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マンガ実写化の新潮流 連載と同時進行してラストを迎えるメディアミックス

 春にかけて公開される邦画には、相変わらずマンガ原作ものが多い。『珍遊記』(公開中)『ちはやふる<上の句>』『僕だけがいない街』(3月19日公開)『暗殺教室〜卒業編〜』(3月25日公開)『アイアムヒーロー』(4月23日公開)など、原作人気が高い話題作が目白押しだ。こうした作品では原作ファンの賛否が分かれるのも常だが、ここ最近では実写化に当たって、原作の後追いでも改変でもなく、物語を連動させながら並行して公開する新たなメディアミックスが試みられている。

◆人気マンガの実写化で生じるジレンマ

 人気マンガの映画化が多い大きな理由は、原作ファンが足を運んでくれるのを見込んでのもの。その一方、原作ファンほど映画化への評価が厳しいというジレンマも生まれている。その辛口評価のひとつは、キャラクターと演じる俳優のイメージのギャップに向けられるが、もうひとつ大きいのはストーリーやエンディング。原作に忠実な実写化を図っても、単行本10数巻に渡る物語を、映画で2部に分けたとしても計4時間ほどですべて描くのは難しい。いくつかのエピソードを省くのはやむをえないが、原作ファンが観れば、お気に入りの名場面がないともの足りなく感じるであろうし、登場するキャラクターの人物像がしっかりと描ききれていなければ不満も残るだろう。

 また、原作が連載中の場合は映画独自の結末が用意されるが、これも原作ファンには消化不良になりがち。昨年、前後編で公開された実写『進撃の巨人』は一部人気キャラクターが登場しなかったうえ、映画オリジナルキャラクターが大きく関与した結末に。それだけが要因ではないが、興収は前編の32.5億円に対して後編は16.8億円。原作は発行部数が累計5000万部を越えるメガヒットにも関わらず、興収予想を大きく下回った。

 そんななかで、原作の連載終了に合わせて映画版を公開する流れが生まれ始めた。昨年12月公開の『orange』は、高野苺氏による原作が『月刊アクション』連載中の4月に映画化を告知。7月にはメインキャストが土屋太鳳に山崎賢人と発表された。そして、原作は8月25日発売号で最終回を迎える。映画はその結末を踏まえて3ヶ月半でスピード撮影。単行本最終巻の11月発売を経て、年末の映画公開に至った。

 作品そのものの良さがあるのはもちろんだが、そんな展開の相乗効果での盛り上がりもあり、映画は興収20億円を越え、ロングランでヒットを続けた。物語の結末も原作通りで、原作終了の余韻が残るなか、その空気感が生かされた実写化となり、原作ファンからおおむね好評を得た。土屋と山崎の好演も含め、原作と映画版の良い形でのシンクロが実践された。

◆マンガ、アニメ、映画の物語がリンクした結末へ?

 『暗殺教室』では、メディアミックスがさらに進んでいる。松井優征氏による原作は『少年ジャンプ』連載中で、昨年3月に最初の映画化。その映画ラストに生徒の茅野カエデの頭から触手が伸びる描写があり、同時期の連載ではカエデと殺せんせーが戦う展開になっていて、映画から原作へと関心をフィードバックさせた。

 映画は興収27億円を越えるヒットとなり、続編『暗殺教室〜卒業編〜』の製作も早々に決定。昨年12月に3月公開と発表され、今年1月からテレビアニメ2期『暗殺教室 SECOND SEASON』(フジテレビ系)もスタート。そして、原作は『少年ジャンプ』2月22日発売号で「ラストまであと5回」とカウントダウンを告知。映画公開と同じタイミングとなる、3月発売の同16号で約4年続いてきた連載が最終回を迎える。アニメの最終回も同時期だ。リアルな卒業シーズンでもあって盛り上がりそうだが、映画、アニメ、マンガとそれぞれのメディアで物語が同時進行しているその結末も、前作の流れからはすべてがリンクした内容になることが予想される。

 同じく、三部けい氏の原作が『ヤングエース』で連載中、アニメ版がフジテレビ系で放送中の『僕だけがいない街』の映画版は3月19日公開。こちらも公開タイミングにあわせるように、3月にマンガ、アニメともに終了する。アニメ版は主人公役の声優に土屋太鳳と満島真之介を配したことでも話題になっが、映画版では主人公を藤原竜也が演じる。例によってイメージに賛否はあっても、逆に実力派の藤原の存在感を活かした実写ならではの見せ方もある。こちらもマンガ、アニメ、映画の結末については明らかにされていないが、なんらかのリンクした展開が予想される。ラストがそれぞれ違っていたとしても、連載終了から時間が経って評価の定まった名作ものと違い、メディアごとの比較もしながら楽しめそうだ。

 実写化作品でも原作ファンだけが観るわけではなく、すべての観客を納得させるのは至難の業。ただ原作をなぞればいいのでもなく、離れすぎても反感を買い、さまざまな試行錯誤が繰り返されてきた。メディアミックスにしても、単に複数メディアで展開するだけでは、露出を増やした宣伝に留まる。

 タイミング的にも原作の終了というクライマックスに合わせ、世界観の共有または拡散と内容もリンクさせた公開は、原作ファンにも納得感と新鮮さを同時に味わってもらうことにつながる。実写化につきものの課題を解消する新たな形態として注目される。
(文:斉藤貴志)



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