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鈴木おさむ、“自身をさらす”クリエイティブの原体験は明石家さんま

 “父勉”のため放送作家業を休業中の鈴木おさむ氏が脚本・演出を手がけるふたり芝居『美幸-アンコンディショナルラブ-』は、鈴木の妻・大島美幸が学生時代に受けたいじめ経験をもとにしている。過去の心の傷となった実体験のほか、結婚、出産、子育てまで、常に自身のプライベートをさらけだしてエンタテインメントに昇華している鈴木氏は、ネットではときに辛辣な言葉を浴びせられることもある。それでもブレることのない鈴木氏の信念とクリエイティブの源に迫った。

◆私生活で起こったことすべてを作品に変えていきたい

――この作品は奥様が過去にいじめられた話がもとになっていますが、それを含めて鈴木さんは自身の私生活をさらしてエンタテインメントにしていますよね。
【鈴木】 僕は自分のなかに流れている物しか作れないんです。『芸人交換日記』では、周りにたくさんいた売れていない芸人さんから聞いた話が元ネタでした。そういったものをエンタテインメントにできないかと常に思っていて。私生活をお金に変える事に否定的な人もいますけど、僕は私生活で起こったこともすべて作品に変えていきたいんです。

――たとえそれが心の傷であっても。
【鈴木】 以前、キッチンにいた奥さんに呼ばれたことがあって、ボケとしておもしろいと思ってその声を無視したんですね。そうしたら奥さんが号泣して「お願いだからそれはやめて欲しい」と。彼女は過去に無視された経験があって、そのときの僕の態度が彼女のトラウマを思い起こさせてしまった。そういった経験が、その人の人生にどれだけの影響を及ぼしているかということを考えました。だから奥さんや自分が傷ついたりするとそれをテーマに物語を作りたくなるし、そういう傷を作品にすることで成就してあげるのが一番いいんじゃないかなと思っているんです。

――傷を作品にするということは、同じ傷をもつ人々の共感を得る一方で、ご自身の傷を深くしてしまうのではないかと思っていましたが、“成就させる”という考え方に驚きました。
【鈴木】 自分の悲しみを作品にする人って、それを商売にしたいのではなくて、出すことによってその傷や想いを切り離すという感覚なんじゃないかな。それで乗り越えられるというか。奥さんは二度流産しているんですけど、一度目のときは彼女がエッセイに明るく書いた事で乗り越えた。でも二度目は公表しなかった。その後、自分たちの悲しい気持ちを何かにぶつけたくて、『生まれる。』という高年齢出産のドラマの脚本を書いたこともありました。

――同じ思いをした人たちの悲しみも、作品を通して共有することで癒えるかもしれませんね。
【鈴木】 そうなんです。今回の舞台では美幸が会社の上司に復讐するんですけど、パソコンを使うシーンがあります。上司のキーボードのCaps Lock Keyをコッソリ押して嫌がらせするとかね(笑)。実は、僕のブログで実際に会社でやった上司への復讐を募集したら、たくさんコメントがきたんですよ。パソコンを使ったものもあれば、コーヒーに唾より酷いものを入れていたり……(苦笑)。そういう部分でも誰かの血液が作品に入っていきますし、すごくリアルになっています。

――子育てに関しても多くのコメントが鈴木さんのブログに寄せられていますよね。
【鈴木】 ネットには情報がありすぎるので、僕のブログが子育てに関するまとめサイトのようなものになったらいいなと思っていて。自分がそのとき話したいことを書きつつ、みんなのコミュニケーションの場になれば嬉しいです。

◆離婚をあそこまでおもしろくした芸人さんは他にいない

――プライベートも公開して辛いことも笑いに変えてしまう鈴木さんの強さの源は何ですか?
【鈴木】 しんどいこともたくさんありますけど、何かを作って多くの人に見てもらえるという、エンタテインメントに関わる仕事に就けたことは幸せなことだと思っています。それに対しての恩返しというか、こういう世界に入った覚悟というか、ここにちゃんと骨を埋めたいなと。例えば、芸能人って自分の子どもの顔を隠すじゃないですか。だけどうちの場合は妊活すると言って仕事を休ませてもらったり、僕も父勉させてもらっています。そんなふうに多くの方に応援してもらっているならば、子どもの名前も発表するべきだし顔も出すべきだと思っていて。もちろん叩かれることもありますけど、それに怯えていたら何もできないしおもしろいチャンスも掴めなくなる。

――そんなパワーの原体験になることはあったのですか?
【鈴木】 僕が高校生の頃、明石家さんまさんが結婚してからおもしろくなくなったと感じていた時期があったんです。ところが離婚した瞬間にそれを笑いに変えて発信していて驚きました。離婚をあそこまでおもしろくした芸人さんはさんまさん以外にいなかった。離婚が気まずい感じではなくメディアに取り上げられて、それが笑いになっているなんて、子どもながらに“すげえな!”と(笑)。今の僕の姿勢につながる原体験はさんまさんかもしれません(笑)。

――今は“父勉”中ですが、この間に発見したことやご自身が変わったことは?
【鈴木】 子どもを抱いてテレビを観ていると、世の中のリズムもわかるし、いままでとはニュースの見方すら変わりました。とくに子どもが殺された事件とかは、他人事だったことが自分事になった。今回の脚本を読んでも、もしうちの子どもがいじめられたら、いじめる側になったらどうしようとか思いますし、ふだんの生活のなかで感じ方や見方が変わった部分がたくさんあります。

――今後やりたいことも増えました?
【鈴木】 子どもに自分の背中をどうやって見せたらいいのかを考えるようになりました。本当はやりたくないのにやっている仕事ってたくさんありますよね。それはそれでいいけど、もうちょっと白黒つけたものをやりたいなとか。子どもが0歳のときにこれだけハードな作品と向き合うことができたので、今後ももっともっとハードにやっていきたいです。

――私生活も変わりましたか?
【鈴木】 いま毎日食事を作っているんですが、朝はしんどいけど舞台の稽古中も本番中もできるかぎり作り続けたいと思っていて。こういう舞台を作りながら、ちゃんと父親としての務めもしっかりやっていけたらと思っています。生きているからには、そこで生まれたすべてをエンタテインメントに変えていきたいです。
(文:奥村百恵)



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