ホーム 子育て > 結局“暗記”が肝なの? 公立中高一貫校の“適性試験”、「型からどう抜け出させるか」課題に

結局“暗記”が肝なの? 公立中高一貫校の“適性試験”、「型からどう抜け出させるか」課題に

2023-07-30 eltha

 都立中高一貫校の倍率は約5倍とも言われ、なかなかの狭き門。これでも倍率は下がってきたほうで、以前は10倍以上を記録した学校も。私立の入試とは異なる“適性検査”と言われる独自の試験対策が必要で(そのため、「受験」ではなく「受検」と表記)、各学習塾でもその検査に特化した授業カリキュラムが確立され始めています。オンラインサロンで公立中高一貫校の受検対策を指導しているケイティ先生は、適性検査の入試について「生徒の独自性、自由な視点を表現できるのがおもしろい」と魅力を感じる一方で、対策方法が確立された今「結局は傾向と対策、型の暗記になりがち」という危惧も感じていると言います。適性検査の対策をする上で、子どもに身につけてほしい力について、あらためて聞きました。

学びは日常生活にあり「いかにコミュニケーション量を増やせるか」

 公立中高一貫の入試としてある適性検査は、文章や資料を読み取り、そこから必要な情報を引き出し、自分の考えを的確にまとめ、表現する力をみる問題です。「インターネットショッピングの問題点は何だと思いますか?」「二酸化炭素の排出量が増えていますが、国としてどう対策すればいいでしょうか?」など、算数・国語・社会など複数の教科を組みあわせた問題や、深い思考力を求める問題が多く見られます。

━━「適性検査」を突破する力を養うためにはどうしたらいいのでしょう。

ケイティ:理想論でいえば、思考力、表現力を培うためには、幼い頃から積極的にニュースを見せて、「あなたはどう思う?」と問いかけて親子で議論するとか、いろいろな所に連れて行って様々な経験をさせ、いろいろな考え方・生き方の人がいるということをインプットさせておくことです。でも、これをやり切れる人はなかなかいません(笑)。

━━保護者も忙しく、時間が限られていますからね。

ケイティ:私は普段の日常生活、会話からも学べることがあると思っています。適性検査の問題文には、こういう切り口で書いてほしいといった誘導がありますので、発想だけではなく、出題者の意図をくみ取る読解力も必要だからです。

 小学1年生くらいだと何人かで一緒にいても、子どもは自分の言いたいことだけを喋って会話がかみあっていませんが、だんだん相手の話を聞くとか、会話のキャッチボールの中で相手が言いたいことを汲み取り、自分の言いたいことを伝える方法を学んでいきます。表現力や読解力は、人と関わることや、嫌な思いをしたり、我慢をしたりという経験をしていないと伸びていきません。ですから、たくさんの友達と関わらせたり、自分たち家族とはちょっと違うコミュニティにあえて入れさせるなどして、コミュニケーションの量を増やすことも大事だと思います。

「型にはめることがゴールではない」いかに独自性を出すかが課題に

━━すでに受検学年で、入試まで1年を切っている場合はどうしたらいいでしょう。

ケイティ:受検を控えて時間がない中、合格点をとらなければならないということで、今、塾での指導は、適性検査も知識問題と同じように暗記型になっている傾向があります。「社会問題についてはこういう結論を書けば好印象」などと傾向が書かれた対策本も多いですし、書き方についても、一文目は「私はこうだと考える」、二文目は「なぜなら」で始め、最終段落は譲歩の形をとって、「確かにこういうこともあるでしょう、しかし…」といった“型にはめる”というやり方です。短期的な指導方法としては、まず型を覚えることが適切です。

━━大学入試の小論文でも論理的な文章の展開方法として、ある程度の型は指導されますからね。

ケイティ:型に当てはめることの問題点は、そもそも自由に表現することが作文の大事なあり形なのに、型にはめることがゴールになってしまうこと。文章を添削してみると、中身が伴っていないケースがひじょうに多いことです。私は毎月何十枚と添削していますが「またか」とか「読んだことある話だ」という作文ばかりで、型からどう抜け出させるか、型のなかに独自性をどう見出すかが今の課題になっています。

━━同じような傾向性の作文が多くなることで、弊害もある?

