岡山県井原市に「嫁いらず観音院」という名の寺院があること、ご存知ですか?「嫁いらず」ということは、独身者の楽園なのでは?ついついそう思ってしまうあなた!その名前には実は有り難いいわれがあるのです。果たして、「嫁いらず」には、いったいどういう意味がこめられているのでしょうか?今回は巨大な観音像が出迎えてくれる「嫁いらず観音院」と、その名の由来をご紹介しましょう。
岡山県井原市にある「嫁いらず観音院」
「嫁いらず観音院(よめいらずかんのんいん)」は、岡山県井原市大江町にある寺院。正式な名称は「樋の尻山嫁いらず観音院」で、嫁いらず観音院が「樋の尻山」に位置していることを示しています。現在は瀬戸内三十三観音霊場の第21番札所にもなっています。
寺伝によると、創建は737年(天平9)。行基によって開かれ、行基自作の十一面観音を本尊としています。
一度聞いたら決して忘れない独特な「嫁いらず観音院」の名の由来は、「のちの世を思えばまいる嫁いらずいだかせたまえなむ観世音」と刻まれた写真の石碑からうかがえます。すなわち、年老いてからも嫁の手をわずらわせることなく天寿をまっとうできるという霊験にもとづき、「嫁いらず観音院」と呼ばれるようになったわけです。
なので、嫁いらず観音院は、嫁のいらない独身者の楽園などでは決してありません。
参拝所はこちら。まずはここでお祈りしましょう。
一つの石から切り出された巨大な聖観音菩薩像
そんな「嫁いらず観音院」のシンボルこそ、こちらの巨大な聖観音院菩薩像です。
どうですか?圧倒される大きさですよね。
聖観音院菩薩像の高さは、台座までふくめると、およそ12メートル!一つの石から切り出された石造りの仏像としては国内最大級で、その重量も88トンにおよびます。
したがって、絵馬も観音さんをモチーフにしています。記念に奉納してみてはいかがでしょうか。
奥の院への道
本堂の脇には、「奥の院」と書かれた案内板があります。そうなんです。嫁いらず観音院の礼拝所は、何も本堂だけではないのです。
境内図をご覧になると、本堂のある樋の尻山をぐるりととりかこむようにして、西国33観音霊場が点在するミニ霊場があることがわかります。
西国33観音ミニ霊場めぐりは、トレッキングコースとしても人気があります。大した距離ではないため、奥の院への参拝がてら、ミニ霊場をめぐってみてはいかがでしょうか。
杖も用意されているので、ご活用ください。
樋の尻山の奥の院とミニ霊場
山道を少し登ると、ご覧のような巨石が現れます。巨石の表面には、梵字にかこまれた弘法大師・空海が彫られています。
ここが奥の院です。
巨石の裏手、岩にはさまれた奥に小さな祠があり、内部には観音菩薩がまつられています。
興味深いのは、巨石の割れ目に祠がまつられているその形態が、女陰(女性器)を連想させること。そのように考えると、嫁いらず観音院のある山が「樋の尻山」ということも、どこかエロティックに感じてきませんか?
ひょっとしたら、「嫁いらず」の呼称は、もとをたどれば、年老いてからも嫁の手をわずらわせることなく天寿をまっとうできるといった霊験などに由来するのではなく、やはり独身者による「嫁いらず」の女陰信仰からはじまっているのかも知れませんね。
コースには、霊場ごとにかわいらしい石仏がまつられています。あわせてお参りしましょう。
「さすり観音」や休憩所
奥の院からさらに登ると、「さすり観音」と呼ばれる石仏が現れます。腕や足など、不具合を感じている部位があるなら、さすり観音の同じところをさすってみましょう。ご利益があるといわれています。
さすり観音の裏手には、休憩所もあります。このあたりが樋の尻山の山頂付近に当たります。しばらく休憩して、今度は坂道を下っていきましょう。先ほどご紹介した聖観音像の近くに下りてきますよ。
毎月17日の月例祭や、春と秋の彼岸の中日におこなわれる大祭には、全国各地から大勢の参拝者が訪れます。
したがって、嫁いらず観音院へ通じる道には、ところどころ、ご覧のような案内板が立て掛けられています。こういった案内板を手掛かりに山中を進むと、迷うことなく到着しますよ。
嫁いらず観音院がどのようなところか、おわかりいただけたでしょうか。お嫁さんに限らず、他人の世話にならずに楽にあの世へと旅立ちたいと願うのは、誰もが思うこと。その願いを聞き届けてくれるお寺があることに驚く方も多いのではないでしょうか。嫁いらず観音院を訪れ、天寿まっとうの祈願をしてみてください。
嫁いらず観音院の基本情報
住所:岡山県井原市大江町1036
電話番号:086-667-2202
拝観時間:日中
拝観料:なし
アクセス:山陽自動車道笠岡インターチェンジから約20分
2024年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
■関連MEMO
嫁いらず観音院―井原市観光協会(外部リンク)
https://www.ibarakankou.jp/sightseeing-information/temples-shrines/DB016.html
【トラベルjp・ナビゲーター】
乾口 達司