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神谷浩史、ギャグアニメ異例のヒットに驚いた『おそ松さん』 要因はキャラの記号化

 『夏目友人帳』の夏目貴志役、『進撃の巨人』のリヴァイ役など多くの人気アニメ作品に出演している声優・神谷浩史。そんな彼がギャグ作品『おそ松さん』シリーズ初の完全新作劇場版『えいがのおそ松さん』(15日公開)に、6つ子の三男・チョロ松役で出演する。「ギャグ作品は売上などの数字、結果を出すのが難しい現実がある」「スマートフォンのアプリでは、再生数がすごいので視聴スタイルがほかの作品と比べて特殊なのかも」など、ギャグ作品として異例のヒットで社会現象までになった『おそ松さん』の人気を分析してもらった。

『えいがのおそ松さん』三男・チョロ松役の神谷浩史

『えいがのおそ松さん』三男・チョロ松役の神谷浩史

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■ギャグアニメが売れない現実を打ち破る『おそ松さん』 “赤塚不二夫”の偉大さ実感

――『おそ松さん』は2015年、17年にテレビアニメが放送され、16年には「流行語大賞」にノミネートされるなど社会現象化して話題になりました。ここまでの反響は予想していましたか?

【神谷】ギャグ作品の巨匠・赤塚不二夫さんの原作をベースに、6つ子それぞれに個性をつけたストーリーとして現代に蘇らせる設定は画期的でしたが、それが受け入れられて社会現象にまでなることは予想していませんでした。やっている側としては面白かったので、「理解してくれる人は居るだろうな〜」程度でした。

 僕はギャグアニメ、ギャグ作品が好きなので、作品に関わる時はすごく幸せなのですが、残念なことに売上などの数字、結果に結びつくのが難しいという現実を知っていました。売る側の人間ではないので、気にしないところではあるのですが、売上がよくないと作品が評価されにくいのは実際にあります。その中で『おそ松さん』が「売れたな」と実感したのはDVD1巻が発売された瞬間で、スタッフとともに「こんなに売れるの!?」と驚きましたね。

 アニメも含めた映像媒体の評価はDVDの売上だけではなく、配信サービスの再生数などももちろんある。例えば『おそ松さん』のDVDで第1期と第2期を比較して、第2期が落ち込んでいたら「コンテンツが終わったな」と言う人も中にはいますよね。一部分だけではなくトータルに評価をして人気があるからこそ、今回の映画化に繋がったと思います。

――ギャグ作品からヒットが生まれづらいなか、『おそ松さん』はなぜ人々の心を掴んだのでしょうか。

 僕が初めて購入したアニメのDVDは『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』。主人公・花中島マサル役を担当したうえだゆうじさんにサインを書いてもらって僕の家宝(笑)。それくらい僕はギャグ作品が好きなのですが、「おそ松さん」の視聴スタイルとしては、ディスクの入れ替えをしてまで「見るぞ!」という体勢で視聴するものではないのかも。あくまで個人的な分析ですが。

 ただ、『斉木楠雄のΨ難』は、1話4分のストーリーを5話やるスタイルでアニメが放送がされました。スマートフォンのアプリで1話4分の話を見ることができるそうで、通勤や通学などの移動中に視聴する方が多くて、すごい再生数みたいです。なので、ギャグ作品に対する視聴スタイルは、ちょっと特殊なのかもしれません。

 『おそ松さん』ヒットの要因は「赤塚不二夫さんの原作」というのがやはり大きかったと思います。今ってキャラクターは記号じゃないですか。交通標識は記号として成立しているから、「ここから先は進んではいけない」「速度を落とさなきゃいけない」と共通で認識している。赤塚さんが生み出してきたキャラクターは、「作品はよく知らないけど、一度は見かけたことがある」という、誰もが理解できるところまでブラッシュアップしたものになっていると思います。その記号化までされてしまったキャラクターを使って、僕らは好き勝手にやらせていただいたので、このアドバンテージはすごく大きいと感じています。

■「面白くしなければ」の使命感 奇抜な設定も「無茶ぶりされているつもりはない」

――ギャグ作品としてヒットした『おそ松さん』ですが、演じているキャストの方々はどういうモチベーションで現場は挑んでいるのでしょうか。

【神谷】『おそ松さん』の現場に限らず、ギャグ作品にありがちなのですが、与えられたキャラクターとシチュエーションが面白ければ面白いほど、それ以上に「面白くしなくてはいけない」という変な使命感が発生する。特に『おそ松さん』は、それが強いキャストの方々が集まったと思います。破天荒な作品の設定で、当たり前なことをやると当たり前な結果になるので、常に試されている現場。これを聞くと「疲れてしまう現場」「これをどうやって、面白くすればいいんだよ…」と愚痴だらけな現場に思われるかもですが、「どう面白くしてやろうかな!」と楽しめるキャストがそろい、オフでも現場は笑いがあふれています。

――実は福山潤さん(一松役)から「神谷さんは、スタッフから演技の無茶ぶりがありましたが、どういう気持ちで挑んでいるのですか」と伝言をいただいています。【神谷】無茶ぶり…あったかなー?(笑) 役に対する無茶ぶりみたいなことですかね。キャラのブレ方として、声の芝居でブラしていくことってチョロ松にはない。あくまで常識人として、発言していることは『まとも』がベース。そうしないとチョロ松じゃなくなるので。チョロ松的には常識と疑わないけど、周りからは「それおかしいよ」ということが多くある。例えば「かっこよくなりたいよね〜」とみんなが言っていたら、『茶髪にしてみる』といったように、見た目で「ダサい」ことをするキャラクターです(笑)。

 僕としては無茶ぶりされているつもりはありませんが、絵としては無茶であり、それを「音でどう表現するの?」という無茶さ加減はありますよね。それでも僕は「ブレずにやらないとな」としかやっていないので、「このシーンのアプローチはどうすればいいんだ! これは無茶だよ〜」と(福山)潤が思ってくれているのであれば、「僕は難しいことはしていない。絵の方が頑張ってくれているから、実は楽をしているんだよ」と(笑)。

 ただ、「忍者チョロ松」といった謎の設定はありますよね。台本には「んんんんー」としか書いていないので「これで面白くしろって…、どうすればいいんだよ!」とは思いますよね(笑)。「面白くならねーよ! 気持ち悪いだけだよ!」とは思うので、もしかしたら、ここの部分のことをいっているのかな…(苦笑)。

(C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019 カメラマン/祭貴義道

関連写真

  • 『えいがのおそ松さん』三男・チョロ松役の神谷浩史
  • 『えいがのおそ松さん』のメインビジュアル (C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
  • 『えいがのおそ松さん』の場面カット (C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
  • 『えいがのおそ松さん』の場面カット (C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
  • 『えいがのおそ松さん』の場面カット (C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
  • 『えいがのおそ松さん』の場面カット (C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019

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