある曲かクールなタイプのダンスチューン、香取慎吾ならヒップホップやファンクと、それぞれ声に似合う曲のジャンルがバラバラなSMAPの中で、ザ・アイドルソングを一番的確に歌いこなすのが、森だったのだ。テッパンの人気曲が、原点の映像とクロスオーバーすることで、また新たな輝きを放つ。

◆若き日のSMAP、“刺激物”的な在り方からの変遷

 SMAPの5人は、歌手でありダンサーでもあるが、コリオグラファー(振付師)でもあると感じさせてくれるのが、「ダイナマイト」のミュージッククリップだ。トラックの荷台に乗った彼らが、荷台に置かれたドラム缶とスノコをステージにして、歌割りに合わせて向かい合ったり、抱き合ったり、カメラに向かってキスしたり、踊ったり、時にファンと一緒に歩道を走ってみたり、5人の中の様々な関係性を見せつける。「ダイナマイト」という曲自体にはちゃんと振付もついているけれど、このミュージッククリップの彼らは即興で5人の関係性をある“フォルム”に落とし込んでいて、その信頼関係がとてつもなく気持ち良くて痺れる。まさに、SMAP自体が“愛が溢れすぎて爆発しちゃうダイナマイト”であることを痛感する映像だ。トラックが走るのは東京の街。見慣れたトンネルに懐かしいビル群、その街を引っ掻き回していくお騒がせな5人。何度観ても新しい発見があって、自由演技でここまでのカッコ良さとチームワークを爆発させられるエンタテイナー性に、感服させられる。SMAPの魅力は、計り知れない。だからつい、一人でも多くの人に、この映像を手に取ってもらいたいと思ってしまう。

 彼らの映像的なチャレンジは、99年に発売されたシングルの、ショートフィルム仕立ての「Fly」でひとつのピークを迎える。“若さ”という期間限定の無垢なきらめきから、もっと温もりのある、優しい輝きへ。SMAPの映像と音楽は、ある種の“刺激物”的な在り方から、この後、滋味と風味豊かな“定番”へと変化を遂げる<後編に続く>。
(文/菊地陽子)



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