漫画『大奥』作者、実写化が原作に与える影響は「歓迎」 口調の変化や俳優の演技参考に

 『大奥』、『西洋骨董洋菓子店』など実写ドラマ化もされた多くのヒット作を世に送り出してきた漫画家・よしながふみ氏。その彼女が『週刊モーニング』で連載中している、男性カップルの日々の食卓を描いた漫画『きのう何食べた?』が、俳優の西島秀俊と内野聖陽のダブル主演で、テレビ東京の深夜ドラマ枠“ドラマ24”で放送される。「俳優さんの演技を見て口調や動き方など勉強になり、『これがリアルか』と新しい発見があるので実写化は歓迎」「ドラマ『西洋骨董洋菓子店』に出演した椎名桔平さんの演技を見て、原作キャラクターの口調が彼っぽくなった」と、漫画作品の実写化が原作に与える影響や歓迎する理由について語ってもらった。

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■料理×男性カップル漫画を『モーニング』で連載する理由 女性読者が多い背景

――“料理”と“ゲイ”を組み合わせた一見、異色に見える作品ですが、どのように誕生したのでしょうか。

 初めはBL誌の方で掲載を進めていた作品で、読者に女性が多いことから“料理”をテーマにして、ゲイカップルが出てきてもラブシーンのない“気軽”を意識して描きました。ただ連載が始まる10年前は、20~30代キャラクターのBL物が受け入れられていた事情もあって、編集者さんから「主人公は若くなりませんか」と言われましたね(苦笑)私としては親の介護や同せい生活の様子を描きたい想いが強くて40代の設定が良かった。女性誌も含めて掲載してくれる誌面を探していて、『モーニング』にも無理だと思いつつ相談したら、相談の翌日に「企画が通りましたよ」と言われました(笑)

 『モーニング』では、心配であった40代の設定も『島耕作』という年代が高めな作品があったのでクリアー。料理漫画も『クッキングパパ』がありますが、あちらはメイン料理、1品料理がテーマ。こちらは節約料理や献立に焦点を当てているので被らないと言われて。さらに、「旦那さんが『モーニング』を自宅に持ち帰り、奥さんがそれを読むかも知れない」という強みを伝えられた。女性人気が高い『ピアノの森』も連載していたため、アンケートハガキの投稿は女性も多い事実があり、色んな相乗効果が見込まれて連載に至りました。

 “料理”をテーマにしたのは、料理は作る時間のほか献立を考える時間、食材を買いに行く時間など人生において占める時間が多いので、密接な関係にあるため描きたかった。BL作品は個人的に好きなジャンルであり、その多くは若い人物の付き合うまでの過程が多いのですが、個人的に結ばれてからが面白いと感じていて同棲してからを描きました。年齢を高めにした設定も、高校生とサラリーマンとでは、人生の歩み方、背負うものが違いますし、人間ドラマが多くある年上に魅力を感じてしまいます。

――『マツコの知らない世界』で料理を扱う作品で紹介されていました。料理をテーマにする中で、気をつけている部分はどこでしょうか。

 作中の料理は、私自身が実際に料理した物を紹介しています。あっさりが続いてきているから、こってりを出そう。料理は普段しないけど、お菓子作りだけはする方が居るので、単行本には必ず甘い物を1話描いています。あと、主婦の方も読んでいるので、作りたくもない“おもてなし料理”を年に1回出そうとか(笑)「そろそろ魚料理だすか」「中華料理が続かないようにしよう」など色々と打ち合わせしていますね。

■漫画の実写化「歓迎」は新しい発見 椎名桔平の演技を見て原作キャラの口調に変化も

――『大奥』『西洋骨董洋菓子店』など、先生の作品は実写化されている物が多い印象があります。リアルな部分を追求したり、描く前からドラマ化を狙っていたりするのですか。

 主人公の職業は弁護士なのですが、私自身がいつか弁護士作品を描きたい想いから設定しました。ただ、100%それをテーマにした作品は描きたくはなかったんです。理由は、世の中の人は、今の自分の職業に100%打ち込んでいるわけではないと思っており、100%の職業物だと読んでいて疲れてしまうというか、少し描く程度がちょうどいいと考えています。そこがリアルと言えばリアルな部分かも知れません。 過去にドラマ化されてきた作品がありますが、連載前からドラマ化を狙って描いたりはしませんし、できません。逆にドラマ化できないようなことを描いているつもりです。漫画の良いところは経年変化を描けるところが面白い。ドラマも何十年と続けば俳優さんの経年変化を見せることができますが、多くは1クール(3ヶ月ほど)なので、その中で10年の月日を表すには特殊メイクなどが必要。漫画の場合は、少し顔の輪郭を変えてシワを描くだけでいいので、その部分が楽(笑)俳優Aさんをモデルにしたキャラを漫画では簡単に描けますが、連載してすぐに実写化のお話をいただけるわけではないので、長い月日が経過したらその方が起用される可能性は難しい。なので、ドラマ化を念頭に置いて描くことはないですね。

――キャラクターを演じる俳優さんを見て、原作に影響を与えたことはありましたか。

 キャラクターの口調などに、少しですが影響がありました。『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』に出演した橘圭一郎役の椎名桔平さんのすばらしい演技を見て、その後の執筆で口調や表情が「あ~、これ椎名さんぽくなっちゃった」みたいなキャラが引きずられることはありました(笑)私は基本的に結末までストーリーを大体決めてから連載するので、ストーリーが変わることはありませんでしたが、もしかしたら作品によっては将来に、影響を与えることはあるかも知れません。

 作品の実写化は良いことか悪いことかの議論ですが、私はドラマが好きなこともあり歓迎派(笑)否定する方も作品を愛する想いから、そう言ってくれるのは十分気持ちはわかります。原作者としては素材を提供しているだけですので、監督や脚本の方がキャラクターを掴み取ってくれたら、オリジナルストーリーも問題ないですし、私としても見るのが楽しみ。私の作品のどこにポイントを置いて1話、1話展開されていくのかが面白い。作者としては視野が広がるので有り難いことです。

 また、役者さんがキャラクターのせりふを言うのですが、私が想像していた間合いや口調と違うので、それが面白くて発見が多い。私たち漫画家も、なるべく本当に人が話すような間合いでせりふが書けるよう考えていますが、リアルの役者さんの間合いを見ることで、改めて「これがリアルに生きている役者さんの表現か」と勉強になる。先程の椎名さんのエピソードもここから得て、少しだけキャラに影響が出ましたね。

◆◆『きのう何食べた?』ストーリー◆◆
 2LDKのアパートで同居する料理上手で几帳面&倹約家の弁護士・筧史朗とその恋人で人当たりの良い美容師・矢吹賢二が主人公。毎日の食卓を通して浮かび上がる男2人暮らしのほろ苦くてあたたかな2人の日々をリアルに描いたストーリーで、『週刊モーニング』(講談社)にて連載中。

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