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「世界に一つ」騒動後に40万枚超、300万枚購買運動を成し遂げたSMAPファンとは?

 様々な角度からSMAPに迫る連載第16弾。SMAPの代表曲「世界に一つだけの花」の累計売上が、オリコンでついに300万枚を突破した。“騒動”が明らかになった1月13日から現在まで、継続して購買運動を行ってきたSMAPファン。突きつけられた“解散”を前に、なぜここまで“行動”を起こすことができたのか?

12/5〜8付のオリコンデイリーCDシングルランキングで合計3.3万枚を売り上げ、累積売上数が300.8万枚に到達

12/5〜8付のオリコンデイリーCDシングルランキングで合計3.3万枚を売り上げ、累積売上数が300.8万枚に到達

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◆「世界に一つだけの花」300万枚突破を導いた、自然発生的な購買運動

 “花摘み”運動が、12月9日、ついに“300万の花束”になった。

 “花摘み”とは、SMAPファンによる、「世界に一つだけの花」購買運動のことだ。この原稿を書いている12月9日金曜日夜、編集から「8日までのオリコンデイリーCDシングルランキングの売上で、“世界〜”の累積売上枚数が300万枚を突破しました」という連絡が入った。実は前日、この連載の番外編で「世界に一つだけの花」が大ヒットした理由を考察した原稿を書いたばかりで、その時点で発表されていた4日までの累計売上は297.5万(12/12付週間ランキング)。5日から8日までの4日間で、3.3万枚を売り上げたことになる。1月にSMAPが解散危機という報道があった直後に「世界に一つだけの花」を中心にSMAPのCD売上枚数が急上昇。「華麗なる逆襲」「シャレオツ」など、比較的最近発売されたシングルとともに、オリコンのランキングを賑わせた。「世界に一つだけの花」に限って言えば、1月からの約11ヶ月で40万枚以上を売り上げたことになる。新譜でもなく、購買特典も一切ないシングルでこの数字はすごい。

 誰かが指揮をとって、「CDを買いましょう!」と呼びかけたわけではない。2016年のデビュー25周年を、どうにかしておめでたいニュースで飾りたい。ファンのそんな思いから、自然発生的に生まれた現象だった。

◆騒動後、自分にできることは――行動するファンたち

 1月に“騒動”が報じられた当時、SMAPファンの思いはとても複雑だった。解散危機にあることなど信じたくなかったし、情報が錯綜しすぎて何が真実なのかもわからなかった。ラジオから聞こえるメンバーの声に耳を傾け、そこで流れる音楽の意味を深読みして、一喜一憂した。それぞれに、「大丈夫だよね」「信じてるよ」という思いを、SMAPに届けたかった。その後、またたくさんの伝聞だらけの理解不可能な報道がなされ、8月に正式に解散が発表された。それからトリプルミリオンを目指して“花摘み”が加速したのは、ナンバーワンを目指してこなかった彼らだけれど、ファンの力でなんとか長く残る“記録”にSMAPの名を刻みたいと願ったからだ。「信じてる」「愛してる」という思いが、ニュースとなってSMAPの耳に届くと思ったからだ。また、ランキングの上位に食い込めば、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)では過去映像が流れ、ワイプでそれをジャニーズ事務所の後輩やタモリが見つめる場面を目にすることもできた。

 9月9日のデビュー記念日には、25年前にデビューイベントを開催した西武園ゆうえんちにファンが集結したり、東京新聞の広告欄に、「25周年おめでとう」というメッセージを大量投稿したり、有志による『5☆SMILE〜SMAP存続並びにグループ活動の継続願いの署名活動プロジェクト』が中心となって、37万人分の署名を集めたり。SMAPファンは、“行動”する。ピンチに陥ったとき、諦めるのではなく、自分にできることを模索する。その行動力や積極性は、音楽番組冬の時代にデビューしたSMAPが、バラエティーに進出したり、司会業を目指したり、文化人と交流して文化的な素養を身につけたり、絵で自分を表現したり、タブーとされている恋バナをラジオでネタにしたり、常に体を張って“できること”を示した姿勢に近いものがある。

◆アナログ的な草の根活動とSNSの拡散力が可能にした

 ファンの“行動”も、クリックひとつで済むものではない。CDを買う行為にしても、署名にしても、新聞広告にしても、ちゃんと手間暇がかかっていて、その“もの”を手に取れたり、ボリュームや数や熱量を、自分たちの目で見て確認できるものになっている。SMAPがデビューした90年代は、ラジオにしても雑誌のランキングなどにしても、ハガキでのリクエストが主流だった。だから、SMAPと同年代かそれ以上のファンは、アナログ的な草の根活動には慣れている。

