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【KinKi Kidsライブレポート】20周年を前に見せた、2人で奏でる音楽の極み

 いよいよデビュー20周年イヤーに突入したKinKi Kidsが、9月29日、東京・日本武道館で全国ツアー『We are KinKi Kids Live Tour 2016 〜TSUYOSHI & KOICHI〜』をスタートさせた。武道館といえば、2人がデビュー前に初めてコンサートを開催した思い出の場所。それから時は過ぎて、22年。KinKi Kidsとして時代を築き、時には別々の場所で音楽を奏でた。様々なものを経て、今。堂本光一と堂本剛がこの日に見せた、2人で奏でる音楽の極みとは?

久々の1万人規模の会場で見せる、エンタテインメントショーの頂点

 今も昔も、アイドルに偏見はつきものだ。どんなに優れたパフォーマンスを披露しても、“子供騙しだ”などと揶揄され、どんなに曲がヒットしても、“自分たちで曲も書けないくせに”などと揚げ足を取られる。世の中には、アーティストとアイドルに境界線を引きたがる大人たちが、まだまだごまんといる。

 そんな、アイドルに偏見やアレルギーを持つ大人にこそ観てほしいのが、KinKi Kidsのライブである。実際には、ファンクラブの会員でないとチケットは入手しにくいし、今回の武道館ライブなどは、堂本光一がMCで「今回は、倍率がすごかったみたいやね〜」と語るほど申し込みが殺到し、一般の人が鑑賞することはなかなか難しいのだけれど。

 それはもちろん、ドームでのライブが恒例の彼らが、久しぶりに1万人規模の会場でコンサートを開催するとあって、「今までにない近い距離でKinKi Kidsが見られる!」と、ファンの期待も高まっていたこともある。ドームクラスのコンサートでも、音の良さだけでなく“歌を聴かせる”演出のきめ細やかさには定評があった。それにしても、今回の武道館ライブのオーケストラの豪華さと、耳に届く一音一音の美しさには、エンタテインメントショーの一つの頂点を見た思いがした。

 KinKi Kidsの音楽のベースになっているのは、ロックやR&Bやダンスミュージックではなく、昭和の時代から脈々と受け継がれる“歌謡曲”である。デビュー当時、山下達郎からも指摘されたというが、堂本光一と堂本剛の歌唱には、何とも言えない“哀調”がある。デビュー当時の彼らはともに18歳。ファンに夢や希望を与える存在であるはずのアイドルが、歌い始めると独特の暗さや翳り、危うさと切なさを溢れさす。光一と剛、どちらも、世界に二つとない個性的な声なのだけれど、和声であれユニゾンであれ、二つの異なる声が重なった時に生まれる情感は、年々深く、濃く、ふくよかになっているように感じられる。

まるで違う2人の踊り、なのに2人で並んでこそ完成する

 今回のツアーのセットリストは、『N Album』の収録曲を中心に構成されている。意外だったのが、ここ最近にはないほど2人が踊っていることだ。「モノクローム ドリーム」「naked mind」「雨音のボレロ」など、そこまでアップテンポではない曲をときにすれ違い、ときに重なり、離れ、近づきながら、ダンサーを加えて多彩なフォーメーションで魅せていく。

 並んだときに面白いのが、光一と剛の踊りの個性の違いだ。背格好は似ているのに、音との共鳴の仕方が、2人はまるで違う。同じ振付なのに、光一は腕や脚を大きく動かし、剛は脱力したように、小さく柔らかく動かす。体全体でリズムを刻み、その瞬間瞬間の動きがすべて決まっているのが光一で、体から湧き上がるグルーヴに身を任せているように見えるのが剛だ。なのに、2人が並ぶと、歌のハーモニーと同じように、何とも言えない妙なる調べとなる。同じ動きのはずなのに違って見えて、違って見えるのに、2人並んでこそ完成する。どちらの動きからも目が離せないのだ。音楽が、一つのアートとして、瞬時に完成しながら消えていく。その瞬間を目撃できていることが、とても貴重で、とても切ない。

 MCについて詳細は後述するが、KinKi Kids のMCの面白さは、最早名人芸の域である。客に対してドSな姿勢で斬り込む光一と、とぼけた味わいで光一の意外性を引っ張り出す剛。今回は、光一の新しいキャラクターを剛が発掘、“ラップができないのに必死でラップをやる男”として、普段はパーフェクト王子に見える光一の、何ともダメダメでチャーミングな一面を引き出し、爆笑を誘っていた。

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