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「テレビは立ち食い」…ハライチ岩井の達観と日常こそ狂気の妙

【REACTION】Vol.1 ハライチ岩井勇気

 お笑いコンビ・ハライチの岩井勇気(33)がエッセイ集『僕の人生には事件が起きない』で“地味な日常”を綴った。「メゾネットタイプの一人暮らしの出来事」「組み立て式の棚からの精神攻撃」といった、日常に根ざしたラインナップ。実際に読み進めてみると、確かに波乱万丈の展開ではないが、ふとした状況に出くわした際の描写、岩井の切り取り方の妙によって、何気ない日常を楽しく過ごすスパイスとして機能する。作品タイトルに偽りなしだ。

 初のエッセイ、待望の1冊が仕上がった。そう思い話を聞いてみたが、岩井は「この分厚さを見て、こんな書いたっけって思いました。25話入っているらしいですけど、まとまってよかったなって思いますね。一番の良さは、消費されないっていうことですかね」と淡々と語る。

 「その時にあったことを書いている感じです。読めば面白がって思えると思うんですけど、これくらいの芸人が日常生活のことを書いて、誰が読もうと思ってくれるだろうかと(笑)。そんな奴いないだろうって。芸能界の裏側をバラすとか別に好きじゃないですし、なんでもないことを面白く書ける方がすごくないですか?」。

■テレビ=“立ち食い”の面白さへのアンチテーゼ

 「期間にして1年半くらいのものがまとまっていますが、一番うまくなったのは絵じゃないですか。文章は最初からできていましたね。最初のエッセイを書くまでに3つくらいボツにしているんですけど、そこまでが練習みたいな感じで、これ書き始めてからはいい感じに書けたなという感じでした。本当に50%くらいあらすじを考えて、書いているうちにどんどんふくらませていく。言葉を選んでいくと面白くなりますよね。『あー文章ぽいわ』という表現が出てきた時は『決まったっぽいわ。読む人はこういうの好きでしょう』って感じました」。

 書き手としての充実ぶりをにじませつつ、文章という形となり、より岩井の思いをダイレクトに感じることができるが、テレビとの違いについて「パッとこう食べられるものしか評価されないんで。テレビとかはもう本当に立ち食いなんでね。屋台みたいなものなので。お粥出している屋台とかないじゃないですか。でも、うまいお粥はうまいし、立って食いづらいものってあるじゃないですか。文章だとそれができますよね。『テレビは立ち食い』って書いておいてください(笑)。インパクトがあって、味濃いものばっかり置いてある」と持論を展開。テレビへの執着は「うーん…ないっすね。テレビだから出たいっていう訳ではないです。面白い番組だから出たいっていうのはありますけど」。

 最近では俳優業でも注目を集めている。「オレは演技で何かを表現しているという風に思ったことないです。登場人物に似ているから選ばれたんだろうなと。雰囲気で押し切っています(笑)。監督とかも何も言わないので、似ているから選ばれて、演技的なことは期待していないんだろうなと。『なんでオレ選んだんだろう?』って思いながらやっています。熱意のある方たちなので、もちろんしっかりやっていますが」。

 今回の書籍しかり、自分の表現する場が広がるとさらに期待してしまいがちだが、その達観したような目線について「小さい頃からこの見方をしていた可能性はあります。やりたいことをやれてきたので、ストレスにならない生活を送ってきました」と分析した。

■「閉鎖的になってファンと心中なんて、まっぴらごめん」

 読者のターゲットを絞らないことにした。「誰が読んでも面白いものにしました。局所的に刺さるような表現はしてなくて、誰が読んでも面白いように。閉鎖的になりたくなくて。たとえ、万人に刺さるお笑いじゃない方向にいっているとしても、それを局所的な方向にだけ向けるんじゃなくて、これをいろんな人に伝わるようにしようということはしてますけどね。閉鎖的になっていくと、フォローしてくれている人とかファンとかと心中していくだけなので。それはまっぴらごめんなので(笑)」。どんな客がきても笑わせる、文章を書く時にも芸人としてのスタンスと変わらない。

 「ラジオとかも別に囲ってないです。いろんな人が聞いて楽しいようにしていますので。リスナーに呼びかけたりとかしてないです。『オレたち仲間だ』みたいなことも一言も言ったことないので。新規の人を入れないような空気をするのだけは嫌ですね。外側から見て気持ち悪いから。それをやめようということです。いろんな人に刺さるように。ただ、いろんな人が面白いと思う要望に応えようじゃなくて、自分が面白いと思うものをいろんな人に刺さるようにしているということです。わかる人だけにオレのお笑い届けっていうことはしたくない。書くこともそうですね」

 過不足なく、自分の身の回りにあることを面白がってみる。同書は「何者か」であろうとすることに、がんじがらめにならないための指南書としても有効だ。「別に何も起こってなくて、わざわざ人に言うことじゃないのに、楽しんでいる方が本当に楽しいんじゃないですか。例えば、SNSとかでみんなに評価されたいんだったら、限られた人に向けてではなくて、みんなに評価される文章を書いた方がいいじゃないですか。わかりやすいように老若男女に刺さるような写真を撮ったほうがいいよねって。そうするとみんな『良かったね』って言ってくれるんじゃないですかね」。自分が面白いものを発信する、簡単なようだが、それを愚直に続けることは簡単なことではないだろう。

 「誰かの価値観に乗っかることは好きじゃないかもしれないですね。自分が面白いと思うものを評価してくれたらいいなと思います」。

 最後に気になった発言についてもう一度尋ねてみた。「立ち食いばかりのテレビで“お粥”を食べられることを期待したいか?」という、この発言があまりにも突き放したように感じられたからだ。そこに希望はないのだろうか。

 「うーん…この本がそういうやつじゃないですかね。読んでほしいっちゃほしいですけどね。面白いはずなので。絶対面白いから読んでって人に勧めることは、例えば漫才とかでも『絶対面白いから、見てくれ』なんて言ったことないんですけど、読んだら面白いっていう。押し売りはしないんですけど、面白いよって伝えたいです。この感じ、わかってもらえますかね…?」

■岩井勇気(33)。幼稚園からの幼馴染である澤部佑(33)と2005年コンビ結成。『M-1グランプリ2009』5位で注目を浴びる。「じゃない方芸人」「腐り芸人」といじられつつ、コンビのネタは岩井が作り出すなど独自の世界を形成し高い評価を得る。9月26日、『小説新潮』とウェブ連載を基にしたエッセイ集『僕の人生には事件が起きない』を上梓した。

「REACTION」
人生は反応の連続。どういう局面で、どういう選択をするかによって、自らに返ってくる反応も変わってくる。さまざまな分野で活躍する人々の【REACTION】にスポットを当て、どういう道のりを経て現在にいたったのか、注目作が出来上がるまでの過程などを紹介していく。

関連写真

  • 初のエッセイ本『僕の人生には事件が起きない』(新潮社)を出版した岩井勇気 (C)ORICON NewS inc.
  • 岩井勇気初のエッセイ本『僕の人生には事件が起きない』(新潮社)
  • 初のエッセイ本『僕の人生には事件が起きない』(新潮社)を出版した岩井勇気 (C)ORICON NewS inc.

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