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大喜利とバラエティー番組の50年(3)『IPPONグランプリ』とバカリズム

 「大喜利とバラエティー番組の50年」と題し、全4回で『笑点』(日本テレビ)と『IPPONグランプリ』(フジテレビ)という2つの大喜利番組の歴史と功績をたどっていく本連載。3回目は、本業の“お笑い”はもちろん、俳優業、ナレーション、音楽番組のMC、果ては連続ドラマの脚本まで、幅広いジャンルで大活躍しているバカリズム(升野英知)が主人公だ。

 今やテレビでおなじみの存在となっているバカリズムだが、昨年3月放送のドキュメント『無名時代』(フジテレビ)では、彼が世間で注目を集めるまでの長い苦節が描かれた。そんな時代に終止符を打った出来事として、バカリズムは2009年に行われた『IPPONグランプリ』第1回大会優勝を挙げている。そこで今回は、彼がデビューした1994年からゼロ年代のバラエティー番組を眺めながら、現在の快進撃の起点となった『IPPONグランプリ』について考えてみたい。

■デビュー当時はボキャブラブーム 笑いのリズムつかめず苦悩の日々

 1994年、当時18歳の升野は憧れのウッチャンナンチャンが通っていた日本映画学校に入学。同級生とお笑いコンビ「バカリズム」を結成する。翌年には初舞台を踏んだが、斬新な設定のコントが好評で、「笑い声を背に浴びながら、帰る気持ちよさがあった」(『無名時代』より)と本人も十分に手応えを感じていた。ところが、当時はギャグネタを披露する『タモリのボキャブラ天国』(フジテレビ)に出演する爆笑問題ネプチューン・海砂利水魚(現・くりぃむしちゅ〜)といった、一世代上の先輩芸人が、若者を中心に黄色い歓声を浴びていた“ボキャブラブーム”全盛期。バカリズムと親交のある放送作家・オークラ氏は2015年発売の雑誌の中で、当時のライブハウスにキャブラー(ボキャブラ出演者)目当ての観客が詰めかけていたことを指摘し、以下のような感想を述べている。

「そういった客はボキャブラに出ている人々がネタをしようがフリートークをしようが何をしたって盛り上がります。一方、テレビに出ていない若手は同じライブでネタをやる。そういう環境だと、バカリズムのように見る側が笑いの見方を知らないと次を見たいと思いにくい笑いって苦労するんです。みんなが『凄え!』と一目置いていたバカリズムの方法論が、97〜98年頃のライブシーンでは、“受けにくい人”になってしまった」(太田出版『クイックジャパンVol.121』)

 その後、ゼロ年代前半に訪れたネタ見せ番組『エンタの神様』(日本テレビ)のブームにも乗れないまま、2005年には相方が脱退。コンビ名を引き継いで“ピン芸人”としての再スタートを果たすと、翌06年にはピン芸人No.1を決める『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ・関西テレビ)に早速エントリーした。「たぶん、解散ってマイナスイメージだから、悲壮感みたいものを早めに取っ払おうと思って。『R-1』にもすぐにエントリーして、出るからには絶対決勝に行かなきゃいけないと思っていたから、自分の中では分岐点のような感じでした」(『無名時代』より)。フリップネタの「トツギーノ」で決勝進出を果たし、4位を獲得。テレビ進出のきっかけをたぐり寄せた。

■運命変えた『IPPONグランプリ』優勝 一躍ブレイクもブレない姿勢

 『R-1』以降、徐々に仕事を増やしていったバカリズムのもとに、ダウンタウン松本人志を大会チェアマンに迎えた、大喜利の日本一を決める大会『IPPONグランプリ』の招待状が届いた。出場者同士で回答の採点を行うというシビアな設定と、その様子を松本が見守るという独特な緊張感のもとに行われる“真剣勝負”の場。芸人としての腕前が試される同番組への出演前の心境について、バカリズムは次のように語っている。

「出場者を見た時、有吉(弘行)さんとか(千原)ジュニアさんとか、すでにバラエティー番組で活躍されている方たちばかりだった。僕はまだ『面白い発想をする芸人だね』っていうくらいだった。ほか(の分野)でポイントをたくさん取られている人たちに、唯一自分が大事にしていた部分まで取られちゃうと、もうずっと勝てないだろうから。優勝できるかどうかで、180度変わるなと思っていました」(『無名時代』より)

 ひとつのお題に対して、あらゆる角度からの回答が求められる同番組で、バカリズムはハイペースで「IPPON」を量産。松本に「まさに名前の通り(試合の流れが)バカリズムになっている」と言わしめるほどの圧倒的な強さを見せつけ、初代王者に輝いた。その後も第5回大会までに2回の優勝を果たし“絶対王者”の称号を獲得。番組プロデューサーの竹内誠氏も、かつてのインタビューで「第1回のバカリズムさんの圧倒的な勝ちっぷりには、びっくりしました。何秒かに1度必ず笑いを取る、まさに職人技。競技性をもたせたことで、大喜利ができる人は面白い、大喜利が面白い人はかっこいい、そんな発見が視聴者にもあると思う」と大喜利への捉え方の変化を話していた。

 バカリズムは『IPPONグランプリ』での活躍をきっかけに、他分野でマルチな才能を発揮し、すっかり“売れっ子”となった今でも、本人はいたって冷静だ。「僕はメジャーからはちょっとズレてるから。(出演番組も)深夜が多いし、『オモクリ監督』とか、『IPPONグランプリ』とか、『人志松本のすべらない話』とか、芸人お試し系のネタ番組の印象が強いんですよ。そこで頑張ってきた貯金で出させてもらってるのがバラエティーだと思ってる」(『クイックジャパンVol.121』)。大ブレイク後も、姿勢は一切ブレていない。

 現在も、ほぼ毎回のように『IPPONグランプリ』への出演を続けるバカリズムだが、意外にも第5回大会以降、優勝から遠ざかっている。11日放送の第15回大会も、ジュニア、ロバート秋山竜次、ネプチューン・堀内健博多大吉といった歴代チャンピオンたちがズラリと並ぶ。そんな中、5年ぶりの優勝をかけたバカリズムが、どういった回答で松本や視聴者をアッと驚かせてくれるのか、大いに期待がかかる。

■『IPPONグランプリ』歴代チャンピオン一覧
第1回(2009年12月)…バカリズム
第2回(2010年3月)…設楽統バナナマン
第3回(2010年10月)…バカリズム
第4回(2011年1月)…小木博明おぎやはぎ
第5回(2011年6月)…バカリズム
第6回(2011年10月)…堀内健(ネプチューン)
第7回(2012年4月)…千原ジュニア
第8回(2012年11月)…秋山竜次(ロバート)
第9回(2013年5月)…堀内健(ネプチューン)
第10回(2013年11月)…有吉弘行
第11回(2014年5月)…秋山竜次(ロバート)
第12回(2014年11月)…有吉弘行
第13回(2015年5月)…博多大吉(博多華丸・大吉
第14回(2015年11月)…設楽統(バナナマン)



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