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なぜか気になる駅ポスター 35年間、麦焼酎「いいちこ」のPRを一任された熟練ADが語る“プロモ”哲学
あの“地下鉄路線図”を手がけた過去もあるアートディレクターが「いいちこ」をPR
アートディレクター・河北秀也氏といいちこの関係はすでに35年以上にも及ぶ。2015年には東京藝術大学の名誉教授に就任しているが、いいちこ“以外”の代表作に東京地下鉄路線図があると言う。「1971年、東京藝術大学の卒業制作としてデザインをはじめましたが、卒業制作には間に合わず、翌年、営団地下鉄(現:東京メトロ)へ持ち込み、何度か改定版を作り、正式に路線図として採用されました」(河北氏)。
ブーム終了後に“指名買い”させるPR戦略とは?
実際、河北氏も、「それまで数々のヒット作を作ってきましたが、よいものができないのは、デザインを決定する人(クライアント)が素人だからという場合が多かったのです。それで、責任を持ってデザインをやるためには、クライアントとデザイナーは対等でなければならない」と思ったのだと言う。そして、そうした厳しさと緊張感のある関係の中で、プロモーションやブランディングをすべて任された河北氏は、ポスターやTVCMにとどまらず、パッケージデザイン、雑誌広告、新聞広告、『季刊iichiko』の出版など、すべてを担当しているのだ。
そんないいちこのPR戦略の一翼を担う、あの独特の存在感を放つポスターについて河北氏に聞くと、「まったく独特だとは思っていません」とのこと。「あえて言えば、広告にしていません。コンセプトもないのですが、飲むときの気分、時の流れに合わせています」(河北氏)ということであり、アートディレクターとしての感性の賜物であることがうかがえる。現に記念すべき1作目のポスターは、広告専門誌『コマーシャルフォト』のマンスリーベスト・アドに選定されており、専門家筋からも高く評価されているようだ。
駅貼りのポスターが多い理由と“ビリー・バンバン”の名曲
また、駅貼りのポスターが多い理由については、「『テレビや新聞、雑誌の広告は一回見れば終わりですが、ポスターは同じ場所に定期的に貼り替えるので毎回、必ず見てくれる人がいます。そういう人たちの口コミで徐々に広がっていけばいい。“急がない広告”として最適なんです』と河北氏から教えていただきました。その毎回見てくれる人たちが毎日のように通る場所が、『駅』だからです」(三和酒類株式会社)ということだ。
ビリー・バンバンの楽曲でも有名なTVCMだが、ビリー・バンバンの起用に関しては、「ビリー・バンバンが『いいちこ』の商品特性に合っているからです。『いいちこ』の商品特性は、臭くなく香りがある焼酎。ビリー・バンバンも、他のフォークソングの歌手のように田舎臭くなく、都会的だからです」と、河北氏はその理由を語ってくれた。
そして、河北氏はいいちこのPRへのこだわりとして、最後まで、「『いいちこ』のすべてをデザインすることです。PRをはじめた当初と、今のPRへの考え方に変化はありません」と確固たる信念をも語る。三和酒類株式会社も、「河北さんにすべてをお願いし、それを継続できたことにより、ポスターやTVCM、新聞や雑誌広告に一貫性が生まれました。加えて、マーケティング調査でターゲットを明確化し、適切な広告戦略を施したことが、『いいちこ』が長くご支持をいただけている要因だと感じています」と語るように、両者の絆はますます強くなっているのだ。