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“スマスマ”松任谷由実、谷村新司コラボでも証明したSMAPの歌ごころ

 様々な角度からSMAPに迫る連載第12弾。ファン投票によるベストアルバム『SMAP 25 YEARS』収録曲も発表されたが、今回はそんなSMAPの“歌”を語る。中居正広はよく“歌ヘタ”をネタにするし、他のメンバーも歌について誇ることはない。だが、最近の『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)での、松任谷由実谷村新司とのコラボのはどうか。“スマスマ”やライブで聴かせるSMAPの歌ごころとは?

先ごろ発表されたベスト盤『SMAP 25 YEARS』、ファン投票1位は「STAY」だった。

先ごろ発表されたベスト盤『SMAP 25 YEARS』、ファン投票1位は「STAY」だった。

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◆『ナカイの窓』で中居が自虐的に語った「Fly」という曲

 中居正広は、本当に、自虐ネタにするほど“歌がヘタ”なのだろうか。

 11月9日放送の『ナカイの窓』(日本テレビ系)のトークテーマは“歌の上手い人”。ミュージカル女優の新妻聖子が、歌をうまく歌うコツについて、「歌詞に感情を乗せること」と語った時、中居は「俺なんか、SMAPの曲でサビ前の“ぜ〜”から入る曲があって、ストーリーに気持ちを乗せろとか言われても……」とボヤきつつ巧みに笑いを取っていた。<だけど胸の扉もう開くべきだぜ>という歌詞の、サビ直前の“ぜ”。流れ星を、夜の涙に例えた冒頭からずっとメンバーのソロで繋がれた曲は、その一音で初めて5人の声が結集する。番組では、中居のソロ曲やSMAPでの歌にそれぞれに思い入れのあるゲストに対して、「聴いて、『Fly』って歌」と、さり気なく勧めていた。

 年末発売のベストアルバムに収録される50曲には選ばれなかったけれど、石井克人監督が監督したミュージックビデオはショートフィルム仕立てで、映像や楽曲のみならず、仲間を助けるために集結したSMAPが、追っ手から逃れるために屋上に向かい、最後は鳥の羽を散らしたまま消えるというストーリーも、痺れるほどにカッコイイ。

◆観客を裏切るための前振りのよう 1位の「STAY」もまた――

 中居は常々、「シングル曲は、歌と衣装と振り付け、その三つが揃っていないと……」と語っていた。以前、『ナカイの窓』でSMAPの好きな曲を聞かれた時、“SMAPの5人がカッコイイから”という理由で、「Mistake!」を挙げていたこともある。ベストアルバムの1位に選ばれた「STAY」は、2011年に『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)でアルバム『SMAP AID』のランキングが発表された回ではっきりと「いい曲」と言っていたし、クリープハイプ尾崎世界観が楽曲提供した「ハロー」は、2014年の『音楽の日』(TBS系)にクリープハイプが出演した際、珍しく楽曲提供者を前にして、「好きな曲」と話していた。「好き嫌いや得意不得意を作らないようにしている」と公言している中居が、時々見せる本音。「Fly」が好きな曲かどうかはさておき、「Fly」「STAY」「ハロー」「Mistake!」に共通するのは、どれもSMAPらしい世界観がはっきりした曲であることだ。歌の上手い下手はともかく、SMAPは、楽曲ごとに、またはアルバムごとに、見事なまでに一つの“世界観”を確立する。「Fly」をリリースした年に中居が演出を担当した『LIVE BIRDMAN』は、“どメジャー”になる前の、少しサブカルっぽさもある、ストリート出身の“おしゃれSMAP”の頂点とも言える出来栄えだった(個人的には、SMAPのライブDVDのヘビロテNo.1である)。

