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『1万枚売らなければ即解雇』、よしもと若手芸人たちの過酷な現状とは!?

 よしもとに所属する中堅お笑いトリオ・グランジが、昨年発売したDVDを半年間(5月12日)で1万枚売れなければ事務所を解雇されることが話題になっている。単独ライブを開催できる固定ファンを持ち、『キングオブコント』では6年連続で準決勝までコマを進めるほどの実力を持つ彼らが、“ネタ”ではなくリアルに解雇を突きつけられる事態に、よしもと若手芸人たちを取り巻く現状が見えてくる。

1万枚売れなければ事務所を解雇されることが話題になっているグランジ

1万枚売れなければ事務所を解雇されることが話題になっているグランジ

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 グランジは五明拓弥、遠山大輔、佐藤大の3人で2005年に結成。主にコントをメインに活動し、その洗練されたネタは結成当初から評価が高い。2008年から出場した『キングオブコント』では6年連続で準決勝、またピンとしても佐藤大が『博士と助手〜細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』で優勝するなど、あと一歩のところでブレイクを逃してきたトリオだ。

 そんな彼らは、昨年11月に初の単独DVD『グランジ BEST NETA LIVE』を発売。その際、マネージャーから提示されたのは半年間で1万枚を売らなければ事務所を解雇されるというものだった。当初は当人たちを含めファンもメディアも“ネタ”だと軽く見ていたが、1万枚売らなければ解雇されるということは偽りのない事実だった。

 この事態に、当初はメンバーも困惑の色を隠せなかった。五明拓弥は「ただひたすらショックでしたね。ただDVDには僕らの8年間がぎっしり詰まっている自信作だったので。これを最後にしたくない!という気持ちが強くなりましたね」と語る。事務所に対しては不思議と恨みはないようで、遠山大輔は「僕の今までの人生で解雇されたことがないのでビックリはしましたけど、会社に対して文句はないです。皮肉を込めて『ありがとう』という気持ちですね」と胸中を明かす。実力者として認知されていた彼らでさえ、芸人廃業の危機に直面するという厳しい現実を思い知らされてしまう。

■「芸人を“手段”ではなく“目的”に」ダイノジ大谷が示す若手芸人の生き残る術

 よしもとといえば、明石家さんま、ダウンタウンらを筆頭に、東西の多くの人気芸人を輩出してきたお笑い界・演芸界の名門。他のお笑い系事務所と比較して圧倒的なアドバンテージを誇るのが常設劇場の数だ。大阪のなんばグランド花月や5upよしもと、東京のルミネtheよしもと、ヨシモト∞ホールなど全国に計9の劇場を持ち、所属芸人たちが多数出演。仮にテレビ出演が少ない芸人も劇場出演料と地方の営業などがあれば、“食いっぱぐれ”がないということは他事務所の若手芸人から羨望の眼差しが向けられていた。

 だが現在では劇場数が一時に比べ減り、それに反して所属芸人の数は減ることはなく、依然として数百組の芸人が所属。かつてのようにギリギリながらも芸人1本で生活していける若手が減っているのが現状だ。

 グランジと同じくよしもとに所属するお笑いコンビ・ダイノジの大谷ノブ彦は、ネット配信番組「よしログ」で今回の“1万枚売れなければ解雇”報道を受けて興味深い発言をしている。大谷は「こんだけ芸人が増えてくると、全員が劇場に出れるんですか?という部分で問題になってくる。ぶっちゃけ僕の計算では、中川家さんまでで終わりだと思うんですよ」と、やはり劇場数と芸人数の比率が合わなくなっていることについて言及。

 ダイノジといえば、芸人としての力量もさることながら、自ら音楽イベントの主催やDJ活動など、芸人以外の仕事でも副収入を得ている。ダイノジ大谷は、お笑いの仕事だけで食べていける才能があり、かつ、その環境があるなら構わない。だが、そうでない芸人はソフトコンテンツを見つけて武器にしたらどうか? と提言する。「俺はそれで全然いいと思う、それやりながら芸人を続けていく、芸人を続けることを目的にして。あの〜、漫才を金儲けの手段にするんじゃなくて、漫才を目的にしちゃう」(ダイノジ大谷)。

 多くの芸人たちは、お笑いで天下を取りビッグマネーを掴みたいという大志を抱き業界に飛び込んでくる。だが、現在のお笑い界を取り巻く環境では、大谷の言うように、“芸人を続けること”を手段ではなく目的に変換していかなければ生き残ることは難しいのかもしれない。ダイノジ大谷が示す若手芸人の生き残る術についてグランジ佐藤大も「僕はやっぱり面白い奴が上に行けるんだ! という気持ちでやってきたし、今後もそういう気持ちでいきたい。でも、大谷さんの言っていることも凄くよく分かりますね……」と複雑な心境を吐露する。


■「1万枚売れなければ即解雇」をいかに物語化するか?

 現在(1月29日付け)までに、『グランジ BEST NETA LIVE』は総売上げ8721枚とかなりの健闘を見せている。だが、『すべらない話』や『アメトーーク!』などのヒットコンテンツを別にして、近年、単体の芸人によるDVD作品で1万枚を超えた作品は、COWCOWの「あたりまえ体操」と鉄拳の「パラパラ漫画作品集」の2作品のみ。1万枚という数字が、いかに高いハードルなのかがわかるだろう。
 
 5月13日の結果発表までに、果たしてグランジはこの試練をどのように物語化していくのだろう。彼らのコントの実力は申し分ないし、このまま続けていれば、もしかしたら『キングオブコント』をきっかけにブレイクする可能性もあったかもしれない。後年振り返って、解雇を賭けたことが彼らにとって利益に成り得たか否かは、いかにこの逆境を“物語化”していくかにかかっているような気がする。

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  • 1万枚売れなければ事務所を解雇されることが話題になっているグランジ
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