 アナログ的なものに価値を見出す一方で、SNSも上手に活用し、女性ならではの拡散力で活動を全国に普及させている点もさすがだし、中心になって動く人たちは、“共感や共鳴したら動けばいい”と、協力者に対して一定の自由度を保つことも忘れない。

◆受け継がれたSMAPの“スピリット”、ファンはSMAPに似ている

 アイドルファンの間では、“ファンはタレントに似る”という法則が、まことしやかに囁かれている。どちらかというと、グループというよりは個人のファンの方が当てはまりやすい法則で、例えばSMAPなら香取慎吾のファンは香取が好きそうなファッションに身を包んでいることが多いし、稲垣吾郎のファンはエレガントなイメージがある。木村拓哉のファンはコンサートでもどことなく華やかだし、中居正広のファンは頭が切れるし、草なぎ剛のファンは繊細でひたむきだ。ただ、今年1年、SMAPファンの行動力を見て思った。SMAPファンは、SMAPに似ている。誰のファンかはあまり関係ない。SMAPファンは、SMAPの“スピリット”にどこまでも惹かれているのだ。

 そして幸運なことに、その“SMAPスピリット”は、彼らの“歌”によって年を重ねるごとに柔軟に、かつ強固になっている。デビューシングルでは、“君をしあわせにする僕はここにいる”と盛大な誓いを立てたかと思えば、4枚目のシングルのタイトルは、「負けるなBaby!〜Never give up」と、タイトルからしてスポ根的なガッツを見せ、自己紹介ソングで“ピンチはチャンスだ”と断言し、ライブでは“大事なのは続けること”と語りかけ、“手を繋ごう”と呼びかけ、“どうか届きますように”と祈る。

◆木村拓哉も活動を認識、ファンが諦めない理由とは

 以前、このコラムで、「SMAPのファンは諦めが悪い」と書いたことがある。でも、その諦めの悪さが奇跡を呼ぶこともあると、SMAPはこの25年間で、身をもって教えてくれた。SMAPファンは、SMAPの辿ってきた軌跡と、彼らの歌に精神を鍛えられ、シブトクツヨク育った。

 11月18日に放送されたラジオ『木村拓哉のWhat’s UP SMAP!』(TOKYO FM)で木村は、「東京新聞さんとかに、ダダダダーッとメッセージを寄せていただいたりとか。本当にみなさんありがとうございます」とコメントしていた。誕生日直後の放送だったので、誕生日おめでとうメッセージに対する「ありがとう」だったのかもしれないが、いずれにせよ、木村はファンのそんな活動をちゃんと認識していた。ファンの活動に対し、ネットでは「SMAPファン、しつこい」「もう5人を解放してあげたら」「本人は迷惑してるんじゃない?」などという声もよく聞かれるが、もしSMAPのメンバーの誰かに「そういう活動、うざいんだけど」と言われたとしても、ファンはきっとこう言い返すだろう。「だって、ずっとSMAPが言い続けてきたんですよ。“諦めるな”“ピンチはチャンスだ”“なんでもいい、できることから始めよう”って。私たちはその教えを、ただ守っているだけなんですよ」と。

◆SMAPによって形成された、いわば“SMAPチルドレン”

 9日の『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)に、平野ノラが出演していた。彼女のブレイクのきっかけとなったのは『ナカイの窓』(日本テレビ系)。それに出演したことで、仕事のオファーが殺到したそうで、「だから私は中居チルドレンです」と語っていた。考えてみれば、武井壮が見出されたのも、2012年に中居がMCを担当していた深夜番組の『うもれびと』(フジテレビ系)で、武井はたびたび、「中居さんがいなかったら今の俺はなかった」と発言している。陣内智則の再ブレイクも中居の引き立てあってこそだし、TRFDJ KOOの面白さを引き出したのも中居だと言われている。ジャニーズの後輩としては、中居プロデュースの“舞祭組”など、まさに“中居チルドレン”だ。陣内のように“チルドレン”とまではいかない人も含め、今、テレビを面白くさせているタレントの中には、中居によって発掘されたり鍛えられたり磨かれたりした人は多いし、多分、これからもっと出てくるだろう。

 中居をはじめ、SMAPのメンバーの持つ影響力は絶大だし、それがグループとして結束した時の魅力とパワーは計り知れない。そうして、ファンもまた25年の長きに渡り、SMAPに支えられ、励まされ、鍛えられ、育てられた。枯れそうになった心に潤いをくれて、ヘコんだ時は檄を飛ばされ、暗く沈んだ心を、その笑顔や歌で明るく照らしてくれた。

 せっせと花を摘んだり、署名を呼びかけたり、新聞にメッセージ広告を出したり、SMAPの素晴らしさを一人でも多くの人に伝えたくてコラムをしたためたり。いつまでも諦めの悪い私たちファンは、SMAPの愛によって形成された、いわば“SMAPチルドレン”なのである。
(文/菊地陽子)

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