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文化村のような不思議な世界遺産の町ヴィシェグラードを歩く


ボスニア・ヘルツェゴビナの東端、セルビアとの国境近くに世界遺産の橋の町・ヴィシェグラードがあります。ノーベル賞作家イヴォ・アンドリッチの名作『ドリナの橋』の舞台であり、現在は文化村のようなアンドリッチグラードができ、多くの観光客を集めています。
治安も良く自然豊か。セルビア〜ボスニア間で途中に立ち寄るのに適しており、バルカン文化を知るのにもピッタリの町です。ぜひ旅の行程に組み入れてください。

世界遺産の橋

写真:菊池 模糊

ヴィシェグラードの入り口にはドリナ川に架かる世界遺産ソコルル・メフメト・パシャ橋があります。11連の美しいアーチが見事な石橋で、オスマン帝国最高の建築家ミマール・スィナンによって設計されたもの。橋の名前はオスマン帝国の名宰相から来ており、彼はこの近辺の村出身で、徴兵され努力しスレイマン大帝に見いだされ大宰相まで出世し、故郷に念願の橋を建設しました。

写真:菊池 模糊

全長は179.5mで1577年に竣工。中央部が少し高いイスラム様式で、豊かな水をたたえるドリナ川とともに風格漂う美しい姿の橋です。
ここは田舎ながらイスタンブールとサラエヴォを結ぶ要地で、かつては渡し舟しかなく軍勢や通商利用でも難所でしたが、橋建設により大変便利になったのです。現在、橋上は歩行者あるいは特別許可車しか通過できないため、観光客はゆっくりと橋を散策し景観を楽しむことができます。

写真:菊池 模糊

この橋は戦略上の要地でもあることから両世界大戦などで何度か破壊されましたが、そのたびに修復され大切に守られてきました。そして歴史的価値を認められ、2007年には世界文化遺産に登録されたのです。
橋の中央には建設を命じたメフメト・パシャを讃えるイスタンブールの詩人パディのアラビア文字が刻まれた石碑があり、メッカの方向を示すミフラブにもなっています。

ノーベル賞作家アンドリッチの名作『ドリナの橋』の舞台

写真:菊池 模糊

『ドリナの橋』はノーベル文学賞を受賞したイヴォ・アンドリッチが幼少期を過ごしたここヴィシェグラードが舞台で、ソコルル・メフメト・パシャ橋の着工からサラエヴォ事件までの約400年間を描いた大河小説です。小説の最初のほうに、ここから渡し舟でドリナ川を渡る徴用された少年=後の大宰相ソコルル・メフメトの姿が描かれ、橋を建設する原点となった様子が書かれています。
それ以来、小説にあるように幾多のドラマを生み、橋にかかわる人々が生きてきたヴィシェグラードの町は歴史の証人のように今静かに旅人たちを迎えています。

写真:菊池 模糊

ヴィシェグラードの町の小高い丘に立派な教会がそびえています。これはセルビア正教会の生神女就寝聖堂です。この一帯は諸民族の抗争の地でもあり、特にイスラム系と正教系の対立がありました。現在はセルビア系の人々が多く暮らし、正教会が栄えている様子がわかります。
<生神女就寝聖堂の基本情報>
住所:Milosa Obilica 13, Visegrad 73240
電話番号:+387-5862-1112
入場:不可、外観のみ撮影可
アクセス:ソコルル・メフメト・パシャ橋より徒歩10分

写真:菊池 模糊

町の中央部の広場付近に古めかしい蒸気機関車が置かれています。これはシャルガン8と呼ばれるもので、ボスニアからセルビアにかけての険しい山岳地帯を走ります。狭軌のループ状の線路が8の字を描くように見え、鉄道マニア垂涎の的です。

まるで文化村のような町

写真:菊池 模糊

町の北部から川の砂州付近に建てられた大きな施設がアンドリッチグラードと呼ばれる一種のテーマパークです。有名な映画監督エミール・クストリッツァが、ノーベル賞受賞作家イヴォ・アンドリッチを記念して建設した文化村的複合施設で、2014年にオープンしヴィシェグラードの新しい観光名所となっています。
入り口に立っているのは世界遺産の橋の建設を命じ橋梁名にもなったオスマン帝国の大宰相ソコルル・メフメト・パシャ(左側)。右側は大宰相の弟で長じてセルビア正教の総主教となったマカリア。地元出身の兄弟の人生のドラマを感じさせる銅像です。

