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SMAPとは何か? 逆境が生んだベスト盤にその答え

 様々な角度からSMAPに迫る連載第22弾。昨年12月21日に発売されたベストアルバムが、早くもミリオンを突破した。この偉大な数字は、解散騒動に揺れる厳しい日々を経てなお、たくさんの人々の声や想いが集結した結果。あらためて、『SMAP 25 YEARS』の意義を考える。

◆直木賞作家の「SMAPはインフラ」発言、ベストはそれを裏付ける

 SMAPのベストアルバム『SMAP 25 YEARS』が、発売3週目にしてミリオンを達成した(累積売上100.7万枚、1/16付)。収録曲の投票に参加して発売を心待ちにしていた人は、たぶん何度となく聴き込んでいるだろうし、12月26日の『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)最終回を観て、SMAPの楽曲がいかに日常に寄り添っていたかに気づいて買いに走った人もいるだろう。“話題になってるから”という理由だけで手に取った人だっているかもしれない。

 50曲を通しで聴いてみると、人気曲を集めたベストアルバムというより、まるで“SMAPとは何か”を饒舌に伝える、一つのコンセプトアルバムのような気さえしてくる。直木賞作家の朝井リョウはかつて、『ゴロウ・デラックス』(TBS系)に出演する際、番組ディレクターからSMAPの印象を聞かれ、「SMAPはインフラだ」と語ったという。“インフラ”(※インフラストラクチャーの略)とは、要約すれば“国民生活を向上させるための公共施設”という意味だから、確かにいい得て妙である。『SMAP 25 YEARS』には、今を生き抜くためのガイドラインのような言葉と、気持ちを高揚させたり落ち着かせたりするリズムとメロディ、そして何よりも歌い手の“心”と、彼らの“成長の記録”とが詰まっていて、日常生活で自然とエネルギーをチャージしてくれるような格好のツールになっているのだ。

◆懐の深さを感じさせる特別な曲「BEST FRIEND」

 音楽は、時空を超える。たとえば20年前の曲を聴いて、その時代の出来事を思い出すこともあれば、まさにその曲を聴いていた当時の気分が不意に蘇ることもある。前に聴いたときは何とも思わなかった歌詞が、妙に心に引っかかったり、逆に“これは自分の心の代弁だ”と思っていたフレーズが、いつしかサラリと聴き流せるようになっていたり。中居正広は、12月31日のラジオで初めてベストアルバムのことに言及し、50曲をノンストップで聴いたことを告白した。「最初、複雑で。正直聴けないかな、ちょっと無理かな、やめとこうかなと思ったんですけど」と前置きしながら、「SMAP側から出してるアルバムですが、ファンの子たちから出たアルバムなんじゃないかって」と感想を語っていた。また、「“Can’t Stop!!-LOVING-”から始まって、次が“BEST FRIEND”なんですよ。“早っ!”って思いながら」とそのときの自分の心情を詳細に伝えていた。それはおそらく、リリース順に収録されているが故に、デビュー曲の次に早くも森且行が脱退するとき歌った曲が来てしまったことへの“早っ!”だったのだろう。

 彼らにとって特別な「BEST FRIEND」は、ファンにとってもやっぱり特別。でも、たとえこの曲を初めて聴いた人でも、本来なら恋人に贈るような誠実で切実な言葉を、敢えて友達に向けて歌っていることがSMAPの懐の深さであることに気付かされるのではないだろうか。若い女の子に黄色い声援を浴びることがアイドルグループの宿命であったはずの90年代初頭に、シングルのカップリングとはいえ、友情をテーマにした曲を歌っていた。当時は、本人たちの戦略ではなかったにせよ、曲の中の言葉は彼らの中に刻まれたのだろう。いつしかその友情は彼らの物語の中で体現され、グループが次のステージへ向かう“ここぞ”という時に、『SMAP×SMAP』やライブで披露されてきた。映像はないけれど、このベストアルバムこそ彼らのドキュメンタリーであり、“届ける”“続ける”“前に進む”“笑う”“弾ける”“挑戦する”“誰かを想う”“愛する”“平和を祈る”など、当たり前のようでいてつい忘れがちな人としての“気持ちの持ち方”に、聴くだけで気づかせてくれる。

◆“SMAPとは何か?”を伝える、逆境の中で生まれたベスト

 ところで、SMAPのアルバムの中で最高のセールスを記録しているのが、2001年発売の『Smap Vest』である。本作は、シンプルにデビューからのシングルを集めたベスト盤(収録順は発売順とは逆で新しいものから始まる)で、それまでずっと単一パッケージで発売してきたSMAPが、初めてジャケットの色を変えた12種類の初回盤(+通常盤1種類)で展開することでも話題になった。これは、SMAPのファン以外も積極的に購入したという現象も含め、“キラキラしたアイドル”としてのSMAPの存在感を決定づけるアルバムと言える。

 現時点で『SMAP 25 YEARS』は、SMAPのアルバムとしては2番目に高い累積売上となり、その次につけているのが95年に発売されたSMAP初のベスト盤『Cool』だ。このアルバムでは、「笑顔のゲンキ」「かなしいほど青い空」などをリアレンジ。ニューヨークで活躍するジャズミュージシャンによる演奏で、SMAPの6人も何曲かはレコーディングをし直していた。個人的にもこのアルバムはとても好きで、それまでの洋楽至上主義だった自分の邦楽に対する劣等感を覆し、もっと自由な音楽世界を受け入れるきっかけをくれた、狭い世界と広い世界を繋ぐ“窓”のようなアルバムだった。

 他にも、SMAPのベスト盤は企画性に富んだものが多く、97年発売の『Wool』はしっとり系と元気系の名曲をアルバム・シングル両方から集めた2枚組。2001年発売の『ウラスマ』(表記はSmapの文字全体を裏返し)はアルバム曲とカップリング曲をメインに、シングル曲にもアレンジを加えたいわゆる“裏ベスト”。2011年には、“みんなを勇気付けるSMAPの曲”というテーマでインターネット投票がなされ、ランキングの上位15曲を収録した『SMAP AID』が発売された。でも、そんなにバラエティに富んだベスト盤の中でも、今回ほど“SMAPとは何か”を伝えてくれたものはない。それは多分、ファンにとってもSMAPにとっても、2016年の逆境の中で生まれたアルバムだったからなのだと思う。本当に皮肉なことだが、そう思う。

◆つらく厳しい1年を過ぎ、2017年は“究極の保存食”を手に

 昨年11月、10年ぶりに“スマスマ”の「S-Live」に登場した松任谷由実が、放送後、「1度でも成功を手にしたアーティスト、ましてやスターは、栄光と同じだけの不条理も受け入れなければならないのだ」とツイートしていた。番組で歌われたのは、「守ってあげたい」と「Smile for me」。どちらも“他者を心から思いやる歌”で、SMAPの歌の世界観と深く通じるものがあった。

 2016年は、SMAPの5人にとってもファンにとっても、たくさんの“不条理”がのしかかり、つらく厳しい1年だったけれど、年が明けた今も不思議と“絶望”はない。この、栄養価が高くて美味しくて、保存の効く“究極の保存食”のようなアルバムがあれば、いつか彼らがさらにパワーアップしてから再び“集合”する時を、信じて待っていられる気がするからだ。
(文/菊地陽子)



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