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【aikoインタビュー】映画『聲の形』の主題歌「心の底にある絶対変わらない愛の歌を書きたかった」

 ヒット中の映画『聲の形』の主題歌「恋をしたのは」を発表したaiko。本人自身、原作のファンだというだけに、楽曲にはそこはかとなく映画の雰囲気も漂う。同曲も披露したツアーも、先日ファイナルを迎えたばかり。ライブと、新曲と。そこに詰まったaikoの切実な思いとは?

「私はその1回にどれだけ命を削れるかに重きを置いている」

――ツアーお疲れさまでした! これまで以上に素晴らしいライブで、特にファイナルは、aikoさんの凄みが伝わってドラマティックでした。
aiko ありがとうございます。このツアーは、私にとって大きな恋愛みたいなものでしたね。バンドメンバーやスタッフとは途中でケンカしたり、倦怠期を迎えたりもしたんですよ。私たちにとっては35本のライブだけど、お客さんは1回こっきりだから、私はその1回にどれだけ命を削れるかに重きを置いているんですけど、考え方は人ぞれぞれだし、最初は温度差もあったんです。「aikoの今回のツアーへの想いが尋常じゃないから、どうしたらいいかわからない」ってメンバーに言われて、「男やのにしっかりしてよ!」って返したりして(笑)。

――そうだったんですね(笑)。
aiko でも、いろんなことを乗り越えて、最終日には「ああ、終わりたくないなぁ」ってメンバーがステージ裏でボソッと言ってるのが聞こえてきて。みんなプロとして、いろんなステージに立ってるのに、こんな風に思ってくれるなんて……嬉しいなぁと。

――たしかに、aikoさんの気迫はすごかったなと。
aiko 初めてライブを観た関係者の方に、「この人、ライブ終わったら死ぬんじゃないかと思いました」と言われて、それくらいに見えていたら良かったなと。今って世の中に楽しいものが溢れているし、すべてにおいて“新しいものを見る”っていう感覚で来る人は少ないと思うんです。だから、それくらい自分を削らないと、見る人の心に傷は残せない。お客さんはもちろん、経験を重ねたスタッフとか身内の心すらも動かすことができないと思っていたから。

――そこまで思い至るには、何かしら心境の変化があったんですか?
aiko 20代の頃よりは、“人は死ぬんだ”っていうことを思うようになったからかも。デビュー当時の私は、自分も自分の音楽も“一生死なない”って思っていたんです。でも、必ず終わりはやってくる。それがいつかわからないけど、その日が10年後だとして、その10年間できれいにエネルギーを分配するような人生はつまらないと思うから。明日のことは考えず、今日を全力で好きなように生きていこうって。そしたらきっと、ライブでもお客さんにもっと伝わるし、届く気がする。こんな風に考えるのは……年、とったからなぁ(笑)。

――年齢ですか(笑)。
aiko 若い時みたいに、力づくで「私いける!」みたいな感覚はなくなったから。今は毎回、自分をさらけ出して、跪いて「愛しています!」って言ってる感じです(笑)。

「“この映画にはこの曲がいい”と思って、直前で変えていただいた」

――ツアー最終日でも初披露した新曲「恋をしたのは」は、ヒット中の映画『聲の形』の主題歌ですよね。映画も拝見しました。物語が終わって暗転した瞬間、aikoさんのブレスから歌が始まる感じにグッときて。メロディや詞もあの世界にはまっていました。
aiko 嬉しいです! 実は、映画の予告CMを作る段階では違う曲に決まっていたんです。でもやっぱり、“この映画には、この曲がいい”と思って、直前で変えていただいたんですよ。映画のスタッフの皆さんにはご迷惑をおかけしてしまって。

――もとから書いていた曲ですか? 
aiko はい。映画の話をいただく前、たしか、昨年あたりに書きました。

――映画に出てくる、将也と硝子の恋愛に重なる世界観だったから、あて書きしたのかと思いました。
aiko いつも2コーラス目は、1コーラス目を書いた後に時間が経ってから歌詞を書くんですけど、その時は頭の片隅に『聲の形』があったから、無意識にリンクしてたところはあると思う。だから、映画で使っていただいているのは2コーラス目なんですよ。

――もともと原作漫画が好きだったんですよね。
aiko はい! 1巻を読んで衝撃を受けて、ライブのMCで内容を全部しゃべっちゃったくらい好き(笑)。だから、このお話をいただいた時、最初は“ウソや!”と思って。プレッシャーになるくらい好きだったので、“聞かなかったことにしよう”と思ってたら、「本当に決まったよ」と言われて……すごく嬉しかったです。

――原作のどういうところに惹かれたんですか?
aiko ……全部です。いじめ問題を描く視点も新鮮やったし、いろんなことがリアルだなと。主人公の将也が、子供の頃は悪気なく楽しさを味わうためにやっていたことが、実はいけないことだったと気づくところとか。障害を持つ硝子が偽の笑顔を作ってしまうようになったこととか……。登場人物で、自分にリンクしている1人もいないのに、カケラはいっぱいあって。“この人の気持ちのココがわかる!”っていうのが、全員にあったんですよね。

「どこかで男子に抱き続けてる夢みたいなものがある気がします(笑)」

――「恋をしたのは」は、最初は、どんなきっかけから生まれたんですか?
aiko いつも通り、Aメロの詞がブワッと浮かんで、ピアノを弾きながら書いたんですけど……。自分の中で、一瞬を切り取った恋愛よりも、心の底にある絶対変わらない愛の歌を書きたかったんです。なんの私利私欲もない、離れても一緒にいてもいつも同じように思っていられるほど、純粋で大きな気持ちで相手と繋がっていられたらいいなと。それを書きたかったのは覚えてます。

――“変わらぬ愛”を歌いながらも、「恋をしたのは」というタイトルが切り口になるのが興味深いです。
aiko 私の中で、そこは繋がっているんですよ。最初から最後まで“恋をした”っていう気持ちがあるからこそ、思い続けることができるんです。恋をした時の“あっ!”っていう気持ちを抱き続けているから、愛も育ち続けるというか……。

――なるほど。
aiko 夫婦とか家族になったら、全然違う言葉になるのかもしれないけど、私はまだ結婚したことがないので。どこかで男子に抱き続けてる夢みたいなものがある気がします(笑)。尊敬とか憧れとか、“この人、男やな”って思う瞬間があると恋をしているって思うし、その気持ちが大切。あの瞬間を心に持ち続けながら、一緒にいたい。年月を重ねて、その人のいろんなことをわかっても、初めて会ったときの感情もずっと持っていたいんですよね。

――たしかに、尊敬とか憧れみたいな恋の感情がなくなると、何かが変わってしまうのかもしれませんね。ただ、恋人関係でも恋をしていない人はいるし、夫婦でも恋をしている人はいるのかなと思います。
aiko そうかもしれないですね。

――“恋をした”って自覚するって大事なんでしょうね。それこそ、恋する気持ちがわからないっていう人も増えているから。
aiko そうなんや! 私はどっちかというと、“恋した”って早い段階で自覚するほうですけどね。

――さすが!
aiko でも、今は惚れっぽいわけじゃない。ライブもそうだけど、年々、これまでの経験を超えないと(気持ちが)振れないっていうのはあります。“尊敬! カッコイイ!”とかも、これまでを超えないと恋心に至らない。もう、すっごく変な人じゃないと超えないかもしれないなぁ(笑)。

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