 “歌詞に感情なんか乗せたことはない”“音程を外さないように歌うだけで必死
”と、中居は自分の歌について、たびたび自虐的に語るけれど、SMAPのライブを一度でも観たことのある人なら、中居が本気を出したときの、その声に含まれる温度や湿度の高さに、胸を打たれたことがあるはずだ。ライブでの中居を観ていると、歌に対する自虐は、ライブで観客を幸福に裏切るための壮大な前振りのように思えてくる。10年前なら、その嬉しい裏切りをくれた曲が「STAY」だったし、2年前のゲスの極み乙女。川谷絵音が提供した「好きよ」(アルバム『Mr.S』収録)という曲は、香取のソロから入って最後に中居のソロで終わるその歌割りも新鮮で、歌詞に歌われた無骨で切ない男心と、SMAP5人の歌唱のいい意味での不器用さが見事に調和して、深く胸を打った。「君色思い」の歌い出しや「好きよ」のソロなど、中居の少し掠れた、でも温もりのある声質は、男の“切なさ”を表現するのに、とても適していると思う。

◆「まだ伸び代がある」、曲の世界観を具現化する才能に長けた5人

 歌手と名乗る人が、ライブで音を外さずにちゃんと歌うことは当たり前のことではあるだろう。でも、誰かが歌っている歌を聴いて、“上手いなぁ”と最初にその上手さに感心したとしたら、それは、ライブの経験としてはあまり面白くないような気がしてしまう。せっかく同じ時間、同じ空間を共有して、一度しかない体験を体に刻み込みに来たのなら、CDの音源のように安定した歌声を聴かされることよりも、たとえ失敗でも、“一回性”の温度や湿度を感じられた方がいい。これまで以上にいい曲だと思えたり、いつもは気にならなかった歌詞が急に胸に刺さったり。単純に、嫌なことを忘れて騒げたり。少し荒削りな方が、特にライブの時は楽しみ方が広がる。草なぎ剛が以前、「SMAPにはまだ伸び代がある」と話していたのは、そういうことも含まれるのかもしれない。歌が下手とか上手いとか以前に、SMAPの5人は、曲の世界観を具現化する才能に長けている。歌詞の奥にある真意を伝えたり、シンプルに楽しい気分にさせてくれたり、力強く励ましたり。何より、五人五様の声が重なった時、一聴して“SMAP”とわかる。拙さや不器用さも含めて、唯一無二の声の特徴があることは、歌い手としては、大きな強みであるはずだ。

◆風格と説得力を見せた、“スマスマ”松任谷由実、谷村新司とのコラボ

 SMAPの歌といえば、最近、“スマスマ”の歌コーナー『S・LIVE』で耳にした曲が、妙に心に沁みる。松任谷由実とのコラボで歌った「守ってあげたい」は、これまでに何度も聴いたことのある曲でありながら、とてつもない新鮮さで、耳に飛び込んできた。SMAPとユーミンの6人が、一つの輪になって歌う。視線の交わし方、動きのシンクロの仕方など、歌で通いあう心が画面から透けて見えるような気がして、何度見ても飽きないし、曲を聴けば聴くほど、歌詞の深みがジワジワと伝わってくる。また、谷村新司と「昴」を歌った回も見応え、聴き応えがあった。アイドルとシンガー・ソングライターということで、曲に対する思い入れは違うはずなのに、ステージに並んで立った時の風格や迫力、歌に込められた熱やその表現力、説得力は互角に見えた。別に、SMAPと谷村新司が歌で競い合っていたわけじゃない。でも、トーク番組やバラエティでは、歌に対して謙虚に振る舞う彼らが、大御所を前に、堂々と、自分たちなりの“伝える力”“届ける力”を最大限に発揮している姿は、たくましく力強かった。

 過去に何度か、“スマスマ”の歌のコーナーをレポートするために、現場に立ち会ったことがある。その時も、SMAPの5人がスタジオでゲストとセッションするのは、基本的には“ドライ”と呼ばれるリハーサルと本番の、2回だけだった。本番は、よほど致命的な失敗がなければ、たいてい一発で決まった。あの緊張感。ピンと張りつめた空気。一瞬の静寂。そこから始まる美しい音楽。「失敗したら録り直せばいい」なんて空気は一切なく、そこにいる誰もが、まるで生放送のような“一曲入魂”の集中力で挑んでいた。トータルの取材時間にしたら15分程度だったけれど、毎回“素晴らしいプロの仕事を見せてもらった”と思って、感動した。特別な、珠玉の時間だった。1曲なら3分程度の本番なのに、SMAPのメンバーはゲストの曲を覚え、番組用に振り付けを作ってもらい、覚えて、そのゲストの持つ世界の住人になる。ほんのちょっとした視線や物腰から、ゲストへの愛や尊敬の念がこぼれていく。

