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“ドン”が明かす吉本興業の功罪とは!?

  数多くの天才芸人を輩出し、巨大な“お笑い帝国”を築き上げた吉本興業。その頂点に君臨するのが吉野伊佐男会長だ。ORICON STYLEでは、半世紀に渡り吉本のために尽力してきた吉野会長にインタビューを敢行。数々の成功、そして多くの失敗を重ねながら今に至った同社の“功罪”について明かしてくれた。

吉本50年の“功罪”を語る吉野伊佐男会長

吉本50年の“功罪”を語る吉野伊佐男会長

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■実はエリートではなかった!?

 1960年代中ごろ、大学在学中にアルバイトとして吉本に入った吉野氏。当時は所属芸人も少なく、人気の面でもライバルである松竹芸能に大きく水をあけられていた。当然、経営状況も厳しく、いつ潰れてもおかしくない状況だったという。「自分としては“山あり谷あり”って感じではないんですけどね。当時はガムシャラだったので自分の現状を客観的に見れなかったですから。まぁ、人知れず枕を濡らしたこともありましたけど(笑)」と振り返る吉野氏。

 65年に正式に同社に入社するも、当初は経理や総務など地味な仕事につき、鬱屈した日々を送っていたという。「若い頃は『どうして僕にお金儲けさせてくれへんねや!』っていう憤りもありましたよ。ただ……転職する度胸がなかったんでしょうね〜(笑)」と笑い飛ばす。

■テレビの出現は吉本にとって“産業革命”だった

 経理や総務を皮切りに、マネージャーやCM営業など、本人いわく“何でも屋”としてまい進した結果、会社を客観的に見る事が出来たという吉野氏。そんな吉野氏の目から見て、吉本興業の最大の転機とはどの場面だったのだろうか?「やはり、テレビの存在が大きいですね。非常に苦しい状況が続いていた中、テレビという新たなメディアが普及してきまして。テレビというのは、吉本にとっては“産業革命”と言っても過言ではない重要な媒体だと思います」(吉野氏)。

 当時、テレビという新しいメディアに積極的に露出してゆき、瞬く間にお茶の間に“吉本芸人”を浸透させていった同社。「現在の文枝師匠、桂三枝さんや笑福亭仁鶴さんがテレビというメディアで貢献して下さったことが大きかったですね。特に『ヤングおー!おー!』(1969年〜82年 毎日放送制作)は、我々の“意識”という部分でも革命をもたらしてくれた番組だと思います。それは他の芸人さんがテレビというメディアの重要性に気付いた瞬間だったし、新たな若い才能が吉本の門を叩いてくれるきっかけにもなったと思います」(吉野氏)。

■天下を取った芸人の共通項は…

 テレビという最大のメディアを駆使し、瞬く間にお笑い系事務所のトップに躍り出た吉本興業。様々な芸人が所属し、NSC(吉本総合芸能学院)を開校させたさせたことにより、ダウンタウンやナインティナインなど、新たな才能の芽を育んできた。同社と言えば、芸人の数に比べマネージャーの数が圧倒的に少ないことは有名。自ずと芸人自身が自己マネジメント力を高めていかなければ、たちまち脱落してしまう。吉野会長は「生きていくための知恵ですよね(笑)。皆、自分自身で考えて、苦労して這い上がって売れたワケですから。会社がプッシュしても、本人が努力しない限り絶対に生き残ることが出来ないのが芸人の世界ですから」と断言する。

 また、天下を取った芸人の共通項についても「やはり確固たるポリシー、考え方をしっかりと若い頃から構築していった者だけが頂点を極めることが出来ると思うんです。それは文枝師匠や仁鶴師匠、さんまさん、ダウンタウンなど、頂点を極めた芸人すべてに共通することだと思います。『自分はこの土壌で勝負する』という“目”ですよね」と力説する。

 芸人、社員問わず、優秀な人材が集まる“場”となった現在の同社の成長に目を細める吉野氏。だかその裏では、数多くの失敗もあった。「失敗なんて山ほどありますよ。吉本の人間は逃げ足が速いって言われているんです、失敗したらすぐに撤退するから」と笑う吉野氏。そんな数多くの失敗やスキャンダルの、尻拭いの殿(しんがり)を務めてきたのは吉野氏だったのでは?「いやいや、そんなこともないですけどね(笑)。まぁ、失敗が次の成功に結び付くような流れに持っていくというね。もちろん反省も大事です(笑)」。

■今の若手芸人は“テレビサイズ”に慣れ過ぎてしまった

 入社当時は指で数えられるくらいの芸人しか所属していなかった同社だったが、現在では400組とも500組とも言われる程、数多くの芸人が所属する大所帯に成長。吉野氏は近年の若手芸人についてどのような思いを抱いているのだろうか?

 「そうですね……特に舞台に立つ芸人を見ていると、どうしてもテレビの寸法で劇場に立ってしまうことが多いですね。つまり5、6分で間が持たなくなってしまうんです。吉本は確かにテレビというメディアでここまで成長出来ましたが、やはり基本は舞台なんです。そこは疎かにしてはいけないと思いますね」と苦言を呈する。視聴者の時代からテレビサイズに慣れ親しんでしまったが所以の現象なのだという。「そこは吉本の功罪ですよ。舞台、テレビ、どんな場面でも笑いを取るのが芸人の務めだと思いますから。そういった、どこでも対応できる若手がどんどん出てきてほしいですね!」(吉野氏)。

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