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【地下アイドル連載:最終回】地下現場に通うヲタの気持ち

 史上最大、最高の片思いをし続ける日々。それがヲタの日常。

 大きな事務所の後ろ盾もコネもない地下アイドルの子たちにとって何が成功で何が失敗なのか。難しいところだが、地下に通う住人たちにとっては売れることが成功とは思っていない。と、感じる。変な話、AKB48やももクロのようにはならない、なれないという(決して諦めとは違う)のを肌でわかっているところがある。

地下アイドル

地下アイドル

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ゴールなんかわからない。知らない
あの子のようになりたいと推しの子がいう
きっとなれるよ、と言葉をかける。それ以上もそれ以下もない

 それでもヲタは通い続ける。なぜそんな、ともすれば不毛といわれるようなことをしているのか。

 おそらく接触などの距離の近さも当然あるとは思うが、もっとそれとは別の……家族に近い感情というか、応援する――そこに居るのが当たり前になることでの情の深さ……うーん、上手く書けない。自分もリアルタイムで月に20本以上通っているのはなぜなのか、ハッキリとした理由が見つけられていない。推しのアイドルはもちろん、一緒に応援しているヲタ仲間との絆、運営と二人三脚でイベントを作り上げる感覚。その行為自体が学生時代に経験した、文化祭の期間を過ごしている感じに近いかもしれない。

 日々ともに過ごしながら、お客さんが集まる大きなイベントを迎えるときには、演者側の気持ちになってなんとかひとりでも多くの人の目に止まるように声を上げる。前を空けて観やすくしてあげる。これは文化祭の裏方に近いか。

 終わるとまた準備期間。都度集まり、握手をしたりチェキを撮ったり日々を楽しく過ごす。でも別に、何かをなし得ようと思っているわけではなく、ただ日常のひとつとして取り込んで生きているというべきか。

特別なんだけど、特別じゃなくそこに寄り添っている感覚。

 あるとき、友人から毎日同じものを観て何が楽しいの? といわれることがあった。何をいってるのかさっぱりわからなかった。

髪型が昼と夜で違ってたら楽しいな
新曲、新衣装のお披露目はいつだって期待と不安に溢れてる
名前を呼ばれる時にちょっとだけトーンが違ってたらドキッとする
誕生日を祝ったら泣いて喜んでくれた
明日もまた来てくれる? っていわれたらとっても嬉しい

 これって普通の感覚でしょう? こういう当たり前のこと、少しの変化、機微に気がつけることって、大人になるにつれ無くなっていく。相手は思春期・青春期真っただなか。その期間を一緒に過ごせること。感覚を教えてもらえること。一度しか経験できないはずのあの青春時代をまた過ごさせてもらっているなんて、こんな貴重で有意義な時間がほかにあるのだろうか。

……でもこれは、ヲタの一方的な感情移入。

お金や時間をいくら使ったってどうにもならないことなんて知っている
いつか彼女たちは大人になりアイドルじゃなくなることも知っている
確実に自分じゃない誰かと恋に落ち、結婚することも知っている

 それでもヲタたちは髪を振り乱して日常じゃ絶対出せない声で叫び、好きだと告白し続ける。

史上最高最大の片思い
あなたはそこまで、他人に対して捧げたことがありますか?

 私は知っている、ヲタって生き物は他人のために有形無形様々なものを惜しみなく差し出せる人たち。とてつもなくバカで優しい人たち。

 すごく美しいお話として書いてしまったが、そう思ってしまったのだから仕方がない。見せかけでもなんでもない。行動をみれば本当だってわかる。

 と、結びの言葉を書いたところで私も現場に行く時間。この青春が、この幸福なときがいつまでも終わりませんように……(連載は終わりますけど)。(文:シーウィード高科)

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