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(更新: ORICON NEWS

“歌う声優”の増加と演者に課せられた使命 エンタメ“ボーダレス化”に声優界が導き出した答え

 2004年にTVアニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』の主人公を演じて以来、数多くの作品で声優として活躍するKENN。養成所などで学んだ上で業界入りする声優が多い中で、バンドから2.5次元ミュージカルを経て声優としてのポジションを確立した異色の経歴の持ち主だ。近年、声優の仕事に占める“歌”の重要性が増しており、KENNも「役として歌う」場面が増えている。活動初期から声優、俳優、アーティストを並行してきた彼の取り組み方を聞いた。

「表現の幅を広げたい」音楽アーティストが声優に挑戦した背景

──KENNさんはもともと、ギタリストを目指していたそうですね。

KENNそうなんです。中学の頃そうでしたが紆余曲折あり、ヴォーカルをおもに勉強し、音楽の専門学校を出て、メジャーデビューしているバンドに追加メンバーとしてデビューしたのが最初です。そこから表現の幅を広げたいと事務所に相談して『ミュージカル テニスの王子様』のオーディションを受けて、さらに舞台の途中で声をかけていただいて声優のオーディションを受けて…、という感じで演技の世界に入っていきました。

──声優の現場に入った当初はどんな苦労がありましたか?

KENN基礎がない分、人一倍取り組まきゃいけないって思っていましたね。声優デビューした「遊戯王」はカードゲームがテーマの作品だったんですけど、そのゲームを徹底的にやり込んだのを覚えています。「なるほど、このカードをこのタイミングで引けるとこんな感情が湧いてくるんだな」とか。声の演技や役作りも未熟だったし、付け焼き刃でやっても通用しないと思ったので、まずは作品の世界観をきっちり自分の中に落とし込もうと思ったんです。

──その方法論はご自身で編み出したもの?

KENN現場の叩き上げというか、とにかく必死で手探りでした。もちろんマイク前の演技については、音響監督さんをはじめ多くの方にイチから教えていただきました。物語を通して成長していくキャラクターだったことも、今思えば当時の僕にリンクしていたんだと思います。

エンタメの“ボーダレス”に声優のアドバンテージは? 「“役として歌う”という経験は大きい」

──近年の声優は、声(アフレコ)だけでなく“顔出し”して歌やダンスも交えながら作品の世界観を演じる活動がますます加速しています。もともと音楽アーティストとして活動されていたKENNさんは、この現象をどう感じていますか?

KENN声優に限らず、アイドルだって歌だけでなく俳優業をやるし、芸人さんだって歌ったり演技をしたりしますよね。それと同じように声優界も幅が広がっているのかなと思います。エンタテインメントがボーダレスになって、肩書きにとらわれることなく、みんなでいいものを作っていこうとしている。それってすごくいい傾向だと思うし、その一端を担わせてもらえてるのはとても誇らしいです。

──そうしたボーダレスな時代でも、「声優の強み」とは何だと思いますか?

KENNやっぱり声ひとつで表現を成立させることができることですよね。芝居でもナレーションでも原稿読みでも、それこそ歌もそのひとつだと思います。僕自身は声優がスタートではなかったし、今も役者やアーティストも本業としてやっている感覚があるので、そこは本当にリスペクトします。

──まさに「役として歌える」という声優のスキルですね。

KENNキャラクターとして成立していれば、歌の上手い下手は関係ないと思うんですよね。ちなみに歌が下手なキャラを演じたこともあります。そのときはテクニカルなことをせず、気持ちをよりしっかりと乗せて歌いました。

──幅広く活動するKENNさんですが、とくに声優としての側面が際立っているようです。KENNさんにとって声優の仕事の魅力とは?

KENN最初のミュージカルで「役として歌う」という経験をしたことは大きかったですね。その歌には原作者や制作に関わるスタッフさん、役のファンなど、いろんな人の想いが乗っているわけだから、KENNとしてだけでは歌ってはいけない。でもそうした制約のある中で、表現を工夫していくのが純粋に面白いなと思ったんです。声の演技も同じで、制作者さんが敷いたレールの上を声優それぞれが持ち寄ったものを結集して走っていくことにやりがいを感じています。

「人の気持ちをプラスにしたい」エンターテイナーとしての想い

──KENNさんは、音楽をテーマにした作品で“歌”を演じることも多いです。KENN名義で歌うのとは、取り組み方はどのように違いますか?

KENN】そのキャラクターのイラストからにじみ出る雰囲気やパーソナルデータから、普段はどんなふうにしゃべるのか、歌声は…などと方向性を探っていきます。たとえば音楽原作プロジェクト『アオペラ -aoppella!?-』で演じている雁屋園道貴というキャラクターは、見た目のイメージから「可愛い」と言われることが多かったけど、本人はちょっと不本意で。ある日、歌ってるところを「カッコいいね」と言われたことがうれしくて、友人たちとアカペラグループを結成する、という設定なんですが…。

──ということは、見た目と歌声にギャップが?

KENNそうですね。「カッコいい」と思われたい願望がある子なので、歌でもカッコよさを意識している。だけど根本的に素直な性格なので、歌にも初々しさや可愛らしさがにじみ出てしまうという。そこのせめぎ合いが彼の歌声の魅力なんじゃないかなと思います。けっこう微妙なバランスをとりながら構築していますね。

──それをさらにアカペラで表現する。かなりスキルフルなことをされている印象です。

KENN過去にもキャラクターソングでコーラスやハモリを担当したことはあるんですが、そのときはあくまでメインを歌うキャラを際立たせるポジションでした。だけど『アオペラ』では、主旋律もコーラスもハモリもすべてのパートでキャラクターをしっかり載せて歌わないと成立しない。その挑戦が自分の中でもすごく楽しいです。

──多岐にわたる活動をされる中、KENNさんの“エンターテイナー”としての根本はどこにありますか?

KENNどんな表現でもエンタテインメントの目的は1つで、僕のコアにあるのは「人の気持ちをプラスにしたい」という想いです。そのために表現を磨き続けるのがエンターテイナー。だから僕はいろんな活動をしていますが、どんな肩書きで呼んでもらってもぜんぜん構わないんです。これからも、観てくれださる方が喜んでくれるものを追求していきたいと思っています。

衣装協力:MAISON SPECIAL
取材・文/児玉澄子
撮影/厚地健太郎
KENN(ケン)
声優、歌手。3月24日生まれ、東京都出身。A型。代表作はアニメ『デュエルモンスターGX』(遊城十代)、『宇宙兄弟』(南波日々人)など。俳優として、ミュージカル『テニスの王子様』にも出演。

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