ケイティ:入試で学校は700〜800枚を添削します。当然、同じものばかりでは差別化できません。その一方で、同じような型の作文が並ぶと、完成度の高い子が選ばれ、ちょっとミスがあれば一気に落とされてしまうリスクもあります。また、テンプレートに安住していると、ちょっと違う傾向の問題が出ると頭が真っ白になってしまいます。学校はあの手この手で毎年出題を変えてきていますが、そのことからも学校がテンプレート化された作文を求めていないことがわかります。

「あのとき一緒にがんばったよね」、受検を笑顔で振り返えられる時期にしてほしい

━━夏休み期間中にできる対策はないでしょうか?

ケイティ:まず、お子さんの弱点と強みを把握していただきたいと思います。そして、たとえば読解力が弱点だったら、夏休みの前半は読解の参考書をやらせるとか、半年前に終わった読解の教材をもう1回復習に使うなどして弱点補強に使ってほしいと思います。その後、後半は、応用力をつけたり、過去問演習に使って強みを伸ばすようにするといいと思います。

━━先生は、適性検査の勉強法について、塾に任せるだけでなく「保護者が最高のコーチ」として添削を行うことを推奨されています。

ケイティ:保護者の添削に求められるのは、完璧な添削者になることでも、〇×をつけることでもなく、子どもの弱点を把握して次につなげることです。こういう問題になると途端に中途半端になっちゃうなとか、前にもこれ間違えていたよなとか、状況を把握して、その克服のためのプランを立てるのが保護者だからこそできる役割だと考えています。

━━添削する際の注意点はありますか?

ケイティ:ありがちなのが、親がここはこうやって書いた方がいいとコメントを書いてしまうことです。子どもはそれを読んでも、「ふーん」で終わりになってしまいます。そうではなく、「ここは他の言葉に言い換えたほうがいいよ、なんだと思う?」と聞いて、そこに空欄を作っておいて子どもに書かせるとか、「この一文は長いから二文に切ったほうがいいけど、どこで切って、どういう接続詞でつなぐ?」とか、一方通行ではなく、交換ノートみたいな役割が大事だと思います。添削するところまで関わると、親もある程度は解かないといけないので、どの親御さんも「こんな問題と日々向き合っているうちの子はすごい!」というマインドになってくれます。ぜひお子さんを褒めてあげてほしいですね。

━━ケイティ先生は、適性検査で一番何を見ていると思いますか?

ケイティ:学校は勉強に向き合う姿勢も見ているのかなと感じています。この子は問題の誘導に気づいて、丁寧に線を引きながら条件を全部拾って回答に入れたんだろうなとか、書き終わった後、再度チェックしているなとか、答案用紙にはそういう慎重さや丁寧さが表れますし、家庭の学習に対する姿勢も垣間見えます。「字を見たら家庭環境がわかります」とおっしゃる先生もいますので、解答用紙の向こう側に読む人がいることをふまえて、ていねいに書こうとする姿勢も見てあげてほしいですね。

━━受検勉強を乗り切るためには親子で並走することが大切なのですね。

ケイティ:ネットや近い親族などから、「そんなに勉強させて可哀想」とか「そんなにやっても受かるかどうかわからないよ」など心ない言葉をかけられることもあるかもしれません。そんなときは、何のために受験をさせるのか、受験を決めた最初のきっかけを思い出してほしいと思います。そして、我が子の涙を見たくないのは誰しも共通していることですから、誰が何と言おうと気にせず、この1年は、私は受験生の親になり切るんだと思ってサポートしてほしいです。「頑張ろうね」と言って子どもが頑張ってくれるのは信頼関係があればこそですし、それだけ小さい頃から親が子どもにちゃんと関わってきた証拠です。ですから、自信を持って、一生懸命挑戦しようとしている子どもにとことん寄り添ってあげてほしいと思います。中学になれば部活も忙しくなり、子どもはどんどん親から離れていきます。小6は親離れ前の最後の貴重な時期とも言えます。どんな結果になっても「あのとき一緒にがんばったよね」と笑顔で振り返られるような時期にしてほしいと思います。

取材・文/河上いつ子
ケイティ

PROFILE ケイティ

公立中高一貫合格アドバイザー。適性検査対策の情報を配信する「ケイティサロン」主宰。都内大手進学塾の講師として2007年から多くの生徒を合格へ導いた人気講師。担任した公立中高一貫校対策クラスでは6割を超える生徒が合格し、一躍有名に。Instagram:katy_goukaku ブログ:ケイティブログ

Facebook

関連リンク

あなたにおすすめの記事

おすすめコンテンツ


P R
お悩み調査実施中! アンケートモニター登録はコチラ

eltha(エルザ by オリコンニュース)

ページトップへ