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年下男性“養う”女性の本音は「人生の応援と育成」 マガジン話題作『男子高校生を養いたいお姉さんの話』座談会

 『週刊少年マガジン』で連載中の漫画『男子高校生を養いたいお姉さんの話』が話題だ。両親が借金を残して突如蒸発し、独り取り残された主人公の男子高校生・空本実。絶望していた彼を、隣の部屋の黒髪美人なお姉さんが助けるところからスタートする同作は、「(主人公を)養う妄想で毎日貯金していたから」という思考のお姉さんが、主人公の日常生活から借金返済までATMのごとくお金を使って尽くし、共同生活していく物語。昨年1月に作者・英貴氏のツイッターで公開されると「養われたい」「尊い」などの声や20万を超える「いいね」が付いた。そこで、作者と、実際に年下男性を養い結婚までした女性2人(30代、40代)に座談会形式でインタビューし、作品誕生の経緯や年下男性の魅力、養う理由を語ってもらった。

『男子高校生を養いたいお姉さんの話』コミックス最新3巻(C)英貴/講談社

『男子高校生を養いたいお姉さんの話』コミックス最新3巻(C)英貴/講談社

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■ソシャゲ課金などの“好き”感情に興味湧き作品化 リターンなくても得られる喜び

――作品テーマを「年上女性が養う」にしたのはどのような経緯からですか。

【英貴】まず、勘違いする方が多いのですが、私は男性を「養いたい」という願望はないのです(笑)。男性に対しても平等に働いてほしい想いがあります。ただ、私の友達がキャリアウーマンで収入もそれなりにあり、美人なのですが男ができない子が多い(笑)。彼女たちの中に「男を養いたい」という子が居て、実際に「ヒモ男」と世間で言われる子を養っています。そのほかにも、ソーシャルゲームでビックリするほど課金している子も居て、「推しキャラがゲーム内で予算をかけて貰っていた。私の課金が役に立った!!」と喜んでいた。そこまでする理由を聞いたら「好きだから」と言われて、この「好き」って感情は面白いなと思い描き始めました。

 「養う」と「尽くす」は似ているようで違います。「尽くす」は何でもやってあげる的な意味があって、専業主婦のようにお金を出さなくても尽くす行為はできる。「養う」行為は、自分ができるなら世話もしたいし、特にお金を出したい気持ちがある。取材でわかったことですが、彼女たちに共通しているのは、お金の力で支えてあげたいという欲と同時に好き過ぎて「好きにしていいよ」という余裕がある。最終的に「自分のところ戻って来てれればいいよ」と。のめり込むより、その子が幸せになってほしい想いが強い。そこに、見返りを求めていないのです。

 アイドルを応援する気持ちに近いですよね。本当に恋をしてしまう“ガチ恋勢”も居ますが、大半の方はリターンがないことを理解しながらも、「好き」だけの理由で応援、グッズなどに投資をしている。この「応援」の気持ちが、「たまたま隣に住んでいる高校生だったらどうだろう?」という理由で作品が誕生しました。恋愛がしたいのではなく、人生を応援したいテーマが込められています。

■「生きる力を身につけてほしい」 養うことで人生を応援し育成

――実際に年下男性を養っているお二人ですが、漫画を読んで共感する部分はありますか。

【A子さん】人生を応援したいというのは共感できますね。その子の「人生を変えたい」想いではなく、私のやる行為で笑顔になってほしい、そこに居てくれるだけでいい。単純にこの想いだけです。過去の養い方を振り返ると、銀座で水商売をしていた経験もあってカッコ良くない人に「カッコいい」と言ったり「好き」の感情に抑圧されていた部分がありました。そこに収入は少ないですが、遺伝子レベルですてきだと思う年下の彼と出会い、彼に癒やしを求めて養っていくうちに今の旦那となりました。 「どれを食べたら長生きしてくれるのだろうか」などと考えていて、言い方が悪いですが当時はペットみたいな感覚だったかも知れません(笑)。幸せになってほしい想いだけなので、そこに性的な見返りはないのです。

【B子さん】結婚時はともに共働きでしたが、ある日、彼が「トラック運転手から木工職人になりたい」と相談され、学校にも通うということで、そのタイミングで私が事業を起こして彼に家庭に入ってもらいました。

 これは持論なのですが、私は彼に生きる力を身につけてほしい想いがあります。私が年上なので、早く死んでしまいますよね(笑)。それと、私の方が社会での経験値も多く、お金を稼げる方法を知ってほしい想いがあり、生活に必要なお金は渡しますが、それ以外は渡さない。ひとりの男を育成するゲームに感覚に近いですね。学校に通うお金は出しましたが、先生やA子さんがおっしゃった「夢を応援する」気持ちは共感できます。

【英貴】これらは、男性の立場で聞くとよくある話。若い女の子の夢を応援する意味で「専門学校に通っている間は養うよ」的な。A子さんのタイプは、例えば料理を作る際に、「私が料理を作って果たして相手は喜ぶのか?」と考えてしまう。そこで、1万円を出して一流のシェフが作った料理を食べさせたほうが確実に喜んでくれるのではないかと結論を出す。自分が何かをするのは、おこがましい考え方で、お二人は彼の「幸せ」を追求しているのですが、過程が違います。

