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窪田正孝「40歳になっても学生服を着る」

 エンタテインメント大作『64‐ロクヨン‐前編/後編』に出演する窪田正孝。現在公開中の『ヒーローマニア-生活-』や、まもなく公開される『MARS〜ただ、君を愛してる〜』をはじめ、映画やドラマなど幅広いジャンルの作品で多様な顔で観客を魅了している。そんな誰もが認める若き演技派俳優の原点に迫る。

芝居のおもしろさを教えてくれたという三池崇史監督についても語る窪田正孝(写真:逢坂 聡)

芝居のおもしろさを教えてくれたという三池崇史監督についても語る窪田正孝(写真:逢坂 聡)

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◆何かを伝えようと思ったら覚悟や誠意があれば言葉は二の次

――『64‐ロクヨン‐前編/後編』では主演の佐藤浩市さんをはじめ、主役級の役者陣が勢揃いしています。先輩たちのお芝居から、刺激を受けたことはありますか?
【窪田正孝】 出来上がった作品のワンカットごと、画面が切り替わるたびに、対峙する役者さんの表情がものすごく研ぎ澄まされているとか、力がこもっているとか、柔らかい表情をされるとか、いろいろなことを感じました。人の表情だけで、これだけのものを伝えられるんだと。もちろん言葉は大切ですけれども、何かを伝えようと思ったら、覚悟や誠意があれば言葉なんて二の次なのかと。

――そういう意味では、演じられた日吉も言葉ではなく涙で表現する場面の多い、難しい役どころでしたね?
【窪田正孝】 正直な話、現代パートについては、涙は要らないのではないかと思っていたんです。撮影日数がすごく短かったので、そのなかでどれだけできるかという部分もありましたが、(現代パートの)撮影の前に、現場で日吉の部屋のなかを見回したりして、自分の気持ちに整理をつける時間をいただいたんです。美術の方がすごくこだわって作ってくださった彼の部屋にあるものは、ほとんどが昭和64年の出来事にまつわるものばかりでした。事件の資料だったり、自分なりにまとめた調書だったり。現場の空気に触れることで、何とかしたいという彼の気持ちを作っていった部分がありました。部屋のなかから、カメラマンさんとかスタッフやキャストのみなさんの様子をずっと見ていたら、本番では自然に泣けたというか、なんか涙が出てきましたね。あのとき、あそこにいたのは、佐藤浩市さんではなく、三上さんでした。

――現場で生まれた涙だったのですね。
【窪田正孝】 そうですね。どうしたらいいのか、ギリギリまでわからなくて。撮るシーンはわかっているんですけど、気持ちの整理がつかなかったので、ずっと自分に「大丈夫」って唱えながらやっていました(苦笑)。

――お芝居をするなかで、そういう状況に追い込まれることはよくあるのですか?
【窪田正孝】 どうしていいかわからないときは……ありますね。いつも、どうしていいかわからないです(苦笑)。そのなかで、答えというか、答えに近いものを探していかなくてはいけない。それが監督と一致したときは、“今日の仕事ができたかな”というふうに感じる瞬間でもあります。

◆役者として自己満足で終わりたくない

――タフさを求められるお仕事ですね。日吉のように、心が折れることはありませんか?
【窪田正孝】 極力、現実を見るようにはしているつもりです。誰だって、自分が正しいことを言っているつもりだと思いますし、自分を守りたいと思うから。それぞれの正義があるなかで、この人が本当に伝えたいことは何だろう? とか、必要な情報も選びながら、現実を見て生きていくべきなのかな……と。役者としても自己満足で終わりたくないと思っていて。苦しい思いをしたから、達成感を得るというのも自己満足でしかないし。結局、作品は観てもらうことができなければ、作品にはならないですから。難しいんですけど(苦笑)。(自分の原動力って)なんでしょうね、“役に負けたくない”と思う気持ちですかね。なので、おまじないみたいに「大丈夫、大丈夫」って言い聞かせながら、一生懸命やっている感じです(笑)。

――いつ頃から、そういうスタンスでお芝居に取り組まれているのですか?
【窪田正孝】 ハタチくらいの頃に、芝居はおもしろいんだと思ってからですね。

――名作ドラマ『ケータイ捜査官7』の頃ですか?
【窪田正孝】 そうです、ありがとうございます! 芝居っておもしろいと最初に思わせてくれたのが、三池崇史監督でした。その後、映画『十三人の刺客』でまたご一緒させていただいて。若き侍(小倉庄次郎)役をやらせていただいたんですけど、侍を演じたことがなかったので、あのときも全然わからなくて(苦笑)。いざ殺陣の練習をしても、人を斬ったこともないですし。でも人を殺す感覚にならなくてはいけないと思ったりして……。『十三人の刺客』の舞台挨拶も、ここ(東京国際フォーラム)だったんですよ。今日はそれ以来の舞台挨拶なので、胸に来るものがあります……。

――窪田さんにとっては思い出深い、大切な舞台だったのですね。当時と比べて、お芝居のおもしろさは変わっていますか?
【窪田正孝】 スタンスは変わっていないですが、視野が広がったというか。あと、ほんの少しですけど、僕のことも観てもらえるようになったのかなと感じることもあります。だからこそ、どの役も、監督のもとでセリフだけじゃないものも残せる作品にしていきたいと思っています。……いまもあの頃のまま、ずっと楽しいですね。今年で28歳になりますが、生きてきて、いちばん夢中になれるものを見つけられて、それが仕事になって。形として残せるものだから、生んでくれた親に恩返しできるようなところもありますし。いまはすごく夢中です。この気持ちがいつ変わるのかわからないですけれども、一度夢中になったものは手放したくないので、追い求めていきたいです。

――いま、どんな理想の役者像を抱いていますか?
【窪田正孝】 いろいろな役をやるなかで、いろいろな形で情報が発信されて、どうしても作品のイメージがついてしまうと思うんです。そのイメージを壊していきたい、どこにも染まらない人になりたいという願望がずっとあって。あの人はこういう芝居しかしない、こういう人だろうなというふうにはなりたくないので。例えば30、40歳になっても、学生服を着るかもしれないし、狂気を抱えた役をやらせていただくことだってあるかもしれない。ひとりの人間に描けるものって限界がありますし、そこは葛藤しかないんですけれども、役に染まれる役者になりたいですね(笑)。
(文:石村加奈)

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