◆五人五様のSMAPの表現力、歌で心を一つにしてきた

 歌下手を自覚しているのは、中居だけじゃなく、草なぎもそうだ。でも、草なぎの声には、鈴のような涼やかな響きと、優しさと穏やかさがあって、例えば「セロリ」のように、愚直な男心を歌った曲や、アルバム『We are SMAP!』収録の香取慎吾との二人曲「短い髪」のように、深い後悔や哀しみを歌った曲に込められた情感の深さは、SMAPの中でもピカイチと言える。また、ギターに目覚めてからの、「藍色のギャング」(アルバム『Mr.S』収録)のようなギター曲での“楽しくてしょうがない”その突き抜け方など、SMAPの中では彼が、性格的には一番ロックなのかもしれないとさえ思う。

 稲垣吾郎は、ビジュアルと歌声の“安定感”が図抜けているが、実はなりきり力もあって、中居との2人曲「逢いたくなって」(『BIRDMAN 〜SMAP 013』収録)では“切なさ”と“甘さ”を前面に出し、香取慎吾との2人曲「クイズの女王」(『SAMPLE BANG!』)は、ちょっとミュージカル風の曲調が、その後の2人のミュージカルでの活躍を予感させた。2014年、ちょうど同じ時期に稲垣はパルコ劇場で、香取は東急シアターオーブで、それぞれに全く違うタイプのミュージカルに取り組んでいた。稲垣は軽快に、香取は重厚に。かつて、スエディッシュポップが流行った頃、ソロでカーディガンズの「Carnival」を歌ったこともあるように、SMAPの歌の“おしゃれ感”を牽引しているのは、実は稲垣だったりする。

 香取の『オーシャンズ11』を観に行った時、近くでKis-My-Ft2のメンバーが観劇していたので、あとでキスマイの取材の時、「『オーシャンズ11』、どうでした?」と聞いてみると、千賀健永と玉森裕太が、「香取くんの歌が上手くて感動した」と話していたのを覚えている。デビュー以来、SMAPの中で一番歌声に変化があったのが香取だ。もちろんSMAPの曲でも安定しているし、声量はあるしで、5人曲を支える1人であることは間違いないのだけれど、どちらかというとヒップホップ志向が強かった彼が、『オーシャンズ11』では見事にミュージカルスターとして、ゴージャスな存在感を発揮していた。歌にも並々ならぬ迫力があって、「こういう香取慎吾をまた観たい!」と思わされた。いろんな意味で、香取にはまだ未曾有の才能が隠れている気がする。

 とはいえ、SMAPの歌の要といえば、何と言っても木村拓哉である。ライブDVDを観るたびに、木村の歌でのアレンジ力に感心させられる。何度同じ曲を歌っていても、ちょっとだけアクションを変えてみたり、タメの時間を伸ばしてみたり。ライブでつい木村を目と耳で追ってしまう理由を、DVDでしょっちゅう確認する有様だ。“泣いてるんだ”という歌詞で、涙を指で拭う仕草をしたり、ちゃんと音楽に心が乗っかっていることを、声色と表情と体の動きを駆使して、全身で届けてくれる。ライブでの木村は、もちろん強烈なスター性を発揮しながら、音楽に対してものすごく献身的だなと思う。「STAY」の長い長いAメロは、やはり木村が歌ってこそ、胸を打つのだ。

 ユーミンが、<初めて言葉を交わした日の その瞳を忘れないで>と歌った時、SMAPのメンバーの目それぞれに、無垢な瞳の色が映った気がした。そうやって、彼らはいつも、歌で心を一つにする。
(文/菊地陽子)

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