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ヴェールに包まれた世界 歌舞伎俳優を陰で支える“梨園の妻”の役割とは?

 女優の藤原紀香と歌舞伎役者の片岡愛之助の結婚ネタが連日世間を賑わしている。晴れて藤原も“梨園の妻”となったわけだが、梨園に入った後の妻の役割の厳しさ、難しさもよく聞くところ。だが、具体的に歌舞伎界の慣行やしきたりも、一般社会の常識とはかけ離れ、どこかヴェールに包まれている部分もある。藤原と同様に梨園の妻として芸能界から嫁いだ“先輩妻”たちの例を見ながら、その閉ざされた世界に迫ってみたい。

◆タレントから“梨園の妻”なら専業主婦に成らざるを得ない程の激務が

 現在、梨園の妻を代表する人物と言えば、文句なしに小林麻央だろう。夫は最も有名な歌舞伎役者と言ってもいい十一代目市川海老蔵。トラブルにも見舞われた夫をけなげに支え、跡取りの息子も出産し育てる姿は、まさに梨園の妻の鑑と言ってもいい。夫の海老蔵は今回の藤原の結婚に際し、梨園の妻について「家によって違いますからね。近年は奥様方が劇場に足を運ぶようになった。そういったものをどうとらえて、続けていくのか、やめるのか、考え方は違う。歌舞伎役者はしきたりや決まり事がキチンとありますが、奥様方はあるようでないので大変だと思う」と持論を披露、同時に藤原紀香は誰もが知っている女優だけに、より大変なことだろうとも語っている。

 海老蔵の妻・小林麻央は結婚後、完全に芸能界から引退したが、この“梨園の専業主婦”には六代目中村勘九郎の妻・前田愛や三代目中村橋之助の妻・三田寛子らがおり、結婚後はやはりテレビには出ず、夫と家族を支えている。つまり梨園に嫁いだ後、妻は仕事を引退し、自分のことはすべて後回しにして、常に夫・家族を優先させなければならない。そこまでする覚悟がなければ、梨園の妻はなかなか務まるものではないようだ。ましてや、歌舞伎界には多くのしきたりや慣行があり、一般の主婦には考えられないほどのハードな仕事が待っているのである。

 「梨園の妻の一番の仕事は、“跡取り”の男子を産むことなんです。歌舞伎は厳然とした家系制度。男子がなければ家系が途絶えるため、養子を取るともあります。一般社会では、ヘタすれば“モラハラ”になりかねないくらい“男子出産”へのプレッシャーは強いですね。あと、いわゆる贔屓(ひいき)筋とのつながりも重要。贔屓とは、後援会に入っていて、月に2回以上は舞台に足を運ぶような常連客のことで、年に100万円単位のお金を落としていくと言われます。それだけに丁重に扱わなければならないし、全員の名前を覚えるのは当たり前、あいさつする際には、以前に話したことをちゃんと記億してることを相手に伝わらなければならない。なおかつ違う話題で話さなければなりません。公演中はもちろん毎日舞台に足を運んで、楽屋にあいさつに来た人には必ずお礼状を送る。年賀状に至っては1万枚以上書くこともあります」(週刊誌・歌舞伎担当記者)

◆梨園の妻は、単なる“奥様”ではなく、立派な“仕事”

 梨園の妻は、確かに単なる“奥様”ではなく、立派な“仕事”のようだ。跡継ぎ問題で言えば、当時、五代目坂東八十助(故・十代目坂東三津五郎)と2年で離婚した元フジテレビアナウンサーの近藤サトは、離婚会見で「私は結婚に対して子供ができることを望んでおりました。しかし、誰かの意思によって阻まれるというのは、私にとって理解できませんでした」と語り、周囲から子作りを禁止されたことを明かしている。また、優秀な梨園の妻とされる三田寛子にしても、当初は“アイドル上がりに何ができるか”と非難がましく言われていたが、男子を立て続けに3人産んでから、周囲の態度が和らいだのだ。ちなみに、3人の子たちはそれぞれ歌舞伎役者になっている。それほど跡取りとは、継承問題も含めて歌舞伎界では重要な要素なのである。それだけに当然、家柄”や“格”の違いにも敏感なようだ。

 「歌舞伎界の上下関係は半端じゃない。徹底的に“格”を見ます。たとえば海老蔵さんは歌舞伎の舞台で年長である中村獅童さんと共演しても、タメ口は当たり前。海老蔵さん(市川家=成田屋)は格で言うとトップクラス、いわば当然なんですね。歌舞伎界には、主役の家筋と脇役の家筋があるぐらいですから。だから梨園の妻も夫と“同格”。いくら芸能界ではトップ女優でも、歌舞伎界では格上の相手には頭が上がりません。ちなみに愛之助さんは、一般の家から片岡家の養子に入った経緯もありますし、活躍の場も上方歌舞伎が中心、家系も市川家や中村家といった格はないです」(前出の記者)

 だが、梨園に嫁いだ後も芸能活動を続ける妻たちもいる。四代目坂田藤十郎の妻・扇千景は、結婚後すぐに宝塚を退団したが、翌年に芸能界に復帰。その後、政界進出をも果たし、1977年に初当選。2000年第2次森(喜朗)改造内閣では初の国土交通大臣まで務めた。息子に歌舞伎役者の五代目尾上菊之助と娘に女優・寺島しのぶを持つ富司純子も、七代目尾上菊五郎と結婚した後、女優を引退したが、2年後にワイドショーの司会者として復帰。出産育児のため一時降板したこともあったが、その後も司会者、女優として活躍している。

◆“遊びは芸の肥やし”、梨園の妻は忍耐力が必要

 歌舞伎俳優はいざ結婚となると、相手は同じ梨園関係者だったり、一般人が多いようだが、結婚前は女優やタレント、あるいは一般人との“隠し子”騒動など、いろいろと浮名を流す場合がある。また、芸能人と結婚しても不倫その他、様々な理由で離婚するケースも多々あるようだ。

 「何と言っても“遊びは芸の肥やし”という文化が根づいていますから(笑)。これまでにも歌舞伎界の隠し子騒動は数えきれないくらいあるんじゃないですか。そのあたりも、梨園の妻には忍耐が求められますね」(前出の記者)

 三代目市川猿之助(二代目市川猿翁)と結婚した女優の浜木綿子は、息子に俳優の香川照之が生まれたが、夫の不倫が原因で離婚。以後、香川は浜に育てられ、歌舞伎界から遠のいていたものの、2012年、長男と一緒に歌舞伎界へ戻るなど(香川は市川中車を襲名)、まさに波乱万丈。その際、香川は従弟であり10歳年下の市川亀治郎に、「厳しいスタートでしょうね。僕がテレビに出て感じるのと同じドキドキを感じてほしい」と辛口のエールをもらうも、香川はひたすら頭を下げていた。また、長男(市川團子)を歌舞伎界の重鎮から「駄馬」と酷評されても香川は文句も言えず、妻も舞台に顔を見せなくなってしまったとの記事が、女性誌で報じられたこともある。こうしてみるとやはり世界に誇る日本の伝統芸能である歌舞伎は、言ってみれば彼女ら“梨園の妻”たちによって支えられているということだけは、間違いないようである。



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