今年5月に大腸がんのため亡くなった俳優・演出家の今井雅之さん（享年54歳）のお別れ会が16日、都内でしめやかに営まれた。今井さんと公私ともに親交の深い俳優の千葉真一が弔辞を読み上げた。千葉は静かに「今井くん、残念だよ…残念無念」と声を絞り出し、今井さんの遺影に語りかけた。

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　今井さんと千葉の出会いは、今井さんのライフワークとして脚本・演出を務める舞台『THE WINDS OF GOD』だった。「あなたの舞台に感動して初対面の君にアポもとらずに楽屋に飛び込んだ。僕が思いを一方的にまくしたてた。覚えているかい？」と当時を振り返った。

　その後、何度も酒を酌み交わしながら日本映画界について激論を講じてきたという。「日本の映画はこれでいいか、俳優はどうすべきか。俺たち二人ではどうにもならない。日本の映画の壁にぶち当たって、君は悔し涙を流しながら酒を煽っていた。あの時の今井雅之くん。俺は大好きだった。そんなことを心底語れる仲間は今井くん、君だけだったよ」と天を仰いだ。

　映画づくりを「カブトムシ捕りと一緒だ」と例えていた今井さんに、千葉は「カブトムシを捕まえる、『そんな遊びの延長を千葉先輩とやっていきたい』と君はいつもいってくれた。君と一緒にいると心を弾ませてもらい素晴らしい撮影に臨めた。素晴らしい役者、演出家だった」と在りし日の姿に思いを馳せた。

　「できたら、ハリウッドで一度でいいから共演したかったね。まだまだ君とカブトムシを追いかけていたかった。今井くん、ありがとう。僕をここまで成長させてくれて本当にありがとう。ご冥福を祈る。心から。早すぎたよ」と悔しさもにじませながら、感謝を込めていた。

　また、1986年に今井さんの演劇デビュー作となった舞台『MONKEY』の演出を手がけたキャスティングディレクター奈良橋陽子氏は「お別れでも、お別れではない。雅之が書いたもの、演出したものは生き残ります。雅之の魂はみんなの中に生き残ります」と訴え、英語で「I Love you…thank you」と涙声で寂しさをあらわにしていた。

　この日は梅沢富美男、金山一彦、橋本マナミ、池谷幸雄・直樹兄弟、大和田伸也、カラテカの入江慎也、なだぎ武、酒井法子、マイケル富岡、麻丘めぐみ、スピードワゴンの井戸田潤、岩城滉一、アグネス・チャン、竹内力、宮川大輔、渡辺裕之、陣内智則、SMAPの中居正広（順不同）ら多くの著名人が参列。

　1961年4月21日生まれ、兵庫県出身の今井さんは、一度は自衛隊の道に進んだものの家族の反対を押し切って退職。1986年の奈良橋陽子氏演出の舞台『MONKEY』で役者デビューした。1996年には映画『静かな生活』で日本アカデミー賞助演男優賞を受賞自身が脚本・演出を手がけた舞台『THE WINDS OF GOD』がブロードウェイでも上演されるなど、演出家としても活躍した。男気あふれる人柄で多くの人から支持を得ていたが、昨年11月に体調不良を訴え7ヶ月間の闘病生活の末、惜しまれながらも5月28日に永眠した。