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ロバート秋山を筆頭に“憑依系芸人”が続々CM特需…その背景は?
自身の世界観を“そのまま”投影 企業CMにも重宝される鉄板の憑依芸
CMでもその芸を生かし、『ファブリーズ』では濃厚すぎてちょっと鬱陶しいお父さん、『マイナビバイト』では落ち武者・師匠感がハンパないのに実はバイト…の刀鍛冶、色黒珍獣・秋山もすっかり定着した『Renta!』、三姉妹の両親(一人三役?)を演じる『マックデリバリー』等々、どれも強烈なインパクトを残しつつ、しっかりと商品アピールにも成功している。
視聴者側にしても、秋山ならしっかり笑わせてくれるだろうという安心感があり、画面に登場しただけで、すでになんとなく笑えるといった“出オチ感”もたっぷり。しかも彼がうまいのが、ありがちな“誇張しすぎ”“やりすぎ”感をギリギリに抑え、「こういう人いるよな…」と思わせるリアル感をキープしているところ。それでいて、共演相手を“食う”ことなく(相手のよさを殺さず)、自分のキャラを最大限に活かすというバランス感覚も、彼の特異さである。
しかしながら、その憑依力(演技力)を活かしてトレンドの“俳優芸人”として活躍するでもなく、あくまで「お笑い芸人」「ネタ」というスタンスを崩していないところは、ある意味ほかの芸人と一線を画しているといえるかもしれない。
お笑いショーレースの隆盛とリンク? “ネタに寄せた”CMアプローチへの変化
例えば、『ライフネット生命』では、博多華丸大吉や和牛などが出演し、バラエティ番組の一場面をそのまま切り取ったようなCMを展開。『ヒルナンデス』(日本テレビ系)では番組放送の合間に入り、レギュラー出演者がそのまま番組セットを使い、一体となって出演するというような演出も。
求人情報専門の検索エンジン『Indeed』では千鳥がネタ・コントそのままのCM構成となっている。そこから派生した「Indeed CMオンエアバトル2021」では、ジャルジャル、かまいたち、チョコレートプラネット、ニューヨークの4組がネタを競い合うという企画を実施。ふるさと納税ポータルサイト『さとふる』には、東京03が出演。実力派ならではの、脱力系コント風CMを展開している。
つまり、芸人たちのネタに寄せたCMというのはここ最近に始まったものではなく、すでに10年以上前からある手法なのである。そして、こうした流れは『M‐1グランプリ』や『キングオブコント』(TBS系)の隆盛時期と見事にリンクしている。
増える「芸人×俳優」の夫婦役CM 芸人の社会的地位の向上で“違和感”を払拭
この状況に、ひと昔前なら俳優側のファンから「なんで…?」と批判の声が上がりかねないが、今では「意外にお似合い」として、むしろ美女(イケメン)と芸人の夫婦という“ギャップ”が、親近感と好感度を抱かせる環境にまでなっている。“芸人×俳優”のリアル夫婦でいえば、南海キャンディーズ・山里亮太と蒼井優も頭をよぎり、少なからず影響を感じずにはいられない。
現在、情報番組やクイズ番組において、芸人がMCやコメンテーターを務めるのは当たり前。俳優としてドラマに起用されることも、すでに一周している。もはや、ネタと離れたシチュエーションでも活躍できることが実証され、芸人のいわゆる社会的地位も向上した。そして同時に芸人のネタやコントの“価値”も再認識されつつある今、「芸人の本来の姿を活かす=ネタに寄った」CMが増えているのも当然の流れなのかもしれない。
そしてこうした傾向は、芸人のわかりやすい一発ギャグなどを取り入れるという表層的な戦略よりも、練られたネタの本来の面白さとリンクしたCM作りを重視したほうが、広告クライアントのイメージアップにもつながるという実績主義、つまりCMの在り方という点において“原点回帰”ともいえるかのしれない。