写真:菊池 模糊

市庁舎の前に少し下を向いたイヴォ・アンドリッチの立像があります。彼はヴィシェグラードで幼少期を過ごし、長じてはユーゴスラビア王国の外交官などを務めます。第二次大戦中はベオグラードに籠り『ドリナの橋』などのボスニア三部作を執筆し、高く評価され1961年にノーベル文学賞を受賞します。
<アンドリッチグラードの基本情報>
住所:Mlade Bosne、Visegrad 73240
電話番号:+387-6670-3722
入場:無料、写真撮影も可
アクセス:ソコルル・メフメト・パシャ橋より徒歩15分

写真:菊池 模糊

右側の語学センター前にニコラ・テスラの像がたっています。彼は現クロアチア西部で生まれたセルビア系天才発明家でエジソンのライバル。渡米し、誘導モーター・高圧変圧器・無線トランスミッターなどを開発し交流電気事業に成功。彼が遺した資料類はユネスコの記憶遺産に登録。電気自動車メーカのテスラ社は彼へのリスペクトをこめて名づけられました。

アンドリッチグラードの映画館など

写真:菊池 模糊

右側に映画館の建物(Multiplex Dolly Bell)があります。エミール・クストリッツァ監督のデビュー作の名前を冠した映画館で、一種のシネコン。世界の秀作映画を上映しています。映画を文化の核にしたいという監督の意思を実現した場所です。

写真:菊池 模糊

映画館正面上に大きなモザイクタイル壁画があり、アンドリッチグラードの制作者エミール・クストリッツァも絵の中に登場。
綱を引く右から二人目の白っぽいシャツの男性が彼で、さすが映画監督らしい一種のカメオ出演ですね。彼はサラエヴォ出身で、監督のみならず音楽家・俳優としても有名。カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを2度受賞しています。

写真:菊池 模糊

土産物屋やレストラン、カフェが並び、アパートのような宿泊施設や銀行もあります。高額の入場料を取るアメリカ資本のテーマパークではなく、あくまで無料でバルカンの文化遺産を基本とした町づくりの姿勢がみられる不思議な町です。
この町でぜひ味わってほしいのが地元的な田舎料理。特におすすめはボスニア風シチュー料理のボサンスキ・ロナク(Bosanski Ronak)。牛肉や野菜を煮込んだものですが、店や家庭により具材の大きさや味付けにバリエーションがあり、いろいろな変化を楽しめます。

聖皇帝ラザール教会

写真:菊池 模糊

アンドリッチグラード最奥部の砂州先端に美しい教会があります。これが聖皇帝ラザール教会で、セルビアにとっての英雄の名を冠したセルビア正教の聖堂です。
聖皇帝ラザールは14世紀のセルビアにおいて強力な勢力を誇った大領主。オスマン帝国の侵攻に抵抗し、1389年のコソヴォの戦いでキリスト教連合軍を率い善戦するも戦死しました。その後、セルビア教会より殉教者・聖人と認定され、セルビア叙事詩で皇帝として讃えられます。

写真:菊池 模糊

聖皇帝ラザール教会は、2013年に完成した新しい教会で、外部は綺麗でアンドリッチグラードの雰囲気に合い、内部装飾も新品で美麗。セルビア教会らしくイコンが飾られ派手な感じで、黄金色の十字架が輝く祭壇も見事です。
<聖皇帝ラザール教会の基本情報>
住所:Visegrad、無番地
電話番号:+387-6567-8550
入場:無料、写真撮影も可
アクセス:ソコルル・メフメト・パシャ橋より徒歩15分

写真:菊池 模糊

聖皇帝ラザール教会の前に、ペタル二世ペトロビッチ・ニェゴシュの座像があります。彼は19世紀前半に活躍したモンテネグロの君主にして作家・詩人。『山の花環 小宇宙の光』という作品が有名でバルカンのシェイクスピアとも称されます。バルカンの文化を網羅しようとした、アンドリッチグラードの姿勢が感じられる銅像です。

ヴィシェグラードへの行き方は?

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエヴォからバスで約3時間。ただし本数が少ないので注意。サラエヴォからレンタカー(約2時間)または日帰り観光ツアーに参加するのも一案です。
セルビアの首都ベオグラードからもバスがありますが、約6時間かかります。この場合、ヴィシェグラードでの宿泊が必要になります。超高級ホテルはないですが、リーズナブルな宿泊施設が多くあります。
ヴィシェグラードでのバスの発着停留所は、行先や時期によって変わりますので、インフォメーションで聞いてご利用ください。ただ、いずれも世界遺産ソコルル・メフメト・パシャ橋近辺であり、小さな町なので徒歩圏内です。
2024年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

■関連MEMO
ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエヴォは歴史に彩られた町だ!
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【トラベルjp・ナビゲーター】
菊池 模糊

提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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