テレビをつけた感覚を意識した新「dTV」

 アメリカ最大の動画配信サービスNetflixの日本上陸の噂や、日本テレビによるHuluの買収など、映像配信市場で大きな話題が続く。なかでもdビデオのリニューアルは、500万人が上限とも言われるサービス規模を一気に広げる試みとして、注目が集まっている。

■より広くリーチすることを目指し生活習慣を変えない提案に

 NTTドコモとエイベックス通信放送が4月22日より「d ビデオ powered by BeeTV」のブランドを「dTV」に変更し、インターフェイスなどを刷新する大幅なリニューアルを行った。また、それと同時に、テレビで簡単に「dTV」を視聴できる専用アダプター「dTV ターミナル」も発売。同機器は当初の予想を大きく上回る売れ行きだという。

 今回のリニューアルのポイントは大きく分けて3点。(1)アプリを立ち上げるとすぐに動画(予告編)が始まり、テレビのチャンネルを変えるように簡単にザッピングができる新UI、(2)テレビでも観やすくするdTVターミナルの発売、そして、(3)プレミアムコンテンツの拡充だ。

 ブランド名称の変更および、大幅リニューアルの狙いについて、エイベックス通信放送取締役の村本理恵子氏は「SVOD サービスの“ミカタ”を変える」と語る。「モバイル向けに展開していたBeeTVでは会員数200万人を超えられなかった。そこで、NTTドコモさんとの連携をより強めるかたちでdビデオをスタートさせました。ただ、これも500万人が上限かな、と感じていました。一方で、機能面は急速に進化しており、やりたくでもできなかったサービスが追加できる環境になっていた。そこでサービスを一歩前進させるために、リニューアルを決めました」(村本氏)

 リニューアルを前に、配信サービスに限らず、動画に対してお金を払うユーザーを改めて徹底的に調べ上げた。その結果、実に6割を超えるユーザーが、タイトルを元に作品を視聴していないことがわかった。

「そこで、“ザッピングUI”と呼ぶ、新UIではテレビをつけた感覚を意識しました」(エイベックス通信放送サービス推進部部長 山下智正氏)

 特に「dTV ターミナル」を利用して視聴するとよくわかるが、ほぼテレビと変わらない感覚で、ザッピングすることができる。さらに、ジャンルごとにチャンネル分けされており、各チャンネルでピックアップされる作品は、1時間ごとに変わる時間編成型(タイムライン型)となる。立ち上げるたびに新しい動画が始まる点も非常にテレビ的と言える。

「当初は、モバイル向けに15分ほどのオリジナルコンテンツを配信することで、新しい視聴習慣を提案しました。もちろん、それを楽しんでくださった方も多くいらっしゃいましたが、次のフェーズに行くためには、生活習慣を変えない提案も必要だと考えました。そこで、日本人が長く映像に親しんできた環境に近づけるため、サービスの軸を“テレビ”へとシフトさせました」(村本氏)

 とはいえ、以前のように1つの画面内に複数の作品のサムネイルを並べるやり方ならば、選択肢を提供できたが、1作品ずつ動画を表示させる新UIでは、つけた時に“面白そう”と思ってもらえなかったら、たとえスキップできたとしても、そう長くは滞在してもらえず、視聴をやめてしまうだろう。そこでポイントとなるのが、レコメンドエンジンだ。1作品につき1000を超えるメタデータを作成し、さらに視聴履歴や時間などを組み合わせ、レコメンド機能を強化したという。

 村本氏は「レコメンド機能は、視聴時間が増えるほどに精度が上がってきますが、わざと変化球も投げる設定にしています。嗜好性が見えてきたからこそ、それを少し外してみる、こんなことからも新しい出会いや気づきを提供します」と語る。

 dTVの試みは、“何万本という作品がずらりと並び、好みの作品を選んで観ることができる”というVODの利点からすると、まったく発想を変えたものとも言える。「ミカタを変える」というキャッチコピーとともに実施された今回のリニューアルは、“日本向けの”SVODサービスの方向性を示すものにもなりそうだ。

(ORIGINAL CONFIDENCE 15年6月1日号掲載)



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  • 「サービスの軸を“テレビ”へとシフトさせた」(エイベックス通信放送取締役/村本理恵子氏)、「テレビをつけた感覚を意識した“ザッピングUI”に」(エイベックス通信放送サービス推進部部長/山下智正氏)
  • 「映像コンテンツを視聴する際の作品タイトルに対する意識」(データ)
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