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『逃げ恥』脚本家、“やっと手にした”オリジナル作品で解放させた真骨頂

 ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の脚本家・野木亜紀子氏が手掛けたドラマ『アンナチュラル』(同系、毎週金曜 後10時)が話題だ。初回視聴率12.7%、2話13.1%と右肩上がりの好発進を遂げている。人気ジャンルの医療ミステリーであることに加え、主演の石原さとみや人気俳優の窪田正孝など魅力的なキャストが集結していることも話題の理由に考えられるが、何より注目されているのはそのストーリー性だ。野木氏といえば『逃げ恥』はじめ原作もののイメージが強いが、今回のオリジナル作品でSNSを中心にその手腕を絶賛する声が多く挙がっている。
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コンクール大賞受賞後、原作もの作品で高評価 “エリート脚本家”に

 『アンナチュラル』は、「死と向き合うことによって、現実の世界を変えていく」をテーマに、法医学解剖医の三澄ミコト(石原さとみ)が不自然な死の死因を解明していく法医学ミステリー。ミステリー性とヒューマンドラマのバランスが絶妙で、物語もスピーディー。二転三転する展開が楽しく、終わりの満足度も高い。

 そんな本作の脚本を手掛けるのが、前出の野木亜紀子氏。2010年にフジテレビが毎年開催している『フジテレビヤングシナリオ大賞』で大賞を受賞。それから8年間で『主に泣いてます』(フジテレビ系)、『空飛ぶ広報室』(TBS系)、『掟上今日子の備忘録』(日本テレビ系)、『重版出来!』(TBS系)、映画では『図書館戦争』シリーズ(2013〜2015年)や、『俺物語!!』(2015年)、『アイアムアヒーロー』(2016年)などの脚本を手掛けており、原作の味を損なわせない筆に定評がある。コンクールでの受賞が必ずしも第一線での活躍を約束するものではない厳しい世界で、この活躍は“エリート脚本家”とも言える。

 「野木さんは、物語を面白く見せる構造を熟知する脚本家」と話すのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。「例えば、“掟上今日子”では、原作の第1話と第2話をひとつの話にしていましたが、まったく矛盾はなし。相当な構成力です。さらにミステリー作品にはミステリーを面白く見せる、守らなければならない“ノックスの十戒”というルールがあるのですが、それも踏襲。ミステリーファンにまでもPRしていました。――実は野木さん自身、大のドラマ好きで、これまで“原作レイプ”に辟易としていた過去があるようです。それもあって、作品の哲学を曲げないことを最重視していたようです」(同氏)

原作ありきの風潮、人気脚本家でも簡単には手が届かないオリジナル脚本

 しかし、この信念のもと原作もので引っ張りだこの状況は嬉しい反面、脚本家のプライドとしてオリジナル作品だって手掛けたいに違いない。だが、昨今の原作ありきの風潮に、たとえ“エリート脚本家”でもオリジナル作品はなかなか通らないものなのだろう。これについて衣輪氏は「あまり知られていませんが、物語は脚本家だけでなく、基本的に、プロデューサーとの二人三脚で作っていくもの。つまり、オリジナルにも完全な“自由”はありません。それでも原作ものと比べると、脚本家への信頼で成り立つオリジナルは“自由”に関して格段の差があると言われます。さらに、骨子が固まった後は、原作ものもオリジナルも労力はあまり変わらないと言われており、根幹はあっても“自由”がない原作ものばかりでは野木さんも溜まった鬱憤があったかもしれません」と分析する。

 そんな彼女の名を一躍世間に知らしめたのは、同名漫画を原作とする2016年放送のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』だろう。星野源が歌唱する主題歌「恋」にあわせ、エンディングで新垣結衣や星野、石田ゆり子や大谷亮平、古田新太らがキュートな振り付けを披露した“恋ダンス”も話題に。放送中は公式ホームページの閲覧数が1日で100万ページビュー超え。“ムズキュン”“恋ダンス”“契約結婚”がホットワードになるなど、『逃げ恥』は社会的ブームを見せた。

 その作品力は、結果としても証明されている。ORICON NEWSが2016年に開催した『第6回コンフィデンスアワード・ドラマ賞』では全7部門中、作品賞を含む6部門を制覇するなど、各ドラマ賞で37冠を達成。また、オリコンBlu-ray Disc(BD)ランキングでは、2008年7月の同ランキング開始以来、歴代のドラマBD売上で1位となった。

怒涛の展開でもブレない構想力、オリジナル作品『アンナチュラル』で見せた気概

 そんな野木氏が、『逃げ恥』で圧倒的な実績を経て“やっと手にした”オリジナル脚本『アンナチュラル』。疑問と推理の繰り返しで怒涛の展開が繰り広げられている。そして、よくある“真実のために非常識な行動も厭わない登場人物”だけではなく、現実味と親近感のある人物が多数登場している。そんな、遺族や親しい人たちの心情に寄り添う自然体の描写も魅力のひとつだ。また、第1話のミコト(石原)の生着替えシーンでSNSがお祭り騒ぎになったほか、第2話の台詞「人間は意外としぶとい」を「新たな名言」とするツイートも。“自由”を得て、水を得た魚のように生き生きと、視聴者を虜にするギミックや台詞を織り込んでいる。衣輪氏も「野木さんも、無給でプロットだけを書き続けた辛い下積み時代がある人。“人間は意外としぶとい”は、その苦労がなければ、あんなに上手くシーンにはめ込めなかった台詞ではないでしょうか。また、登場人物が、本当に“その人の言葉”で語っているかのようなしっくりとくる台詞の数々も、小手先の技術では到底あり得ない。まさに神がかっています」と語る。

 ただし問題点も。「ネタが出尽くしているので仕方ない面もありますが、既存のミステリーや刑事ドラマ、法医学ドラマのつなぎ合わせのような印象もある。せっかくのオリジナルですから、そこをどう新しく見せられるか、そして、どう面白さで他を圧倒するか期待したい」(衣輪氏)

 とは言え、今まで原作もので積み上げてきた実力と才能が、今作のオリジナル作品で解放されて日の目を見る結果になっている。そして、どんなに脚本家の手腕であっても「原作のおかげ」とも言われかねない状況から脱却を果たせたことだろう。同作は『逃げ恥』超えとなるか? 今後の展開が楽しみだ。

(文:中野ナガ)

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