 根本的に「養う」行為をしている女性は母性が強い。アイドルのライブを例に出すと、推しの子が踊っている時にお腹がチラ見えしたら、普通はまず「きゃー!」と騒ぐのですが、彼女たちはその他にも「寒くないかな?」「風邪ひかないでね?」と心配までするんです(笑)。

――コミックス1巻は即重版で、「尊い」「養われたい」など男女それぞれから大きな反響がありました。「養われ」願望のある男性が養われるにはどうしたら…。

【英貴】私自身の思考は主人公側で、お姉さんがやる行為に対して「なんだそれは!」とツッコミを入れる側。空本実の顔が強張っているのは、私の表情ですね(笑)。世の中のギャグ漫画を執筆している漫画家さんも、ツッコミ側のキャラクターが自身の考え方というのは多いと思う。お姉さんは周りに居る友達をモデルにしているので、「あの子ならこうするだろうな〜」と想像しながら描くことが多いです。彼女らも友人から「そんな男別れたほうがいいよ」「どうしてそこまでするの?」と言われていることが多いので、漫画を読んで「お姉さんに共感できる」という読者の方は、申し訳ないですが「推しを愛しすぎて若干存在がギャグ寄り」になってしまっているのかもしれません(笑)。

 男性も仕事で疲れてお姉さんに養われたい気持ちはわかりますが、単純に「養ってほしい」気持ちだけでは女性は好きになりませんよね。ここに居るお姉さんたちと同じで、頑張っている姿を見て応援したい気持ちが生まれ、養う気持ちが動く。ネット上でのコメントで「養われたいな〜、でも、そんなこと言う男は求められていないんだろうな」と、男性側も理解していますね。

■「ATM」と呼ばれたら…養われる側に必要なリスペクトと思いやり

――年下男性の魅力は一体どこになるのでしょうか。

【A子さん】年下の魅力は、「若い」というだけですでに魅力であり、存在がキラキラしている。私も年齢を重ねると、彼も年齢を重ねていき、ある年齢になるとその輝きを失うので、魅力がなくなる時期が当然出てきます。そこで違う子に求めたりと…(笑)。【B子さん】私の場合、「純粋さ」ですね。何でも言うことを聞いてくれる「従順さ」ではなく、物事の考え方が柔らかいこと。歳を取ると考え方が固くなるのですが、5歳年下なだけで、一つの問題に対して私がアドバイスすると「なるほど。そういう考え方もあるのか、僕はこう思っているけどどう?」と言葉のキャッチボールができる。当たり前なことかも知れませんが、相手が年下で年上の私をリスペクトしてくれている部分もあって、会話がスムーズ。交際から10年経ちますが、ケンカは一度もない。年下旦那の良い部分かも知れません。

【英貴】一言で表すと「かわいい」。女性は最初、部活の先輩とか年上に憧れる。少女漫画でもそういう設定が多いですよね。ですが、実際に付き合ってみると、年上だからこそ「こうしてほしい。頼りにしたい」ものがあって、ギャップが出てくる。そんなジレンマもあり、自身も年齢を重ねてアラサーになると「年下もありかも」と感じてくるんです(笑)。

 取材をしたみなさんが言うことは、「同じミスを年上がやったら許せないけど、年下なら許せる」。年下だからできないのが当たり前で、言葉は悪いですが舐めている部分もあって、「年下だからって舐めないでよ!」と言われると、そこでキュンっと感じる。同じ努力の仕方でも、年上と比べて「よく頑張ったね〜、ヨシヨシ」と何割増しにも愛しく感じ応援する。

――漫画のお姉さんはお金を無尽蔵に主人公に使うので、読者から「ATMお姉さん」(お財布女子)と呼ばれています。皆さんから見ると、この言われ方は嫌ですよね。

【A子さん】彼が空のお財布を見て悲しい気持ちになるなら「ここにあるよ!」(あなたの財布があるという意味)と言いたいですね。彼の幸せを第一に願っているので、ATMと言われても仕方がないかも(笑)。

【B子さん】「お金を出して当たり前」だと思われたら嫌です。そこで、「お金を出させてごめんね。俺、頑張るから!」と一言あれば萌えますし、応援したくなります。

【英貴】「お前、俺のATMだから」と言われるのは嫌だと思いますが、「私はあなたのATMだから」と自分で言いたい人が、世に居る養うお姉さんたち。これも男女の関係性を逆にするとわかりやすくて、お嫁さんから「あんたは稼いで、私たちを養うのは当たり前」と言われたら男性はカチンと来ますよね。そこに「いつも頑張って稼いでくれてありがとう」と言われたら「いいんだよ。男として当たり前さ」なんてきっと言いたくもなるじゃないですか(笑)。その子にお金を使うことに対してのリスペクトがほしいですし、思いやりが大事。すべての恋愛に言えると思いますが、これが無くなったら男女関係が成立しないと思います。

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  • 『男子高校生を養いたいお姉さんの話』コミックス最新3巻(C)英貴/講談社
  • 『男子高校生を養いたいお姉さんの話』の一コマ(C)英貴/講談社
  • 『男子高校生を養いたいお姉さんの話』の一コマ(C)英貴/講談社
  • 座談会に参加した(左から)B子さん、作者・英貴氏、A子さん (C)講談社
  • 座談会に参加した(左から)B子さん、作者・英貴氏、A子さん (C)講談社
  • 3月15日に発売した『男子高校生を養いたいお姉さんの話』コミックス3巻(C)英貴/講談社

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