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若い世代も支持する「ザ・ビートルズ」 楽曲に隠された5つのテクを音楽P・亀田誠治がシンプル解説

 映画『イエスタデイ』が10月11日に公開されました。ザ・ビートルズが誕生していない世界を舞台に、彼らの楽曲の魅力が描かれていく音楽映画です。この映画の注目すべき点は、ビートルズの楽曲の魅力にフォーカスが当たっているところ。最近大ヒットした『ボヘミアン・ラプソディ』(クイーン)や『ロケットマン』(エルトン・ジョン)は、アーティストにフォーカスが当たっていましたね。

『アビイ・ロード 50周年記念エディション』ジャケット写真

『アビイ・ロード 50周年記念エディション』ジャケット写真

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 客層は僕のような若かりし頃にザ・ビートルズに魅了されたオッサン層(失礼!)〜50代や60代の方〜が多いと予想していたのですが、実際は劇場の半数以上が20〜30代の若いカップルで埋め尽くされていました。なぜ、若い世代に今、ザ・ビートルズの楽曲が届くのかを、僕なりに考察してみました。

 ザ・ビートルズはロックンロールにシンプルで美しいメロディーと、普遍性&物語性に富んだ歌詞をブレンドすることで、音楽に革命を起こしました。端的に言うと「楽曲の良さ」ということなのですが、それなら他のアーティストの楽曲にも当てはまります。では、ザ・ビートルズの抜きん出た感は、一体どこから来るのでしょうか。

 最近講演やトークショーなどで、音楽のイノベーションについてお話する機会が多いのですが、その中でストリーミング時代の音楽は“つかみ”が重要で、ストリーミングのシェアが80%に届こうとしているアメリカのチャートで勝つために必要な5つの法則というものがあります。

1、「イントロ無し歌始まり」(←「歌」はすぐに曲に引き込むためのアテンション。もしもイントロがあっても超短め)

2、「曲の尺は3分前後」(←ストリーミングでは30秒以上再生で1再生とカウントされるため、30秒以内にドラマを起こすと必然的に楽曲の長さが短くなる。)

3、「タイトルが短い」(←スマホの画面でタイトルが収まるように)

4、「コライト(複数の作家の共作)で作られている」(←分業制により多面性を持ったキャッチーなアプローチができる)

5、「中学生でもわかる歌詞」(←You Tube、TikTokを介してミーム的な広がりを得る)

 勘のいい読者の皆さんはもうお気づきですね。ザ・ビートルズの楽曲は、誕生から50年以上も経っているのにも関わらず、今のチャートに勝つこの5つ条件の全てを満たしているのです。

 例えば「1」については「ヘルプ!」や「ヘイ・ジュード」はイントロ無し、歌始まりの名曲です。「2」もしかりで、ザ・ビートルズの楽曲の大半(特に初期)は2分から3分台で完結します。これは海を越えたアメリカのラジオで勝つためと言われており、“ラジオ”を今の時代の“ストリーミング”に置き換えるとわかりやすいですよね。「3」はそれこそ「イエスタデイ」なんてバッチリ合格! さらに、ザ・ビートルズの楽曲はその多くがレノン&マッカートニーという共作(つまり「4」)の賜物です。彼らはいち早く作詞作曲を分業&共同で始めました。「5」だって「ハロー・グッドバイ」や「プリーズ・プリーズ・ミー」なんて世界で通用する基礎英語です。しかもザ・ビートルズはTV(『エド・サリヴァン・ショー』が有名)や『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』などの主演映画をMVがわりに使って、映像作品を展開しミーム的に世界に広がって行きました。

 50年後の今の音楽シーンを予言するかのように、その楽曲がなお世界中を魅了するザ・ビートルズ。「迷った時はビートルズを聴け!」を座右の銘にしている僕にとって、もしもザ・ビートルズがいなかったら、音楽家・亀田誠治は存在しないでしょう。

 ザ・ビートルズ・フォーエバー!

関連写真

  • 『アビイ・ロード 50周年記念エディション』ジャケット写真
  • 僕が4年前にリバプールを訪れたときの「アビイ・ロード」の写真です。映画にも登場します!

提供元:CONFIDENCE

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