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SMAPのベスト盤 木村の歌を中居がプッシュしたあの日

 様々な角度からSMAPに迫る連載第5弾。今回は、先ごろ発売が決定したベストアルバム『SMAP 25 YEARS』にちなみ、これまでのSMAPのベストアルバムの歴史に触れたい。ベストといえば“総まとめ”的な要素が強いものだが、彼らはベストですら攻めてきたし、エピソードも多い。締めくくりとなる『SMAP 25 YEARS』、それは一体どんなものになるだろうか。

SMAPは12月21日、ファン投票で収録曲を選ぶベスト盤『SMAP 25 YEARS』を発売

SMAPは12月21日、ファン投票で収録曲を選ぶベスト盤『SMAP 25 YEARS』を発売

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◆年末にベストアルバムを発表 初ベストから攻めてきたSMAP

 その投票のしやすさは、ちょっと感動するほどである。12月21日に発売が決定したSMAPのベストアルバム『SMAP 25 YEARS』。“みんなで決める! みんなのベストアルバム”というコピーが踊る特設サイトでは、10月4日の23時59分まで投票を受け付けている。

 サイトを覗くと、シングル55枚とアルバム22枚のジャケット写真が並び、それだけでも壮観だ。選曲したあとでその曲にまつわる思い出やエピソードを書き込む欄もあり、その下には、「コメントの一部を販促や宣伝に使う可能性があります」と書かれている。もしかしたら、自分たちの書いた言葉が、SMAPのメンバーの目に触れることがあるかもしれない。そう思うとつい、短いコメントにも気合が入る。自分がどれだけ、SMAPと彼らが歌う曲が好きで、どれだけその歌に助けられ、励まされてきたかを伝えたいと思う。

 一つ残念なことは、サイトに並ぶアルバムの中に過去のベスト盤が入っていないことだ。というのも、私はたとえば、シングル曲「笑顔のゲンキ」の、とくに『Cool』バージョンが好きだからである。そういう場合、ジャケット写真をクリックするのではなく、わざわざ“その他”にチェックしてタイトルとバージョンを書き込まなければならない。もう、その時点で50位以内に入ることは絶望的だ。『Cool』とは、1995年1月1日に発売されたSMAP初のベストアルバムで、それまでのシングルやアルバム曲のバックトラックが、ニューヨークの一流ジャズミュージシャンによって演奏され、歌のみならず楽器音の細かいアレンジまで楽しめる、大人っぽいアルバムに仕上がっているのだ。

 初のベストにして、バックトラックはアレンジを変えてのニューヨーク録音と、SMAPは、ベストアルバムでも攻めている。95年、11月に発売された『BOO』はリミックスアルバムで、こちらはSMAPのヒット曲が、大箱のクラブでかかってもまったくおかしくないほど、ダンサブルにリミックスされている。97年リリースの『WOOL』は2枚組。パワフルな「WOO」サイドと、センチメンタルな「LOO」サイドに分かれていて、この頃にはもう、“技術はないけどハートはある”と草なぎ剛が太鼓判を押す、SMAPの味わい深い歌唱が、確立していることがわかる。

◆生歌にこだわり本番一発勝負、ジャズとも馴染むSMAPの歌声

 音を出すという意味で、しばしば歌い手の肉体は楽器に例えられる。たしかに、SMAPの5人は、歌がとりわけうまいわけではない。中居正広にいたっては、「歌下手」をネタにしているほどだし、ライブの時も、わざと下手に歌うことで笑いをとったり、中居のパートの直前で曲が終わるコント的な演出がなされたことがある。でも、5人の個性がバラバラなように、その背格好もバラバラなら、歌声もバラバラ。そのことがかえって、世界でたったひとつの楽器であることを際立たせる。打ち込みではなく、生の楽器の音と彼らの歌声の相性がいいのは、彼らがどんなときも生歌にこだわっているせいだろう。

 よく、中居が「レコーディングはさらっと15分で終わった」などとインタビューで話していたものだが、それこそ、彼の即興力と集中力の賜物なのではないか。ライブであれ、レコーディングであれ、歌番組であれ、正解を目指すのではなく、そのときのハートをたいせつにする。本番一発勝負、という考え方は、即興のセッションを楽しむジャズやファンクの精神にも通じるものがある。だからSMAPの歌声は、ジャズミュージシャンたちの傑出した個性とも馴染むのかもしれない。

