昨年の『R-1ぐらんぷり2010』（フジテレビ系）で悲願の初優勝を遂げたピン芸人・あべこうじ。あまり知られていないが“前職”はコンビ、その前は役者の道を志していた。そして今年、ピン芸人転向から10年目を迎え、次なるステージも脳裏をよぎる。「R-1の優勝で1つ“漫談”という武器をもらったんで、もう少し違うところに出て」とムクムクとわきあがる欲望。あべこうじ、10年目の挑戦は「今まで抑えていた」ものを解き放つという。

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　ウザい漫談家のイメージが強いあべだが、もともとのスタートラインは役者だった。やがてお笑いコンビ・カンヴァスを結成するも2001年に解散、ピン芸人として再スタートを切った。マイク1本と巧みな話術で勝負する“漫談”を主としたスタイルで頭角を現すと、R-1史上最多決勝進出を経て昨年、6度目の正直で優勝を果たした。大粒の涙を流して大仕事を終えると、以前から感じていた「違う舞台でも活躍したい」という意欲が明確になった。

　10年の節目に立ち、一つの結果も残したいま「芸人ですけど、もともとこういう事がしたかった」という思いが抑えられなくなった。「漫談始めてからは、役者をやっていたこととかをあんまり表に出さないようにしていたんです。歌でも映像のお仕事でもお笑いでも、今後はいろいろなことが出来たらいいな」と“HAPPYライフ”を提言する彼のエンターテイナーとしての夢はふくらむ。

　「休みが嫌い」で、仕事は毎日でもやりたい性格。創作意欲にあふれ、最近ブームとなりつつある芸人による映画監督業も視野にある。「脚本の才能は全くゼロですけど、映画を録ってみたいなと」。実際、舞台の演出を吉本内で経験し「あの人こういう事したら面白いのにとか、これしなよとか。いろいろ考えたりするのも好きなんですよね」と作り手にまわる楽しみも覚えた。

　新しい挑戦へののろしを上げるかのように、この上半期はナレーション業、ドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』（テレビ東京系）や『ハムレット』で本格的な舞台初出演など、役者としても活躍。「外の人たちとやる機会はあまりなかったんで今回はめちゃめちゃいい経験になりましたね」と新境地での手ごたえを嬉しそうに語る姿は、今後の活躍を約束しているかのようで頼もしい。

　アニバーサリーイヤーも後半戦に突入すると、「戦場というより、ホームタウンのような存在」という単独ライブ『HAPPY SCREAM 〜あなたの声は大切な人へ届いていますか？〜』（8月6日　東京・品川よしもとプリンスシアター）が控えている。R-1で優勝した昨年こそ“やってやる”という使命感に駆られていたというが、今回は「力を入れずに」リラックスした表情で臨む。念願のタイトル奪取で“解き放たれた”あべが能\力を発揮した時、どんな新しい魅力が花咲くのか今後の活躍が楽しみだ。

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