◆アイドルのアルバムとして、初めてミリオンを突破

 2001年3月23日、初のシングルベスト集『SMAP Vest』が発売され、当時アイドルのアルバムとしては初のミリオンを突破した。約1週間後の3月28日には、浜崎あゆみの『A BEST』と、宇多田ヒカルのオリジナルアルバム『Distance』の発売日が重なり、“世紀の歌姫対決”などと注目され、この頃はオリコンランキングも、ベストアルバムが常に上位を賑わせていた。SMAPは8月に『pamS(ウラスマ)』と題し、『Vest』に未収録の裏ベストを集めたアルバムをリリース。『Vest』の浸透度はすさまじく、当時、別段SMAPファンでもなかった友人が、「これは買った」と教えてくれたり、ロンドンにいる友人から、「欲しいから送って」と頼まれたりした。彼女もとくにSMAPのファンではなく、日本ではアイドルに興味を持ってもいなかったけれど、もともと洋楽がそんなに好きでなかったせいか、「懐かしくて、聴いていて嬉しくなって、元気をくれるアルバムだった」と、とても喜んでくれた。アーティスティックな側面を順調に育みつつも、大勢の人に受け入れられるわかりやすさと明るさを保ち続けるSMAPのことを、とても誇らしく思った。

◆5年前の『SMAP AID』 中居と木村の意外なエピソードも

 5年前に発売されたベスト盤『SMAP AID』も、収録曲はファン投票で決まっている。ただし、『AID』の投票の際には、「勇気をくれるSMAPの曲」という但し書きが付いていた。『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の特別企画で、『AID』に収録される15曲が発表された。20位にランクインしたのは、08年のライブのジャンクション映像のために作ったという「チョモランマの唄」。15位に「freebird」が選ばれたとき、草なぎは「これ好き。嬉しい」とコメントした。ランクインしたのは意外な曲も多く、たとえば「Fine,Peace!」は05年のアルバム『SAMPLE BANG!』に収録された木村拓哉、草なぎ、香取慎吾の3人曲。稲垣吾郎は、「ライブでこの曲を3人が歌っていた時、僕は髪の毛直してました」と言って笑いをとった。

 番組協力で集まった観覧席から「キャー」と歓声が沸き上がったのが、7位の「STAY」だ。“永遠なんて言わないから、たったの50年一緒に”と歌うこの曲は、06年のアルバム『Pop Up!SMAP!』に収録されている。中居は、「これカッコイイよね、SMAPがカッコイイって感じ」と珍しく曲について前のめりに発言をし、「木村のAメロがえっらい長いんだけど、俺はそれが好き」と言って、その木村のAメロが長くなったのは、自分の意見が通ったからだと主張した。

 「STAY」のAメロは、<この先どうしようもなく>という言葉から始まる。この先どんなすれ違いや言い争いがあっても、道の途中で手を離さないで、と木村が歌い、Bメロを中居が<大事なのは続けること>とつなぐ。

 「よくあるじゃん、(メンバーが)ちょっと歌って、(また次のメンバーが)ちょっと歌って……っていうの。この曲はなんか、ずっと木村で行った方がカッコ良くない?って思って。木村に確認してって言ったの。そしたら、“いいよ”って言ってるって聞いて」
 そう話す中居の表情が、まるで好きな人に告白して、受け入れられたことを親友に報告するときのように、嬉しそうだった。でも、それを聞いて木村は「俺、何も言ってない」と言った。「レコーディングの時は、俺、いつも一曲全部録るから」と。

◆できることなら、ファン投票の結果を“スマスマ”で……

 真相はどうあれ、このやりとりはとても微笑ましい。それを見守る3人も含め、それぞれの音楽に対する思いが伝わって、嬉しくなる。できることなら、次のアルバムがリリースされるときも、あのときのように、“スマスマ”でランクインした50曲を順番に、メンバーの目の前で発表してくれたりしないだろうか。

 そんなことを想像するだけでワクワクするけれど、「STAY」の歌詞を思い出すだけで思わず泣きそうになる。ベストアルバムのリリースが決まってからというもの、曲を聴き直したり、忘れていたことを思い出したり。SMAPのファンは、なんだか忙しい。
(文/菊地陽子)

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